最近、電気自動車(EV)に乗る機会が増えてきた。各社から最新モデルの投入が相次いでいるからだ。ただ、短い試乗では、EVの力強く静かな走りは味わえるものの、実際の使い勝手については想像するしかなかった。今回はトヨタ自動車「bZ4X」とスバル「ソルテラ」に長距離試乗して、EVのリアルを探ってみた。

  • スバルのEV「ソルテラ」

    リアルワールドでEVは使える? 長距離試乗で検証!(写真はスバル「ソルテラ」)

下り坂でバッテリーがどんどん回復?

トヨタとスバルのEV兄弟モデルといえる「bZ4X」と「ソルテラ」。開発はトヨタの車内カンパニーであるZEVファクトリーにスバルの技術者が出向く形で進められた。トヨタでは「e-TNGA」、スバルでは「e-SUBARU GROBAL PLATFORM」と呼ぶ専用アーキテクチャーは、名前こそ違えど中身は同じ。当然、2台のボディサイズは全長4,690mm、全幅1,860mm、全高1,650mm、ホイールベース2,850mmで全く一緒だ。

  • トヨタのEV「bZ4X」

    トヨタ「bZ4X」

エクステリアでは、bZ4Xがグリルレスのつるりとしたフロントマスクを採用して少し未来的であるのに対し、ソルテラのフロントはスバルを象徴する六角形のグリル的な「枠」とフォグランプを装着し、アウトドアや“土”の匂いがするデザインとなっている。販売についても、bZ4Xは個人向けがサブスクの「KINTO」のみだが、ソルテラは通常通りの販売(売り切り)と結構な違いがある。

  • トヨタのEV「bZ4X」
  • スバルのEV「ソルテラ」
  • 左が「bZ4X」、右が「ソルテラ」

今回の試乗会はトヨタとスバルの2社合同開催。その内容は、5台ずつのbZ4Xとソルテラが①東京スタート→富士スピードウェイで乗り換え→静岡ゴール(230km)、②静岡スタート→浜名湖乗り換え→名古屋ゴール(250km)、③名古屋スタート→郡上八幡で乗り換え→金沢ゴール(256km)、④金沢スタート→松本乗り換え→軽井沢ゴール(262km)、⑤軽井沢スタート→長瀞乗り換え→東京トヨタ本社ゴール(207km)の計5ルートをメディア・ジャーナリストチームがバトンタッチしながら回って、公道上でEVをじっくりと体験試乗するというもの。わが「マイナビ」チームは最終の⑤区間を担当した。

  • トヨタのEV「bZ4X」

    ロングドライブへの出発を控える「bZ4X」と「ソルテラ」

試乗車は前半部分がbZ4Xの「Z」グレード(FWDモデル)で、ボディカラーはプラチナホワイトパールマイカ×ブラックルーフの2トーン。後半部分がソルテラ「ET-HS」グレード(AWDモデル)で、プレシャスメタルのボディカラーだった。

当日は午前9時過ぎに雨模様の軽井沢プリンスホテル駐車場を発進。スタート時点でのバッテリーの残量は70%ほどで、メーターに表示された航続距離はエアコンオフで349km。雨天のため走り出してすぐにエアコンを入れると、残りの距離は一気に271kmまで縮まってしまった。前半のミッションとして、中継地点で残りの航続距離を200km以上残すことというのが課せられていたので、途中のどこかで充電する必要がある。

  • トヨタのEV「bZ4X」
  • トヨタのEV「bZ4X」
  • 出発時のメーター。エアコンを入れると航続距離が271kmに

ルートとなっている「姫街道もみじライン」はしばらく下り坂が続くので、「ECO」モード+ワンペダルでワインディングを降りていく。こうした走行では回生によるエネルギーの回収がはかどるので、12kmほどの坂道を下ると航続距離は282kmまで回復した。そのまま「道の駅しもにた」まで走り、1台だけ設置されている20kWの急速充電器に接続。20分の充電時間で航続距離が315kmまで回復した。バッテリー残量としては、おそらく80%というところだろう。

  • トヨタのEV「bZ4X」

    下り坂を延々と下っていると航続距離が282kmまで回復

  • トヨタのEV「bZ4X」
  • 急速充電器
  • 「道の駅しもにた」で充電

  • トヨタのEV「bZ4X」

    急速充電で315kmまで戻した

なんとなく満たされた気分になり、中継地点の長瀞に向かって神流川沿いのワインディングを気持ちよく抜けていく。クルマはFWDモデルだけれども、コーナー手前でアクセルオフすればフロント荷重で上手にコーナーをクリアしてくれるし、18インチのブリヂストンはエアボリュームがあって乗り心地が良く、とても静かだ。

静かな車内では、専用チューニングの「JBL」サウンドシステムが抜群の効果を発揮する。試聴用に用意されていたプレイリストは80年代の懐かしい曲が多く、聞き惚れながら楽しくドライブできた。充電時間を入れると3時間20分で113kmを走って(一般道のみ)、長瀞の「花のおもてなし 長生館」に到着。残りの航続距離は233kmとなっていて、無事ミッションをこなすことができた。

  • トヨタのEV「bZ4X」
  • トヨタのEV「bZ4X」
  • 「bZ4X」は「JBL」のサウンドシステムを搭載

充電スポットが埋まっている?

