嫌な出来事が重なって起きてしまったときに、「泣き面に蜂」という表現が使われることがあります。この記事では、「泣き面に蜂」の意味や由来、使い方のほか、類語、対義語、英語表現などを紹介します。ことわざを正確に使いこなしたい人にとって役立つ内容ですので、ぜひご一読ください。

  • 「泣き面に蜂」の意味や由来、類義語などを紹介する記事です

    「泣き面に蜂」の意味や由来、類義語などを紹介する記事です

「泣き面に蜂」の意味

「泣き面に蜂」とは、「悪いことが重なること」「不幸の上につらいことが重なること」という意味があることわざです。

泣いているときに面、つまり顔を蜂に刺されてしまい、さらにつらい思いをする情景が目に浮かぶようですね。

「泣き面に蜂」の読み方

「泣き面に蜂」は、「なきつらにはち」と読みます。なお「泣きっ面に蜂」といわれることもあり、その場合の読み方は「なきっつらにはち」です。

「泣き面に蜂」の由来

「泣き面に蜂」は江戸時代中期頃に「泣きっ面を蜂が刺す」など、現在よりやや長い形で用いられていました。江戸時代後期には「江戸いろはかるた」に収録されたことがきっかけで、広く知られていきます。

20世紀に入ると省略されるようになっていき、「泣きっ面に蜂」「泣き面に蜂」として定着しました。

  • 「泣き面に蜂」とは悪いことが重なることを示すことわざです

    「泣き面に蜂」とは悪いことが重なることを示すことわざです

「泣き面に蜂」の使い方

「泣き面に蜂」は一般に広く浸透していることわざです。誤った使い方をして恥をかかないよう、適切な使い方を理解しておきましょう。ここでは、「泣き面に蜂」の使い方と例文を紹介します。

嘆くようなシーンで使われる

「泣き面に蜂」は、つらいことや悲しいことが重なって起こってしまうことを表したことわざですので、いい意味では使われません。不運なことが重なって起きてしまった状況を嘆くシーンでよく使われます。

「泣き面に蜂」の例文

・住宅ローンで支出が増えたのに業績不振で減給になってしまい、家計は火の車。泣き面に蜂とはこのことよ
・転んでけがをしただけじゃなく、スマートフォンまで壊れてしまい、まさに泣き面に蜂だ
・昨晩は酔った同僚の愚痴に付き合わされた上に、遠回りして自宅まで送ることになってしまって、泣き面に蜂だったよ
・終電に乗り遅れてしまい、疲れた中で歩いて帰っていたら車がはねた水たまりの泥水がかかって、泣き面に蜂という状況でした

上記のように「泣き面に蜂」は、不幸が重なった時に使える言い回しです。ビジネスシーンで使っても差し支えない表現ですので、覚えておきましょう。

  • 「泣き面に蜂」は不幸が重なり嘆く状況で使われます

    「泣き面に蜂」は不幸が重なり嘆く状況で使われます

「泣き面に蜂」に似たことわざ

「泣き面に蜂」と似た状況で使われることわざは多くあります。少しずつ意味が異なるので、状況に合わせて言い換えられるよう、ぜひ覚えておきましょう。

弱り目に祟り目(よわりめにたたりめ)

「弱り目に祟り目」の意味は、「不運が重なること」です。弱っている状態でさらに悪いことが起こると、まるで祟りに遭っているかのように感じられるという言葉です。「泣き面に蜂」と使われる状況が同じですので、言い換え可能な類義語として覚えておきましょう。

寝坊した上に電車の乗り換えを間違えるとは、弱り目に祟り目だ

踏んだり蹴ったり(ふんだりけったり)

「踏んだり蹴ったり」の意味は、「踏まれた上に蹴られた状態」、つまり「重ね重ねひどい目にあうこと」です。

今日の帰り道は、急に夕立が降ってくるしバスはなかなか来ないしで、踏んだり蹴ったりだった

傷口に塩(きずぐちにしお)

