「地獄の沙汰も金次第」「金に目がくらむ」など、お金の使い方に関わることわざや言い回しはたくさんありますが、その中に、「悪銭身につかず」という表現があります。例えばパチンコや宝くじなどのギャンブルで普段は手にしないような金額のお金を手に入れたときに、周りの人から忠告として言われがちな表現です。

この記事では、「悪銭身につかず」の意味や由来、使い方や、類語・英語表現などを紹介します。

  • 「悪銭身につかず」の意味や使い方を解説する記事です

    「悪銭身につかず」の意味や使い方を解説する記事です

「悪銭身につかず」とは

「悪銭身につかず」は、日本で古くから使われていることわざです。ビジネスでも使いやすい表現ですので、正確な意味をぜひ知っておきたい言葉。まずは、「悪銭身につかず」の基本的な意味を紹介します。

「悪銭身につかず」の意味

「悪銭身につかず」とは、「盗みや賭けごとなどで得た金銭は、無駄なことに使われやすく、すぐになくなってしまう」という意味があります。働かずして苦労をせずに金銭を得たとしても、後には残らないという意味のことわざです。

苦労せずに得たお金は、自ら汗水垂らして得たお金と比べると自分のお金という感覚が薄いため、つい多く使ってしまうのかもしれません。

「悪銭身につかず」の読み方

「悪銭身につかず」は「あくせんみにつかず」と読みます。なお「つかず」の部分は、「付かず」とも書きます。

「悪銭」とは

「悪銭身につかず」に使われている「悪銭」には、下記のような2つの意味があります。

  • 悪いことをして手に入れた金銭や、働かずに手に入れた金銭。あぶく銭。
  • 低品質な貨幣

「悪銭身につかず」の場合、前者の意味で使われています。

「悪銭身につかず」の由来

「悪銭身につかず」ということわざの由来は、はっきりとはわかっていません。ただし少なくとも1860年(江戸時代)に初演された歌舞伎で使われていたことがわかっています。

三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)という演目の序幕にあるせりふに、「もし悪銭は身に附(つ)かずとはよく申したもの、僅二月(わずかふたつき)たつかたたぬにみんな耗(す)ってしまひました」とあります。

江戸時代には既に使われていたことから、古くから日本でなじみのある表現だということがわかります。

  • 「悪銭身につかず」は江戸時代には使われていた表現です

    「悪銭身につかず」は江戸時代には使われていた表現です

「悪銭身につかず」の使い方

「悪銭身につかず」は少し古めかしい言い回しですので、使い慣れていないと適切な使用シーンや使い方がわかりにくいかもしれません。そこで、「悪銭身につかず」の使い方や例文を見ていきましょう。

戒めの意味で使う

「悪銭身につかず」とは、「あぶく銭を手に入れてもすぐになくなってしまいますよ」という意味がある言葉です。お金を手に入れるならまっとうに働いて手に入れた方がいいという意味を込めて、よく戒めの言葉として使われます。

「悪銭身につかず」の例文

- 競馬で大穴を当てたのにさらに競馬につぎ込んですってしまうとは、悪銭身につかずとはまさにこのことだ

- 宝くじで大金が当たったからといって、「悪銭身につかず」という言葉を心に留め置いて、仕事は続けた方がいい
- 彼は不正受給したお金を、悪銭身につかずの言葉通り使い切ってしまったらしい。今になって返還請求をされて困っているそうだ

このように「悪銭身につかず」は、ギャンブル、また法律や正義に反する方法などで、一時的に大金を手に入れた人に対して使われます。

  • 「悪銭身につかず」の使い方や使用例を紹介しました

    「悪銭身につかず」の使い方や使用例を紹介しました

「悪銭」の類語・関連語

「悪銭身につかず」や「悪銭身につかず」に使われている「悪銭」には、似た意味がある言葉がいくつかあります。ここでは、「悪銭身につかず」「悪銭」などの類語・関連語を見ていきましょう。

あぶく銭(ぜに)

「あぶく銭」は、「苦労をせずに、あるいは不当に得た金銭」という意味がある言葉です。漢字で書くと「泡銭」です。泡のように消えてなくなってしまうということから来ています。

「悪銭」を言い換えられる同義語として覚えておきましょう。

棚から牡丹餅(ぼたもち)・棚ぼた

「棚から牡丹餅」、あるいはそれを省略した「棚ぼた」には、「思いがけない幸運に遭遇すること」という意味があります。苦労せずにいいものを手に入れられることを例えたことわざで、「悪銭身につかず」と意味が似ている言葉です。

ただし、「悪銭身につかず」のように戒めの言葉としてはあまり用いられず、単に思わぬ幸運を指して「棚から牡丹餅」と表現します。また、金銭に限らず幸運だと思ったこと全般に使用できます。

ぼろ儲け(もうけ)

「ぼろ儲け」とは、「少ない元手や労力にも関わらず、多くの利益を獲得すること」を指します。苦労をせずに利益を上げる点では「悪銭」と似ていますが、「不当に得た利益」という意味はありません。

つまり「ぼろ儲け」は働いて得た利益に対しても使われる点が、「悪銭」との違いです。

なお「ぼろ」は「ぼろい」から来ていて、常識以上に多い、つまり割がいい、という意味があります。

  • 「悪銭」には似た意味を持つ言葉がいくつかあります

    「悪銭」には似た意味を持つ言葉がいくつかあります

「悪銭身につかず」の英語表現

ビジネスや日常会話で英語を使う機会があるなら、「悪銭身につかず」の英語表現も覚えておきましょう。ここでは、「悪銭身につかず」と似た意味がある英語表現を紹介します。

easy come, easy go

直訳すると、「楽に入るものは楽に出ていく」で、まさに「悪銭身につかず」と言えるでしょう。ただし「不正」というニュアンスはなく、あくまで「楽に手に入れたもの」という意味になります。

また、戒めというよりは、「楽に手に入れたものだから、失ってもしょうがない」といった感じで、諦めを表す際に多く使われるようです。

soon gotten soon spent

「soon gotten soon spent」は「早く儲けたお金はすぐに使ってしまう」という意味がある英語表現です。こちらも「悪銭身につかず」の英語表現として使われますので、覚えておきましょう。

ill got, ill spent

「ill got, ill spent」には、「悪い手段で手に入れたものは、悪いものとして出て行ってしまう」という意味があります。「楽に」というよりは「悪い、不正な」というニュアンスが強い表現です。

  • 「悪銭身につかず」には似た意味がある英語表現がいくつかあります

    「悪銭身につかず」には似た意味がある英語表現がいくつかあります

「悪銭身につかず」は戒めの意味で使われることわざ

「悪銭身につかず」ということわざに使われている「悪銭」には、「悪いことをして手に入れた金銭」という意味があります。つまり、「悪銭身につかず」は、「盗みや賭けごとなど悪いことをして金銭を手に入れても、無駄な出費になってしまいすぐになくなってしまう」という意味です。

古くからある表現で、江戸時代の歌舞伎でもせりふとして使われていた歴史があり、現代でも戒めの言葉として使われます。

もし身近にパチンコや宝くじなどのギャンブルにはまり過ぎている人がいたなら、「悪銭身につかず」を戒めの言葉として伝えてみるのもいいでしょう。