JR東日本は7日、超電導技術を活用したフライホイール蓄電システムの試験設備が中央本線穴山変電所に完成し、世界初という鉄道用超電導フライホイール蓄電システムの実証試験を6月8日から開始すると発表した。

  • 超電導フライホイール蓄電システム(提供 : JR東日本)

JR東日本では、電車のブレーキ時に発生する回生電力エネルギーを有効に活用するための蓄電媒体の導入を行っており、そのひとつとして、JR東日本研究開発センター環境技術研究所にて超電導技術を活用したフライホイール蓄電システムの開発に取り組んでいる。このほど試験設備が中央本線穴山変電所に完成し、実証試験を開始することとなった。

電車のブレーキ時に発生する回生電力エネルギーは、架線を介して他の列車が活用するが、同じ変電所区間に他の列車がいない場合、エネルギーが活用されない。JR東日本では、エネルギーを地上に設置した蓄電池に貯めて有効活用する取組みを行っている。

フライホイール蓄電システムは、装置の内部にある大型の円盤であるフライホイールロータが回転することで、発電電動機を介して回生電力エネルギーを運動エネルギーとして貯蔵(充電)し、必要に応じてエネルギーを放出(放電)するシステム。年間の省エネ効果は146MWh/年とされている。充放電の繰返しによって性能が劣化せず、有害物質を含まない構造のため、環境に優しい特徴もあるという。フライホイールロータの荷重を受ける軸受け部分に超電導技術(超電導磁気軸受)を採用することで非接触とし、メンテナンスコストの削減やエネルギー損失の低減も図っている。なお、超電導フライホイール蓄電システムの鉄道への応用は世界初とのこと。

機能としては、下り勾配を走行する列車から回生電力エネルギーを運動エネルギーとして貯蔵し、上り勾配を登坂走行する列車にエネルギーを放出する。このシステムのエネルギーによって登坂走行をアシストするため、変電所から送電する電力の削減が可能になるという。

  • 実験棟(写真中央下)と中央本線穴山駅(提供 : JR東日本)

試験設備は勾配を走行する列車のエネルギーを活用することから、中央本線穴山駅に隣接する穴山変電所に設置。6月以降、穴山駅付近を走行する列車走行時の充放電を実施し、充放電特性やシステムの有効性の検証を行い、将来の実装をめざすとしている。

なお、鉄道用超電導フライホイール蓄電システムの開発は、山梨県や鉄道総合技術研究所と2018年3月に締結した超電導フライホイール技術に関する基本合意にもとづき、連携して取り組んでいる。