ディズニープラスとNHK BSプレミアムで配信・放送中のドラマ『拾われた男』で兄弟役を務めた俳優の仲野太賀と草なぎ剛にインタビュー。本作での役作りや初共演の感想を聞いた。

  • 『拾われた男』で初共演した草なぎ剛(左)と仲野太賀 撮影:蔦野裕

俳優・松尾諭が自らの波瀾万丈なサクセスストーリーを描いたエッセイをドラマ化した本作。売れない役者・松戸諭(仲野太賀)が自販機の下に落ちていた1枚の航空券を拾うところから物語は始まり、他人に“拾われ”続けることで諭は夢も恋もつかんでいく。諭の兄・武志を草なぎ剛、諭の運命の女性である比嘉結を伊藤沙莉が演じた。

仲野は、松尾の愛らしい感じや憎めない雰囲気を出すために、役作りで10キロ増量。SNSでは「太賀くんが松尾さんに雰囲気が似てる!」「松尾諭さんにそっくり」という声も上がっている。そして撮影終了後は、次の作品のために10キロ痩せて元の体重に。インタビューで久しぶりに仲野に会った草なぎは「痩せたね! すごいわ~別人だよ! 全然違う」と驚いていた。

――脚本を読んだときの感想からお聞かせください。

仲野:とても面白かったです。松尾さんがこんな人生を歩まれていたんだなと驚きましたし、最初は俳優のサクセスストーリーのように思えるけど、家族や恋人、兄弟などヒューマンドラマのほうに変わっていき、思いもよらない方向に展開していく。それがとても面白くて、ぜひやってみたいと思いました。

草なぎ:僕もすごくやりたいと思いました。松尾くんはほかの作品でも一緒だったので、脚本を読む前に原作も読んでいて、面白いなと思ったし、お兄ちゃんの役なので、松尾くんと縁あるなと。コロナの中、アメリカにも行けるかもしれないという思いもありましたし、何か発見することがあるのかなと思って、ドキドキワクワクしました。

――演じる際に特に意識していたことを教えてください。

仲野:松尾諭さんの実話がベースになっている作品ですが、松戸諭の人生を全うしようと思っていたので、そこまで松尾さんに寄せることは意識していませんでしたね。ドラマを見ながら振り返ってみると、松尾さんだったらこんな動きするかもなというのがどこかにあって、ヒントをもらいながらやっていた気がします。キャラクター自体に厚みがあったので、いろんな側面を見せていきたいと思ったので、人間味みたいなものを押して、うま味を出すことを意識しました。

草なぎ:僕も厚みを出していきたいなと。太賀くんも言っている通り、お兄ちゃんの写真とか見たりして実際の方に寄せなくていいなという感じで。松尾くん自身も好きにやってくれと言ってくれたので、でもどこか意識しているところもあるし、オリジナルで何か生み出せたらなと、そんな感じで演じていました。

――お兄ちゃん感は意識しましたか?

草なぎ:つかみどころがないような不思議な方だったので、お兄ちゃんという感じではなく、小さいときから弟はお兄ちゃんに届かないような感じだったので、のほほんとした感じでやりました。

――どんな兄弟関係として捉えていましたか?

仲野:弟の目線から言うと、全10話をかけてお兄ちゃんとの距離が少しずつ変わっていく話でもあるのですが、最初は好きになれず、肉親だからこそある気持ち悪い距離感だったり、でもなんだか体温があるような距離感で。僕も次男なので、兄に対するコンプレックスではないですが、同じ家族で同じ場所で生まれ育ったのになんでこんなに違うんだろうっていうざらつきとか、そういうものがベースにあるのかなと思いました。でも物語が進むにつれて、自分には見えなかった兄の姿に触れて、改めて兄弟というものを捉え直す諭だったと思います。

草なぎ:その場その場で感じたように演じていました。撮影でアメリカのカラマズーに行ったのですが、海外の方も温かくて、台本で読んでいるよりヒューマンな感じで、国境を越えて、人種を越えてみたいな雰囲気になって。家族の大切さとか、みんなが穏やかに生きられる世界とか、すごく平和な……最初は売れない俳優がすったもんだしているのに、アメリカに行ってすごいテーマに。そこがめちゃめちゃ面白いなと思っていて、どうなっているか楽しみです。