『警察庁特命捜査官 水野乃亜 デビルズチョイス』
イスラム過激派による日本人拉致事件がカザフスタンで発生した。現地に飛んだ警察庁国際テロリズム対策課の水野乃亜は、邦人救出と並行して、国際指名手配中のテロリスト・遠藤美沙との関係がウワサされる上司・佐山英吾の行動を監視するよう命じられていた。アメリカの特殊部隊によって救出された邦人たちがチャーター機で成田空港に降り立った頃、警察庁にカルト教団の信者を名乗る者から驚がくの犯行声明がもたらされる。さらに未知のウイルスへの感染が疑われる女が、忽然と空港から姿を消し――。

『警察庁特命捜査官 水野乃亜』シリーズは、これが3作目。警察官僚の水野乃亜は、警視庁刑事部捜査共助課係長(警部)、千葉県警刑事部捜査第二課課長(警視)、警視庁組織犯罪対策部組織犯罪対策第二課管理官(警視)と出向し、今作では警察庁警備局国際テロリズム対策課課長補佐(警視)とキャリアを積んできたが、どのようにキャラクターを作ってきたのか。

「刑事だったお父さんが殺害されたというところからシリーズ第1作が始まっているので、あまり陽キャラではない。スポーツはそれなりにできるけど、元からスーパーウーマンだったわけでなくて、彼氏の影響で鍛錬していって…という感じで広げていきました。3作目になるとやはり愛着がわいてきますが、“この要素を付け足したい”というのがどんどん増えてくると、当初のキャラとちょっとブレてくるので、そこは抑えながらという感じですね」

今作の最後でも、また新たな展開が示唆されているが、「彼女ももういい年齢になってきたので、今が現場に出るギリギリのところだと思うんです。やはりストーリーとしては現場の躍動感があるほうが描いていて面白いですから、次に書くとしたらちょっと違う形で活躍させたいですね。キャリア官僚の彼女は出世していっているので、そこのリアリティは崩したくないなと思います」と構想を明かした。

●初瀬礼
1966年、長野県安曇野市生まれ。上智大学卒業後、フジテレビジョンに入社し、社会部記者、モスクワ特派員、報道・情報番組のディレクター・プロデューサーを歴任。小説家として、13年にサスペンス小説『血讐』で第1回日本エンタメ小説大賞・優秀賞を受賞。同作品でデビューし、パンデミックをテーマとした『シスト』(16年、新潮社)、アフリカと東京を股にかけたサスペンス『呪術』(18年、新潮社)に続き、双葉文庫から『警察庁特命捜査官 水野乃亜』シリーズとなる『ホークアイ』(19年)、『モールハンター』(21年)、そして今作『デビルズチョイス』(22年)を発表した。