“オドぜひ”の愛称で親しまれる中京テレビのバラエティ番組『オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。』(中京テレビ:毎週月曜24:59~、日本テレビ:毎週木曜25:29~)が、この4月で放送開始10周年を迎えた。オードリーに会いたい人・会わせたい人がクチコミを番組に送り、実際に会ってトークを繰り広げるもので、オードリーと素人さん(ぜひらー)の予測不能な化学反応が人気を集め、今や日テレ系列で全国放送されている。

そこで、番組を立ち上げたプロデューサー・演出の富田恭彦氏(CTV MID ENJIN)にインタビュー。企画の経緯やオードリーの魅力を含め、番組の舞台裏を聞いた――。

  • (左から)3代目アシスタントの阿部芳美アナ、オードリーの若林正恭・春日俊彰 (C)CTV

    (左から)3代目アシスタントの阿部芳美アナ、オードリーの若林正恭・春日俊彰 (C)CTV

■オードリーが困ってる姿を見たかった

――番組が始まったのが2012年。その頃のオードリーさんを起用しようと思ったのはなぜですか?

その1年前からオードリーさんと中京テレビで番組(『サタメン!!!』)を作ってて、やっぱり若林(正恭)さんだけじゃなく、春日(俊彰)さんも非常にお話が上手な方だってことが1年で分かったので、オードリーさんでトークの番組をやりたいと思ったんです。だから、企画ありきではなく、オードリーさんありきで始まった番組ですね。

――なぜオードリーさんと素人さんを絡ませるという企画にしたのですか?

普通に芸を持った芸人さんとお話ししてるよりも、どうなるか分からないような人と合わせた方が、うまい具合に化学反応するんじゃないか?と思ったんです。あとは中京テレビの伝統的に、わりと素人の皆さんにテレビに出ていただく番組が多かったんです。それもあって、素人さんの面白がりをオードリーさんができるんじゃないかっていうのと、2人が困ってる姿も見てみたいなと思ってたんです。

なので、本当にネタにできないような人たちをあえて呼んで、「でもオードリーさん、ちゃんとテレビなんで尺を作ってくださいよ」みたいなことを言ってやってもらったんです。

――当時はおふたりともご自身を人見知りのように言われていましたが、その部分に不安はありませんでしたか?

2人は人見知りだけど話下手ではなかったんです。それこそ男子校の部室の中では、たぶんリーダー的な感じになって話をするようなタイプだったんだろうなと思ってたんで、今はごちゃごちゃしたセットなんですけども、始まったときのセットのコンセプトも「男子校の部室」でした。だから不安はなかったですね。

――企画を聞いたオードリーさんの反応はいかがでしたか?

これはもう「あ、はい…」って感じですね。「いいすね!」とは言わないですよ(笑)。まあ、本人たちは不安なところもあったかもしれないですね。

  • (C)CTV

■陽の当たらなかった子たちを光らせる番組

――最初に番組として手応えを感じたのはいつ頃ですか?

実は、これはもう明確にあるんです。初期の頃なんですけど、ぬいぐるみで自分の動物園を作っているという中学生の男の子が来まして。事前にスタッフで面談をするんですけど、明らかにクラスの中で中心になって「イエーイ!」とやっているようなタイプの子じゃない。たぶん、クラスの中では面白くねえなと思われているような人だと思うんですけど、非常に面白かったんですよね。

その子は、自分が面白いとは気づいていないんですけど、オードリーと会わせたときに案の定ハネたんです。その時に、「この番組は面白い素人を出す番組ではない、クラスの端っこにいるような、今まで陽の当たらなかった子たちを光らせる番組なんだ」っていうのが明確になりました。

――素人さんとの面接では、どのようなところを見ますか?

面接は採用と同じくらい大切ですね。クチコミでもらったネタももちろんですけども、あまり事前に用意してきてないことをしゃべれる人がいいかなと思います。ちょっと偉そうな言い方になっちゃいますけど、やっぱり受け身が取れる人がいいですよね。

――オードリーさんとは、打ち合わせのようなものをするのですか?

もちろんします。だけど、うちの台本は箇条書きになっているんですよ。それを見せながら、「この子はこういうキャラクターです」って伝えるのが打ち合わせ。僕たちの中では起承転結まで想定しているんですけど、それは台本には書かない。起承転、で止めてる。だからオードリーさんに「ここをこうしてこうオトしてください」みたいな打ち合わせしてないですね。あとはこちらのほうで色々材料持ってたり、どっちに転んだりしてもいいように頭の中で台本を作って。何だったら構成会議をやっていくうちに台本は少なくなった感じですね。

――やっぱり想定を大きく外れることもあるんですか?

もちろん。というか、そこを狙いたいですよね。なるべく外れてほしい。まあ、僕らの手の負えないところに外れてしまうこともありますけど(笑)。そこはオードリーさんとスタッフとの勝負かな。それが楽しいですよね。