ここ数年、DIYやブッシュクラフトなど、あえて既製品に頼らない「自作」ブームが広まっていますが、現在ツイッターでは、なんと縄文人顔負けのDIYライフを営んでいる人たちが大きな注目を集めています。

#多分私しかやってない
現代の道具を使わずに竪穴住居を作り、週末そこで暮らしてる。穴はとがった棒で堀り、木は3日かけて作った石斧で切った。ちなみにサラリーマンである。
(@wkend_jomonjinより引用)

  • 週末縄文人さんが作った竪穴式住居(@wkend_jomonjinより引用)

  • 竪穴式住居の内部(@wkend_jomonjinより引用)

  • 竪穴式住居の骨組み(@wkend_jomonjinより引用)

  • 3日かけて作ったという石斧で木を切る様子(@wkend_jomonjinより引用)

投稿したのはツイッターユーザーの「週末縄文人(@wkend_jomonjin)」さん。週末のオフタイムを利用し、「ゼロから文明を辿る」を目的に活動する二人組のサラリーマンです。

「週末縄文人」の名前どおり現代の利器に頼らず、とがった棒で穴を堀り、3日間かけて作った石斧で木を切り、写真にある竪穴式住居を作り上げたといいます。その徹底的なこだわりはまさにリアルな縄文人スタイル。実際に、週末はこの竪穴式住居で生活をしているそうです。

ちなみに、竪穴式住居の制作過程はYouTubeにもアップされています。

制作期間は30日間。
「現代の道具は使わない」という厳しい縛りを自ら設け、軍手さえ使わず、手製の石斧や木の棒などを巧みに使うことで、これほどまでに見事な竪穴式住居を完成させたのです。
屋根もクマザサを使って雨漏りしないようしっかりと作り込まれているということです。

このリアルな竪穴式住居は多くの人々の感心を集め、ツイートは6.2万件のいいねを獲得(8月29日時点)。多数のコメントも寄せられました。

「子どもの頃、竪穴式住居を作ってみたいと思ってた時期があった。この歳になってもこの動画をワクワクしながら見終えた」

「うちの子多分これ見たら凄いテンション上がります! 原始的な火おこし大好きだし、石磨き大好きです」

「縄文時代は争いも少なく、人々で助け合いながら暮らした素敵な時代なので、こうやってその時代のものを自分の手で作ることで、人間の本質に辿り着けそう」

「ガチですごい人がいたっ! そして結構楽しそうだなと思ってしまう俺笑」

「原点に立ち返れそうでいいなって思います‼︎ あと、やりたいことをとことんやってるってのが、またすごくいいなと思いました‼︎ そして、一泊してみたいな、なんて思いました笑笑!」

ツイ主さんに聞いてみた

この令和時代にガチな竪穴式住居を作ったツイ主の週末縄文人さん。今回は、制作するに至った経緯や住み心地などについてご本人に話をお聞きしました。

ーーこれを作ろうと思った理由やキッカケを教えていただけますか?

僕らの活動のテーマは、「現代の道具を使わず、自然にあるものだけでゼロから文明を築く」ことです。ライターを使わずに火を起こし、石を磨いて作った斧で木を切る。そんな原始のテクノロジーをひとつひとつ習得し、積み重ね、縄文時代から現代に至る文明の道のりを辿りたいと思っています(最終的には江戸時代くらいまでいくのが夢です)。竪穴住居もその一環で作りました。

活動のきっかけは色々あるのですが、一つはコロナ禍が始まってすぐの頃に感じた、都会のライフラインが断たれるかもしれないというリアルな危機感です。そのとき、この文明の脆弱さや、そこに頼り切ってる自分の足腰の弱さが見えた気がしました。そこで、同じ危機感を持っていた同期と一緒に、人類の文明をゼロから作り直して、強い足腰を手に入れようということで始めました。仕事が暇になったので、何か楽しいことしようぜというノリもあります(笑)

  • 週末縄文人のお二人(@wkend_jomonjinより引用)

ーー竪穴式住居の作り方はどのように学ばれたのでしょうか?