「傷口に塩」とは、「悪いことに悪いことが重なる」という意味があることわざです。痛くてたまらない傷口に塩を塗ることで、染みてさらに痛くなるという状況から、「傷口に塩」「傷口に塩を塗る」などといわれるようになりました。

一年間必死に頑張って勉強したのに資格試験には落ちるし、恋人には振られるしで、傷口に塩の状態だ

一難去ってまた一難(いちなんさってまたいちなん)

「一難去ってまた一難」は、「一つの災難が過ぎてほっとする間もなく、また次の災難が続けて起きること」を表すことわざです。「泣き面に蜂」と同様、トラブルが重なる状況で使われます。

プログラムの不具合がやっと修正できたと思ったら今度は回線トラブルが発生するとは、一難去ってまた一難だ

  • 「泣き面に蜂」の類語表現を例文とともに紹介しました

    「泣き面に蜂」の類語表現を例文とともに紹介しました

「泣き面に蜂」の対義語

「泣き面に蜂」とは逆の状況で使われることわざもいくつかありますので、併せて覚えておきましょう。

鴨が葱を背負ってくる(かもがねぎをしょってくる)

「鴨が葱を背負ってくる」とは「まるで鴨が、鴨鍋の具材の葱まで背負ってくるように、狙った相手が自らやってくるだけでなく、さらに望むものを持って現れること」という意味があることわざです。

「不幸が重なる」という意味がある「泣き面に蜂」とはまさに逆の意味です。なお、「利用しやすく、騙しやすいお人よし」を指すこともあるので、注意が必要です。

たまたま飛び込み営業した会社が契約してくれただけでなく、検討してくれそうな別の会社まで紹介してくれるなんて、まるで鴨が葱を背負ってくるような話だ

棚から牡丹餅(たなからぼたもち)

「棚から牡丹餅」には、「思いがけない幸運に巡り合うこと」「苦労せずにいいものを得ること」などの意味があります。ラッキーが「重なる」という意味はありませんが、幸運を表す言葉なので、「泣き面に蜂」とは逆の状況で使われるといえるでしょう。「棚ぼた」とも言います。

もらった宝くじが高額当選するなんて、棚から牡丹餅だ

漁夫の利(ぎょふのり)

「漁夫の利」とは、「他人の争いごとに便乗して、何の苦労もせずに利益を得ること」を例えたことわざです。こちらもラッキーが「重なる」という意味はありませんが、幸運を表す言葉です。

シェアを争う二大企業が攻防で消耗している中、漁夫の利で3番手の企業が躍進した

  • 「泣き面に蜂」の対義語には「棚から牡丹餅」などがあります

    「泣き面に蜂」の対義語には「棚から牡丹餅」などがあります

「泣き面に蜂」と同じ意味を持つ英語表現

・Misfortunes never come singly
(不運は単独ではやってこない)

・take a one-two punch
(素早いワンツーパンチを食らう)

・to complete the misery
(完全なる不幸)

つらい状況でさらに不運が重なることを例えた表現は、世界中にたくさんの例があります。英語表現では上記のような表現が代表的ですので、押さえておきましょう。

  • 「泣き面に蜂」の英語表現を紹介しました

    「泣き面に蜂」の英語表現を紹介しました

「泣き面に蜂」は不幸なことが重なるときに使われる表現

「泣き面に蜂」とは、不幸や不運が重なって起きてしまったことを例えたことわざです。世界中に似た意味を持つ表現はいくつもありますが、「泣き面に蜂」は言葉を見ただけで何となく状況が想像できる巧みな表現です。日本では、江戸時代には使われていました。

似た意味を持つ表現も多く、代表的なものには「弱り目に祟り目」「一難去ってまた一難」などがあります。「泣き面に蜂」とともに、使い方を覚えておきましょう。

「泣き面に蜂」は、日常会話でもビジネスシーンでも活用しやすい表現です。この記事で紹介した意味や使用例を参考に、使い方を覚えておきましょう。