最近の急激な円安が連日ニュースになっていますが、円安が進むと私たちの生活にどのような影響があるのでしょうか。そもそも円安とはどのような状態なのか、円安になるメカニズムとその影響をわかりやすく解説します。

  • 円安のメリット・デメリットとは

    「円安」が進むと私たちの生活にどのような影響がある?

■円安とは

まずは、「円安」の言葉の意味をおさらいしましょう。

円の他の通貨に対する相対的価値が上がっている状態を「円高」、下がっている状態を「円安」と言います。たとえば、海外旅行に行って、100円を両替したら1ドルになったとします。次の年に同じ場所に行き、今度は120円を出さないと1ドルに交換できなかったら、円の価値が下がった(安くなった)ことがわかるでしょう。これが「円安」です。

逆に80円で1ドルに交換できたら円の価値が上がった(高くなった)ということなので「円高」となります。なんとなく80円は安い、120円は高いと考えて逆に覚えてしまいがちですが、1ドルと替えるのにたくさんの円が必要になったら円が安くなったと考えられますね。

■円安のメリットとデメリット

ニュース報道では、円安によって輸入品が高くなるなど、円安が悪いこととして捉えられていますが、円安にはメリットとデメリットの両方があります。

*円安のメリット

輸出企業にとっては、海外で稼いだ外貨をより多く円に転換できるので、円安は望ましいものになります。また、価格競争力も高まります。たとえば300万円の車を海外市場で販売すると、1ドル=100円の場合は3万ドルで車を売ることになりますが、円安によって1ドル=120円になると2万5000ドルで販売できるので、価格競争で有利になります。

さらに、海外の金融資産に投資している場合も、利子や配当金を円に換算すると増えるので、円安はメリットになります。他にも、海外からの旅行客の増加によるインバウンド消費が期待できることも円安の恩恵と言えます。

*円安のデメリット

海外からものを購入するとき、円安では交換できる外貨が少なくなるため、購入費用が上がってしまいます。日本はエネルギー資源や食料、機械など、多くのものを輸入に頼っています。

円安によって、これらの価格が高くなってしまうと、私たちの生活を圧迫することになります。他にも、海外旅行や留学の費用が割高になることも円安のデメリットです。

■どうして円安になっているの?

円安がどのようなものか理解できたところで、なぜ今円安になっているのか、その背景を見てみましょう。

2022年5月6日現在の東京外国為替市場の円相場は、1ドル=130円後半まで値下がりし、およそ20年ぶりの円安水準となっています。この原因としてあげられているのが、日米の金利差の拡大です。

アメリカの労働省が発表した今年3月の消費者物価指数は、前年同月比+8.5%となり、およそ40年ぶりの高水準となりました。これを受けて、アメリカの中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)はインフレを抑え込むために金融引き締めを行い、これによってアメリカの長期金利は上昇しています。つまり、インフレ(ものの値段が上がり続ける)になると、貨幣の価値は下がる(買えるものが少なくなる)ので、貨幣価値を守るために金利を上げる(お金を持っていた方が得する)という考え方です。

一方、日銀はそれとは対照的に金融緩和を続ける姿勢を鮮明にしています。金融緩和は政策金利を引き下げて市場に出回るお金を増やす政策です。

このような日米の金融政策の動向によって、日米の金利差が今後も広がり続けると多くの投資家は考えます。金利差が大きくなれば、より利回りが見込めるドルを買って、円を売る動きが強まり、円安が加速するというわけです。

■円安による生活への影響

円安のメリットとデメリットは先述したとおりですが、「輸出企業に勤めていて、高業績によって給料が上がった人」、「海外の資産に多く投資している人」以外は、デメリットの方が私たちの生活に及ぼす影響は大きいでしょう。コロナ禍によって、海外からの旅行客の需要が見込めないことも円安のメリットを損なっています。

ウクライナ情勢によって、エネルギー価格や原材料の高騰が懸念されている中で、さらに円安が追い打ちをかける形で輸入コストが増加しています。材料費や燃料費が高くなれば、国内生産物の製造コストも増加するので、さまざまなものの販売価格が上がることが予想できます。

すでにガソリン価格や電気料金、一部の食品が値上げとなっています。今後さらに食品の値上げが続き、日用品やサービス料金などにも値上げの波が押し寄せ、家計を圧迫してくる可能性があります。

■円安のメリットを取り入れる

円安によるデメリットばかりに目を向けていても仕方がないので、円安のメリットを取り入れることを考えましょう。たとえば、外貨預金や米国株式、投資信託など、現金以外の資産を持つといいでしょう。海外の金融資産を持っていれば、相対的に保有資産の価値が上がります。

海外の資産に投資するのはハードルが高いと感じる人は、初心者でも簡単にできるつみたてNISAがおすすめです。つみたてNISAで投資先を米国や先進国、全世界とした投資信託を積み立てることで、海外の資産を保有していることになるからです。

円安で生活コストが上昇しても、一方で貯蓄が増えていれば、個人でできる円安対策に成功したことになります。投資はリスクがありますが、現金だけ持つこともまたリスクであることは認識しておくとよいでしょう。