昼食後はソルテラに乗り換えて出発だ。こちらはタンのレザーシートや20インチの大径タイヤを装着したAWDの豪華バージョン「ET-HS」グレードで、価格は700万円オーバー(オプション込み)。スバルの知見をいかした前後独立式モーターのAWDに悪路走破性を高めた「X-MODE」、走りのキャラクターを変える「ドライブモードセレクト」、回生の減速度を調節するパドルスイッチなど、EVの走りを楽しみたいユーザーにはピッタリの装備を誇っていて、もちろんワンペダルの「S PEDAL」も装備している。

  • スバルのEV「ソルテラ」
  • スバルのEV「ソルテラ」
  • スバルのEV「ソルテラ」
  • 「ソルテラ」に乗り換えて長瀞からトヨタ東京本社に向け出発

  • スバルのEV「ソルテラ」
  • スバルのEV「ソルテラ」
  • 「X-MODE」などを搭載する「ソルテラ」の「ET-HS」グレード

ルートとしては、午後1時半に長瀞をスタートして花園ICから関越に乗り、事故渋滞を避けるため練馬ICで降りて一般道を走り、文京区のトヨタ東京本社に向かった。スタート時の残り航続距離は220km。関越道上の充電ポイントとして予定していた高坂SA、三芳SAの2カ所には充電し始めたばかりの同業他社がいたため、こちらは都内で一般道に降りてから、なんと日産自動車のディーラーさんに入らせてもらい、急速充電器のお世話になった。この時点までで72kmを走っていたが、充電はほんの少しで済ませたので、バッテリーの残りは50%くらい、航続距離は177kmの表示となった。トータルではちょうど3時間、計84kmを走り、トヨタ東京本社到着時点で残りは163kmとなっていた。

  • スバルのEV「ソルテラ」

    当たり前なのだが、スバル車で充電に立ち寄っても日産のディーラーさんからは何もいわれなかった

ソルテラのAWDモデルはダンパーのセッティングが少し硬めで、かつタイヤの扁平率が高いので、乗り心地だけを見ると18インチモデルには劣るのだが、3月の雪上試乗でも感じていた走りの楽しさという面が、通常の一般道でも十分に伝わってきた。走行面でのセッティングがいろいろとできるし、コーナリングの姿勢が安定しているので、いいペースで走り続けることができるからだ。

  • スバルのEV「ソルテラ」

    乗って楽しいのはEVの大きな特徴

ソルテラのサウンドシステムは「ハーマンカードン」を搭載。特にボーカルの中音域が際立つようなピュアサウンドが楽しめた。EVには高性能なサウンドシステムがよく似合う。それを再認識できたのも今回の試乗会の収穫だ。

EV普及に向け大事なことは…

EVをリアルワールドで、実際の生活環境で乗るとすれば、最も気になるのは充電インフラのこと。今回の試乗で体験した限りだと、作業自体はそれぞれの充電器に表示してある図を見ればすぐにわかる簡単なものなのだが、実際に設置された充電器を前にしてみると、クルマは最新なのに機器自体は相当に年数が経っていて、画面が白茶けて表示が読み取りにくかったり、押すボタンの位置がいつも同じなのでその部分だけが恐ろしく劣化していたり、給電用コードを収納するフタの立て付けが歪んでいたりと、散々な状態のものが多かった。

また、同じ時間に同じ場所から、同じ目的地を目指してたった数台のEVが出発しただけで、ルート上にある充電ポイントが次々に埋まっていくことになることもわかった。例えば、ナビで目指す充電ポイントが「空」の表示になっていても、目の前を走るEVが同じSAに入って行って充電を始めてしまったら、充電器が空くまでの30分と自分の充電時間30分の計60分は動けなくなってしまう。

EV普及のためにはインフラ整備が必要、というのは以前からいわれていることだが、やっぱりリアルな世界ではまだまだ足りないというのが正直な感想だ。メーカー側としても高性能のEVを開発するだけでなく、環境を作るためのロビー活動がもっともっと必要なんですと開発の方も口にされていた。EVが静かでよく走るということは、一度でも乗ってみれば誰でも気が付くこと。その普及のためには、さらなるアイデアが必要なことがよくわかった。