JR九州は20日、西九州新幹線「かもめ」と在来線特急「リレーかもめ」の対面乗換シミュレーションを報道公開した。武雄温泉駅の10番のりばに「リレーかもめ」の車両885系・787系、11番のりばに西九州新幹線「かもめ」の車両N700Sが並んだ。

  • 武雄温泉駅の11番のりばに西九州新幹線N700S「かもめ」、10番のりばに「リレーかもめ」の885系が並ぶ

9月23日に開業予定の西九州新幹線では、「かもめ」を上下計47本(下り24本・上り23本)設定し、うち44本(下り・上り各22本)を武雄温泉~長崎間で運転。武雄温泉駅で「リレーかもめ」「みどり(リレーかもめ)」など在来線特急列車と同一ホーム乗換えを行う。武雄温泉駅での乗換え時間は約3分(一部列車を除く)とされている。

開業後、対面乗換方式で運転するにあたり、約3分の停車時間内で乗客が安全かつ円滑に乗り換えられるように、武雄温泉駅で対面乗換シミュレーションを実施。約300名のJR九州社員が乗客役となり、「かもめ」「リレーかもめ」の相互で乗換シミュレーションを行った。JR九州によれば、九州新幹線が部分開業(新八代~鹿児島中央間)した際も、新八代駅で同様のシミュレーションを実施したという。今回のシミュレーションでは、武雄温泉駅での乗換え時分を実測するとともに、設備面(リレー特急の停止位置やサインなど)や乗客案内のオペレーション全般についての確認も行われた。

当日は在来線特急列車に使用する複数の形式でシミュレーションを実施。10番のりばに「リレーかもめ」で使用する6両編成の885系(6両編成)が停車する中、乗客役のJR九州社員を乗せたN700S「かもめ」(6両編成)が11番のりばに入線した。その後、「かもめ」から「リレーかもめ」、「リレーかもめ」から「かもめ」の順で、乗客役のJR九州社員による乗換シミュレーションが行われた。

  • 「リレーかもめ」に使用される885系が10番のりばに

  • 西九州新幹線「かもめ」(N700S)が11番のりばへ入線

  • 「かもめ」から「リレーかもめ」への乗換シミュレーション

  • JR九州社員が乗客役となり、乗換えを行う。車いす利用者を想定したシミュレーションも実施

「リレーかもめ」の885系が去った後、同じく「リレーかもめ」で使用予定の787系(8両編成)が10番のりばへ入線。885系と同様、787系においても「かもめ」から「リレーかもめ」、「リレーかもめ」から「かもめ」の順で乗換シミュレーションが行われた。車いすを日常利用する社員も乗客役として参加し、駅係員が用意したスロープを用いて乗降する場面も見られた。

乗換シミュレーションの後、取材に応じたJR九州鉄道事業本部 新幹線開業準備室副室長の今泉康彦氏は、「おおむね3分以内で乗り換えられたのではないかと思います。部分開業時の新八代駅で実施して以来、このような対面乗換えは行っていなかったので少し心配でしたが、スムーズにできたと思っています」と感想を述べた。

  • 885系の停車中、隣の2番のりば(在来線ホーム)から783系の特急「ハウステンボス」「みどり」が発車

  • 10番のりばに入線した787系。8両編成のため、1編成あたりの長さはN700S「かもめ」より長くなる

  • 計4回のシミュレーションを行った後、JR九州鉄道事業本部の今泉康彦氏(写真右)らが取材に応じた

一方で、新幹線・在来線の車体長や編成長などの違いから、乗車する号車によっては乗換えに時間がかかることや、今後増えると予想される訪日外国人への案内など、課題も浮き彫りになった様子。乗客役として参加した社員から、「やはり社員ということもあり、この列車のここが何号車というのがわかった上での乗換えでしたが、一般のお客様が乗車される場合、とくに新幹線から在来線へ乗り換える際の号車が少しわかりにくいかなという印象でした」といったコメントも聞かれた。

今泉氏は今回のシミュレーションを経て、「これからまとめを行い、乗換えを体験した(乗客役の)社員からアンケートを取り、改善点を集約したい」「まだサイン等に不十分なところがあり、よりスムーズに乗り換えられるよう整備するとともに、異常時のシミュレーションも行い、無事に開業を迎えられるようにテストを進めていきたい」と説明。報道公開の後も対面乗換シミュレーションは続き、異常時を想定して武雄温泉駅の1番のりば(在来線ホーム)に列車を停め、新幹線との乗換えに何分かかるかのシミュレーションも行うとのことだった。