フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)では、居候たちが集まる家に密着した『うちにおいでよ ~居候たちの家~』を、5日に放送。そこに映し出されるのは、困っている人を放っておけない森川家の母・愛さん(41)と、彼女に救われる人々の姿だ。
そんな愛さんを「ひまわりのような方」と形容するのは、取材した森山智亘氏(ネツゲン)。今回の密着を通して見えた、居場所のない人たちを受け入れる“覚悟”、そして“新しい家族の形”とは――。
■イベントで知り合い「うちにおいでよ」
森川家で1年前から居候するコウジさん(仮名・29)は、幼い頃から、両親から医者になることを強いられ、実家を飛び出した後、とあるイベントで愛さんと知り合い、「うちにおいでよ」と招かれた。
もう1人の居候は、森川家の子どもたちのお姉さん的存在であるユリさん(仮名・30)。結婚を反対されたことがきっかけで親と距離を置くようになったが、コウジさんとの子どもを身ごもったことを知った愛さんが呼び寄せた。
そんな“困った人がいたら放っておけない”という愛さんとの初対面について、森山氏は「番組内でも着ているのですが、黄色いワンピースがとても印象的で、遠く離れたところからでも『絶対あの人だ!』って気づくくらい、もう“花”っていう感じの明るさがあったんですよ。そこから取材を進めていっても、その印象は変わりませんでした」と振り返る。
森川家には居候だけでなく、近所の人や仕事などの付き合いがある人など、多くの人が集まるが、「それは愛さんのキャラクターに惹かれてくるんです」(森山氏、以下同)といい、いつも笑顔で周りを明るくさせる姿が印象的だ。
■肩書きで人を見ない性格
困った人を家賃なしで居候させる愛さんは、自身の性格を“いちいちおせっかい、世話焼きなおばちゃん”と謙そんするが、番組中に彼女の口から発せられるのは「責任」という言葉。おおらかで勢いに任せて受け入れるのではなく、覚悟を持っての行動であることが感じ取れる。
「コウジさんとユリさんに関しては、緊急避難の場所として自宅の場所を提供するという認識だったんですけど、僕が彼女から『責任』という言葉が出ているのに気づいたのは、香港からやってきた11歳の少年を受け入れるときでした。彼にとって親代わりになるということだったので、それまでとは違う意味での覚悟を感じました」
また、愛さんがユリさんを受け入れた理由について、“無職で人の家で居候している男の子のことを好きって言ってる女の子が、心が汚れているはずがない”と語るのも、彼女の性格を表している。
「肩書きで人を見ていないんですよね。森川家にはいろんな人が遊びに来るのですが、社会的地位のある人がいても、隣のおばちゃんの応対を優先しちゃうとか、誰に対しても同じ接し方をされるんです。それは子どもたちにもそうですし、僕ら取材の人間に対してもそうでした」
そんな家庭で育った子どもたちが、他では得がたい経験をしているのは間違いない。
「例えば、コウジさんが何か悩んでいることがあったら家族会議みたいな形で伝えるんですけど、そこに愛さんが『ちょっとここで一緒に聞きなさい』と子どもを呼んで参加させるというケースを時折見かけました。いろんな大人たちが来るような家なので、子どものうちからいろんな人生に触れられるんですよね。そういう意味で、社会勉強というか、学校では得られないような知識や経験があるのではないかと、見ていて感じました」