基本的なことは本や考古館の復元住居などを観察して学んでいます。ただ、そこで大事にしているのが「勉強し過ぎないこと」です。自分たちで考え、工夫して答えを見つけるのが醍醐味の一つなので。

お世話になっている縄文の考古館の館長さんに、「君たちは失敗するからおもしろい。私は一つの"正解"を知ってしまっているから、失敗したくてもできない。でもその失敗の中に大事な気づきがあるんだ」と言われました。このスタンスは今後も大事にします。

ーー作るときに気をつけたところや大変だったところや、楽しかったところ、完成した時のお気持ちなどをお聞かせいただけますか?

気をつけたのは、柱の木が地中で腐らないよう、先端を焼いて炭化させたことです。作って終わりではなく、実際に長く住みたいので、そういった細かい工夫もしています。ちなみに火起こしも道具を使わず、錐揉み式(木の棒を回転させ、板に擦り付ける方法)で行っています。

一番大変だったのは、笹を採って屋根に結びつける作業です。14日かけて2万本の笹を集めて結びつけたのですが、さすがに気が狂いそうでした。ただ、基本的にすべての作業が大変なのですが、その大変さを発見することが楽しくもあります。

  • クマザサで笹葺きの屋根に(@wkend_jomonjinより引用)

ーー具体的にはどのような発見がありますか?

例えば、石斧だと直径5センチくらいの木を切るのに10分ほどかかります。チェーンソーを使えば10秒なので、現代人の感覚からすればとんでもなく時間がかかるように思えますが、僕らは石斧を作れるようになるまで手で石を持って切っていました(ハンドアックスといいます)。そのときは30分ほどかかっていたので、石斧でも革命的なスピードに感じます。「石斧すげえ!」と思えるんです。少し文明批判的な意味で始めた側面もあったのですが、やればやるほど文明へのリスペクトが湧いてきています。

それに、石斧だと木の生命力にも気付かされます。切ろうとすると木の抵抗を感じるので、簡単には切りたくないと思うようになりました。木に対するありがたさや、畏敬の念のような感覚といいますか……。社会学者の見田宗介さんが本の中で、「存在するものへのデリカシー」という言葉を使っているのですが、その感覚が強くなったと思います。

ーーものすごく奥が深い世界なんですね。

最後に相方と力を合わせて屋根を乗せた瞬間は、今までに経験したことのない達成感で、思わず涙が出ました。少し引いて完成した家を見たときに、予想以上の大きさと美しさに驚きもしました(笑)。実際に住める家を自分たちの手で、自然のものだけで作れたので、ちょっと足腰が強くなったなと自信もつきました。

家への愛着もすごいです。縄文人は身の回りのものすべてをこうして作っていたと考えると、愛着にまみれて生きてたんだろうなあ、豊かな人生だったろうなあと思います。

  • 完成した竪穴式住居(@wkend_jomonjinより引用)

ーー住み心地はいかがでしょうか? また、雨の日でも快適に過ごせるのでしょうか?

住み心地はいいです。気温は外よりも涼しく、中は薄明かりで心地よいです。湿度は何もしなければ少し高いですが、中で火を焚けばカラッとするので問題ありません。焚き火の煙で虫もまったくいなくなります。雨風はよほどの土砂降りじゃない限り大丈夫です。一度警報級の雨が降ったときに入口部分の屋根から雨漏りしましたが、それ以外は大丈夫です。

  • 住居内で火を焚く(@wkend_jomonjinより引用)

  • 中から見える外の景色(@wkend_jomonjinより引用)

ーー今後作ってみたいものや挑戦してみたいことなどはありますか?

土器を作って、それで製塩(海水を蒸発させて塩を作ること)したいです。以前の動画で、手作りの網でヤマメを獲って食べたことがあるのですが、そのときめちゃくちゃ塩が欲しいと思ったので(笑)

それと、いつか製鉄もしたいです。なんだかんだ石斧で切るのは大変なので(笑)。鉄斧を手にした時の自分の感覚の変化も気になります。そうなったらもはや週末弥生人かもしれません。


今後は製塩や製鉄にも挑戦したいと夢を語ってくれた週末縄文人さん。活動の様子はツイッターやYoutubeに随時アップされるので、その動向を引き続きチェックしましょう♪