6月某日に行われた収録は昼の12時頃から深夜23時頃まで、約11時間という長時間にわたるものとなった。トークセットとライブセットを組み直すという作業を何度も行うが、「やっぱりトークをして、この曲を歌いましょうという流れを大事にするんです」と手間を惜しまないスタイルは、レギュラー当時と変わらない。さらに、収録の順番も、出演者からの提案で急きょ入れ替えることがあったという。

「奈緒さんと歌う『今日までそして明日から』は、最初はわりと早い時間の収録を予定していたのですが、前日に拓郎さんから『この曲の収録は最後の曲の前に持っていきたい』と頼まれました。やっぱりそれぞれの楽曲に強い思いがあるんですよね。そうやって、収録スケジュールにいろいろ希望を出してくれるくらい、拓郎さんにとって思いのこもった収録だったのだと思います」

  • 吉田拓郎(左)と奈緒 (C)フジテレビ

他にも、KinKi Kidsが最後に拓郎と歌いたい「LOVE LOVEな曲」に選んだ「落陽」について、拓郎は収録当日に「キーを上げたい」と希望を出した。この急なオーダーにも、武部聡志、坂崎幸之助、鳥山雄司ら、百戦錬磨の「LOVE LOVE ALL STARS」のバンドメンバーが対応。「一流の音楽プロデューサーたちが、その場で譜面を書き直すなんて、やっぱりすごい現場だなと思いました」と実感した。

かつてテレビ出演を拒否するほどだった拓郎が、『LOVE LOVE あいしてる』という番組にここまで愛を注ぐようになった要因は何だったのか。三浦CPは「KinKi Kidsの影響が一番大きいのではないかと思います」と推察する。

「5年前に『LOVE LOVE―』の特番をする際に、拓郎さんと何度か打ち合わせをさせていただきました。いつも拓郎さんとはホテルのカフェで打ち合わせをするんですけど、拓郎さんは“打ち合わせ”と言わず、『あんみつ食べに行こう』って言うんです(笑)。そこで9割がレギュラー放送当時の思い出話、1割が特番のゲストや曲の話になるんですけど、『KinKi Kidsと出会って僕の人生は変わった』という話を、本当によくされるんですよ。日本の音楽界を変えたレジェンドであるあの吉田拓郎が、50歳になって人生で親友と呼べる2人と出会って、『僕の人生はそこからが全てだ』と言うくらい。レギュラー当時は、拓郎さんも拒否していたテレビに出てくれて、きっとやりたくないこともいっぱいあったと思うんですけど、それはKinKiと一緒だから付き合ってくれたんだなというのが、すごく伝わってきますね」

■KinKi Kidsに喜ばれるのは特別うれしい

人生において大きな影響を与えてくれた存在というのは、KinKi Kids側にしてもそうだろう。「KinKi Kidsも、拓郎さんと一緒にいると、20年前のあの頃に戻った感じなんですよね。『ブンブブーン』では見せない、当時10代だったKinKi Kidsに戻る瞬間があります」と感じた。

そんなKinKi Kidsの印象については、「僕は『堂本兄弟』でディレクターとして一緒に仕事をしたのが出会いでしたが、最初は気軽に話しかけてくれず、2週に1回収録現場で会うだけの関係という感じだったんですけど、いろんなことをやって経験を重ねていくうちに、だんだん心を開いてくれるという感覚があったんです。そうなると、実は昔からすごく協力的だったことに気づいて。当時ディレクターの僕が話すことに『分かりました! やります!』というテンションではなくて、『本当に聞いてるのかな…』と思うリアクションもあったのですが、やっぱり本番でちゃんとやってくれるんですよね。そうやって、番組やスタッフやゲストの方にすごく真摯(しんし)に向き合ってくれるのが分かってきて、『この人たちのためなら頑張らなきゃ』『この2人の喜んでる表情が見たい』という気持ちで番組を作るようになりました」と語る。

その上で、「もちろん、どの番組でも、出てくださる皆さんに喜んでもらいたいという思いがあるのは当然なんですけど、KinKiの2人に喜んでもらうと、何だか特別うれしい感じがあるんです。だから今回も、拓郎さんにもKinKiにも『最高だったね』『本当にありがとう』と言ってもらえるような番組にしたいとずっと頑張ってきたので、良い収録ができて本当に良かったです」と安堵の表情を見せた。