不義理な人などに対して使われる「恩を仇で返す」という言葉。職場などでもよく聞く表現ですが、正しい意味や使い方を知っていますでしょうか?
今回は、「恩を仇で返す」の読み方や意味、使い方などを例文つきで解説。また、「恩を仇で返す」の類語や対義語、英語表現などもご紹介しますのでぜひ参考にしてください。
「恩を仇で返す」とは?
「恩を仇で返す」とは、具体的にどのような言葉なのでしょうか。
まずは、「恩を仇で返す」の意味などを確認してみましょう。
「恩を仇で返す」の読み方と意味
「恩を仇で返す」は「おんをあだでかえす」と読み、「恩人に恩返しをせずかえって害を与える」という意味です。
通常、人からの善意を受けると何かしらの形で恩返しをしたいと思うものですが、恩に報いることなくかえって害を与える様子を表現しています。
「恩を仇で返す」の使い方と例文
「恩を仇で返す」は、日常生活においてもビジネスシーンにおいても使える言葉です。
誤用を避けるためにも、それぞれのシーンにおける使い方を例文で確認しておきましょう。
「恩を仇で返す」の例文
あの人は恩を仇で返すような人間のため、誰も積極的に手伝おうとしない
わざわざ残業して後輩を指導したのに、後日「ミスをしたのは先輩の教え方が悪かったせいだ」といっていたことを知った。恩を仇で返された気分だ
ビジネスは損得勘定なしでは成り立たないが、恩を仇で返すようなことを続けているといつか痛い目を見るだろう
上司にはお世話になったものの、危うく失礼な態度を取るところだった。恩を仇で返すわけにはいかないため注意しなくてはならない
友達に服を貸してあげたら、シミなどの汚れがついた状態で返された。恩を仇で返すとはまさにこのことだ
「恩を仇で返す」の類語・言い換え表現
言葉の意味をより深く理解したり使い方のポイントを把握したりするためには、類語を知っておくことも効果的です。
「恩を仇で返す」にも似た意味を持つ言葉がいくつかあるので、それぞれの類語の意味を確認しておきましょう。
(1)飼い犬に手を噛まれる
「飼い犬に手を噛まれる」は、自分が可愛がっていた人や配下の者から、思いがけない攻撃を受けることを意味することわざです。
自分が目をかけていた人物から裏切られることを、日頃から面倒を見ている飼い犬に攻撃されることにたとえています。
(2)軒(のき)を貸して母屋(おもや)を取られる
「一部を貸したらやがて全部を奪われる」という意味の「軒(のき)を貸して母屋(おもや)を取られる」という表現。
「庇(ひさし)を貸して母屋を取られる」ともいい、保護をした相手に、恩を仇で返されることを表しています。
(3)後足(あとあし)で砂をかける
「後足(あとあし)で砂をかける」は、「世話になった人を裏切るばかりか去り際にさらに迷惑をかける」という意味の言葉です。
犬や馬が走り去る際に後ろ足で砂を蹴散らし、残るのは汚れた土だけだということが由来です。「恩を仇で返す」とほぼ同じニュアンスで使えます。
(4)獅子身中(しししんちゅう)の虫
「獅子身中(しししんちゅう)の虫」は、仏教の経典から由来した表現となっています。
獅子の体の中に寄生している虫がやがてその獅子を死に至らせることを指しており、組織の内部の人間でありながら災いをもたらす者や、裏切り行為をする者をたとえた古事成語です。
(5)忘恩負義(ぼうおんふぎ)
「忘恩負義(ぼうおんふぎ)」は、恩義を忘れて義理に背くことを意味する四字熟語です。
「恩を忘れ義に負く(そむく)」のように訓読が用いられることも多く、「恩を仇で返す」とほぼ同じニュアンスで使用できます。
「恩を仇で返す」の対義語
「恩を仇で返す」の意味をしっかりと把握するためには、反対の意味を持つ言葉を確認しておくことも必要です。
ここからは、「恩を仇で返す」の代表的な対義語を紹介します。
(1)仇を恩で報ずる
「仇を恩で報ずる」は、「恨みのあるものに対して情けをかける」という意味の言葉です。
本来なら憎むべき相手を憎まず恩を与えることを指しており、「恩を仇で返す」とは対極の意味の言葉となります。
なお、「恩を以て怨み(うらみ)に報ず」も同じ意味の言葉として使えます。
(2)恩義に報いる
以前に良くしてもらった相手に恩を返すという意味の「恩義に報いる」。
義理を果たす様子を表す言葉で、「恩を仇で返す」の対義語として使える表現です。
また、同じ意味を持つ言葉として「旧恩に報いる」や「借りを返す」などの表現が挙げられます。
「恩を仇で返す」の英語表現
仕事で英語を使ったり外国人の知り合いが多かったりする人の中には、「恩を仇で返す」の英語表現を知りたい人もいるでしょう。下記が「恩を仇で返す」の英語表現です。
意味:恩を仇で返す
意味:あなたを食べさせてくれる人の手を噛むな
「恩を仇で返す」は、「return evil for good」や「Don't bite the hand that feeds you.」などで表現できます。
「return evil for good」は、「善意(good)」に対して「evil(悪意)」を返すという意味。
「Don't bite the hand that feeds you.」は「あなたを食べさせてくれる人の手を噛むな」という意味で、「飼い犬に手を噛まれる」に近い表現です。
どちらも「恩を仇で返す」のニュアンスで使えるフレーズなので、覚えておきましょう。
恩を仇で返す人の心理や末路
「恩を仇で返す」は非道徳的な行為といえますが、なぜこのようなことをしてしまう人がいるのでしょうか。
恩を仇で返す人は、誰かに何かしてもらうことを当たり前だと思っていたり、相手がしてくれたことをすぐ忘れたりするといった特徴があります。
そもそも「恩を受けた」と感じておらず、失礼なことをしでかしたとしても罪悪感がないのでしょう。
このような人は、困った時に誰からも助けてもらえないだけでなく、自分も恩を仇で返され「因果応報」ともいえる末路を迎えてしまうのではないでしょうか。
そのような事態にならないためにも、日頃から人の気持ちを理解しようとしたり、感謝の気持ちを大切にしたりすることを心がけるべきでしょう。
「恩を仇で返す」の意味や使い方、類語などを理解しておこう
「恩を仇で返す」は、「恩返しをせず、かえって恩人に害を与える」という意味で、モラルに欠けている人や常識的ではない人を指す時などに使われる言葉です。
日常生活はもちろんビジネスシーンでもよく使われる表現ですので、使用シーンや適切な使い方などを覚えておくといいでしょう。
意味や類語、英語表現などもあわせて知ってしておくと、理解をさらに深められますよ。