日本テレビ系『悪女(わる) ~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~』と、フジテレビ系『ナンバMG5』という水曜22時ドラマ対決の火蓋が、きょう13日に切られる。フジがバラエティからドラマ枠に転換したことで、同枠で6年ぶりの連ドラ直接対決となり、注目を集めることになった。

これまでの関係者の発言や、PR施策などから浮かび上がる、今夜のスタートに懸ける両者の意気込みをまとめた。

  • 『悪女(わる) ~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~』今田美桜 (C)NTV

  • 『ナンバMG5』間宮祥太朗 (C)フジテレビ

■「出世エンタテイメント」と「コメディ&ヒューマン」

日テレの『悪女(わる) ~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~』は、深見じゅん氏原作のコミック『悪女(わる)』が原作。窓際部署に配属された田中麻理鈴(今田美桜)が、正体不明でクールな峰岸雪(江口のりこ)にかけられた言葉をきっかけに、会社の最下層からステップアップを目指していく姿を描く。92年に石田ひかり主演でドラマ化されたが、ちょうど30年ぶりに令和版が制作されることになる。

「働く女性を主人公にしたドラマをずっと作りたいと思っておりました」と話すのは、今作で初めて自分の企画を通したという日テレ入社10年目の諸田景子プロデューサー。「女性が総合職で働き始めた30年前と現代とは全く背景が異なりますが、まっすぐに明るい主人公が楽しそうに働き、誰かを否定せず、傷つけないで会社に仲間を作っていき、うっかり出世していく様子がスカッとするというところがとても気持ちよく、私も主人公がうらやましくて仕方ありませんでした。私がこの作品から元気をもらったように、仕事を頑張るって楽しいことなんだと見ている方に感じてもらいたい。一方で連載から30年経ち、本当に女性は働きやすくなったのかを問いかける作品なので、女性の社会進出が進んだ今だからこそ届けたいと思い、原作の精神を引き継ぎ、舞台や扱うテーマを現代に置き換えて、共感と夢中を集める出世エンタテインメントをお届けします」と力説する。

一方、フジの『ナンバMG5』は、筋金入りのヤンキー一家・難破家の次男・剛(間宮祥太朗)が、実は「ヤンキーをやめたい」「普通の高校生になりたい」と、家族に内緒で健全な高校に入学するという高校“逆”デビュー物語。

今作がチーフデビューとなる栗原彩乃プロデューサーは「私が中高生時代は学園ドラマがまだたくさん放送されていて、私も『ウォーターボーイズ』などを見てこの業界を志したので、今回久々にフジテレビで学園ドラマが作れるということにすごくうれしく思います」と喜びを語りつつ、「“お仕事モノ”とは違った新しいジャンルを開拓できればと思います」と意識。「コメディでもあり、ヒューマンでもあるので、笑って泣けるというものの代名詞になるような作品になればと思っております」と意気込みを語った。

両作がいずれも、フレッシュな女性プロデューサーによって制作される点も興味深い。

  • (C)NTV

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■編成部長「熟考重ね」「裏環境にかかわらず」

連ドラ増枠という判断をしたフジの中村百合子編成部長は「若年視聴者層を意識していきますので、配信戦略にもかなう枠になっていけると考えております。さらに、外部プラットフォームとの連携や、映画化連動など様々な協業や仕掛けにもトライし、期待感を生み出せる枠を目指しております」と背景を説明。

日テレとの競合については、「編成戦略的にいろいろ熟考を重ねて、結果この枠でドラマをやることに決めました。テーマのジャンルで差別化を図るということではなく、我々が描きたいニューヒーロー像を疾走感あふれる作風で次々と打ち出していくことを考えております」とした。

受けて立つ形となる日テレの木戸弘士編成部長は「裏環境の如何にかかわらず、より生活者に選ばれるものを作っていきたいというのは変わらず、ブレずにやっていきたいと思っていますし、我々の水曜ドラマのストロングポイントを再確認して発揮していきたい」と強調。

諸田Pも「水曜ドラマは働く女性に届ける作品が続いていますので、他局さんのことでブレることなく、我々は女性に響くような楽しいお仕事ドラマを届けられたらと思います」と話しており、両局とも自らの特性を追求していく姿勢を示した。

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  • (C)フジテレビ

■渋谷で異色広告展開、怒涛のプレスリリース

同じ時間帯で同日スタートとなるだけに、両局とも積極的なPR施策を展開している。

『悪女(わる)』は2月、ドラマ発表に先駆け「田中麻理鈴って誰?」と検索を促す広告を、東京・JR渋谷駅に掲出。特設サイトで出題される謎解き問題を解明するとドラマの企画書が見られるという仕掛けで、SNS上をザワつかせた後、満を持して今田美桜主演の第1報をリリースした。

その後も、共演者・ゲスト・場面写真など、きょう13日に至るまで、実に20報ものプレスリリースを配信。近年、ドラマ初回の放送枠を拡大しない方針を採っている日テレだが、『悪女(わる)』は初回放送に限り6分早い21時54分開始という異例のフライングスタートとなる。

  • JR渋谷駅の「田中麻理鈴って誰?」広告 ※2月13日で掲出終了 (C)NTV

『ナンバMG5』も、渋谷駅(地下コンコース)に広告を掲出(4月11~17日)。間宮らメインキャスト9人の全身カットと原作キャラクターが、1つの柱巻き広告ごとに全く同じポーズで登場しているが、このキャラクターは原作の小沢としお氏が今作のために特別に描き下ろしたものとなっている。

新たなドラマ枠ということで、第1報は1月にリリース。以降、10報を超えるプレスリリースに加え、撮影現場からの生配信イベント、さらには間宮祥太朗、森川葵らメインキャストの取材会を次々に設ける力の入れようだ。

  • 渋谷駅地下コンコースの『ナンバMG5』広告 ※4月17日まで掲出中 (C)フジテレビ

『星の金貨』『ごくせん』『家政婦のミタ』(日テレ)、『ショムニ』『お水の花道』『リーガルハイ』(フジ)など、いずれも数々のヒット作を飛ばしてきた枠だけに、両者が切磋琢磨することでまた名作が生まれることを期待したい。