情けないほど浅はかだった。今ではハッキリとそう思っている。
先日、とんかつ専門チェーン「かつ庵」で食事をした際のことである。そもそも、かつ庵は個人的に長年の“推し”の店だ。ところが現在、期間限定で展開している「ポークチョップフェア」のポスターを見たときに、ふと心の中でツッコんでしまったのだ。
「カツちゃうやんけ」と。「フライの専門店なのに衣をまとっていないとはどういうことだ」と。
ああ、恥ずかしい。自分の迂闊さを呪いたい。だが、似たようなことを考える人もいると思うので、今回はあえて恥を晒け出そう。「カツちゃうやんけ」などと馬鹿げたことを考えた人間が、ひと口でポークチョップの虜となるまでの顛末をどうぞ。
期間限定の「ポークチョップフェア」
入店し、「ポークチョップフェア」の大きなポスターを発見したときは「めちゃくちゃ美味しそうだな」と思ったと同時に、上述のとおり「でもフライじゃないんだな」と思った。素揚げはされているようだが、カリッとしたパン粉はまとっていない。しかし、そんなことどうでもいいと思えるくらい、このビジュアル的な魅力はヤバい。まるで目を貫通して、胃袋を鷲掴みにされた感覚である。
で、タッチパネルからさっそく注文。ほうほう、いくつか種類があるようだ。
ベーシックな「ポークチョップ定食」(979円)に、ニンニクをまるまるトッピングした「ごろごろガーリックのポークチョップ定食」(1,045円)、これにメンチカツをプラスした「ポークチョップとメンチかつ定食」(1,133円)と「ごろごろガーリックのポークチョップとメンチかつ定食」(1,199円)。さらには「ポークチョップ単品」(649円)や「ごろごろガーリック単品」(66円)というのも用意されているようだ。
ここはまずベーシックの……とも思ったが、このごろごろガーリックは無視できない。普通に、絶対に味わいたい。ということで、今回は「ごろごろガーリックのポークチョップ定食」をオーダー。ポチッと。
いざ実食!「ごろごろガーリックのポークチョップ定食」そのお味は?
それからまもなくして運ばれてきたのがこちら。
うわっ、肉デカーーーーーーーッッッ!!
実物もめっっっちゃくちゃ美味そうーーー!!
そして肉の断面もめっちゃ分厚ーーーい!!
いきなりテンションが爆上がりしてしまったが、そろそろ実際に食べてみよう。いただきます。
やっぱり美味い!! めちゃ美味い!! 甘じょっぱい照り焼きガーリックソースが肉に絡みつき、これが肉汁と口の中で合わさって旨みのビッグバンが起きている。肉自体にも下味がついているようだ。噛むたびに味わい深さが増すかのようである。
こんなに分厚いのに、肉の柔らかさもスゴい。素揚げにしているからこんなに柔らかいのだろうか?噛みごたえもたっぷりなのだが、同時にみずみずしさや肉のほどよい弾力も感じられ、表面はサクッとしたクリスピー感も楽しめる。
む〜ん、このごろごろガーリックもたまらん。ニンニクも素揚げされているようで、その食感はホクホク。パンチ力高めの香ばしさが肉にもソースにもさらなるインパクトを与えてくれる。これは本当にトッピングしてよかった……!!
実は今回、肉をひと切れ食べたときに、ハッキリとわかったこと……いや、反省したことがある。
昔から「餅は餅屋」というように、ポスターを見た段階では、「かつ庵にはパン粉の衣をまとったフライで勝負してほしかったなぁ。だって、とんかつ専門店のかつ庵なんだから」的な考えが頭をよぎったのだが、これはなんとも思慮の浅い愚か者の発想であった。
つまり、かつ庵はフライ料理(かつ)のスペシャリストであると同時に、品質と鮮度に優れた、美味しい豚(とん)を扱うスペシャリストでもあったのだ。始めからこの当たり前の事実に気付いていれば、このポークチョップが100%美味いであろうことなど一目で見抜けたはずだし、かつ庵さんを疑うこともなかったはずだ。
まぁ結局、そのヴィジュアルに一目惚れして躊躇なく注文していたから結末は一緒なのだが、ここまで自分の浅はかさに苦悶することもなかったに違いない。くぅ、俺のバカ、バカ!
さて、そんなことはどうでもいいとして、このポークチョップは本当に美味しい。マヨネーズも添えられていたので、ちょっとつけて食べてみると、味変になってまた別の美味しさを発見できる。そういえば照り焼きバーガーなんかでも証明されているように、照り焼きソース×マヨネーズは鉄板の組み合わせなのだろう。まろやかさとコク、そして若干の酸味が加わってめちゃくちゃ美味しい。
そしてポーク「チョップ」ということで、大きな骨付き肉もどーん!と乗せられていた。骨になるべく肉を残さないよう、丁寧にかじりつく。あー、うまうま。最後は照り焼きガーリックソースを千切りキャベツですくいとるようにしてフィニッシュ!ごちそうさまでした。
入店前は、かつ庵でフライ以外の料理を食べることになるとは思っていなかったが、これは大いにアリ。というより、むしろフライのみに縛られない柔軟な発想力には、新たな可能性を感じた次第だ。今後も、かつに限らず、美味しい豚肉料理を提供してくれるとうれしいなぁ。
ということで、餅は餅屋へ、美味しい豚料理が食べたければとんかつ専門店のかつ庵へ。まずはこの春、皆さんにもジューシーでボリューム満点なポークチョップを味わってみてほしい。