パリッとした歯ごたえが魅力のきゅうり。店頭には年間を通して並べられており、サラダや漬物で食卓にのぼる回数も多いですよね。ところできゅうりの「水分ばかりで栄養はほとんどない」というイメージは本当なのでしょうか。

実はきゅうりは約95%を水分が占める野菜ですが、栄養素もちゃんと含んでいます。また、「摂取したビタミンCをきゅうりが壊してしまう」という情報は大きな誤解であることがわかりました。

今回はこうしたきゅうりについての栄養情報をたっぷりとご紹介。栄養素を効果的にとるための食べ方や、おいしいきゅうりの選び方、保存方法などについても紹介します。

  • きゅうりの栄養素やおすすめの食べ方などを紹介します

「きゅうりに栄養がない」とギネスが認定?

「きゅうりは世界で最も栄養がない野菜として、ギネスブックに掲載されている」という話を聞いたことはありませんか?

きゅうりの栄養についてギネスブックに掲載されているのは事実ですが、それは「最も栄養がない」ではなく、「Lowest calorie fruit(最もカロリーが低い果実)」の間違いです。情報が拡散するにつれ、「カロリーが低い」が「栄養が低い」に置き換えられてしまったと考えられます。

以下に、きゅうりの栄養素をご紹介します。

きゅうりの栄養素

きゅうりにはどのような栄養が含まれているのでしょうか。ここでは国内で90%流通している白イボ系きゅうり100gあたり(生)の栄養について解説します(日本食品標準成分表2020年版より)。

エネルギー: 13kcal
・たんぱく質: 1.0g
・炭水化物: 3.0g
・カリウム:200mg
・βカロテン:330μg
・ビタミンK:34μg
・ビタミンC:14mg
・葉酸:25μg
・食物繊維総量: 1.1g

きゅうりのカロリーは100gあたり13kcalととても低め。低カロリー食材ですが、βカロテンの含有量が高めで、キャベツのおよそ6倍です。カリウムの含有量はなすやトマトに匹敵し、ビタミンCの含有量もトマトとほぼ同量です。

  • きゅうりは低カロリーで水分たっぷりですが、栄養も含まれます

きゅうりの栄養成分の効果・効能

きゅうりに含まれる栄養素の効果や効能は下記の通りです。

【カリウム】
身体に欠かせないミネラルのひとつ。体内の不要な水分やナトリウムを体の外に排出させる働きがあるため、血圧を一定に保ち、高血圧などを防ぎます。筋肉の正常な動きにも関わっているとされています。

【ビタミンK】
出血したときに血液を固めて止血する「凝固因子」を活性化する働きがあるビタミン。骨粗しょうや動脈硬化に関連していると考えられており、骨粗しょう症の治療薬としても利用されています。

【ビタミンC】
体内で合成できず、食事から摂取する必要のあるビタミン。コラーゲンの生成にも大きく関わり、皮膚や粘膜、関節などの健康を保ちます。抗酸化作用があることからストレスへの抵抗を高めるほか、免疫力アップ、また鉄の吸収を促進させる働きもあります。

【β-カロテン】
抗酸化作用のあるβカロテンは、体内で必要量に応じてビタミンAに変換されます。ビタミンAは視力の維持、粘膜や皮膚の保護、のどや肺といった呼吸器系統などの働きをサポートするとされています。

【食物繊維】
食物繊維は腸の中で水分を吸収し、ふくらむなどして蠕動運動を促します。そのため便秘の予防や改善に役立ちます。脂質や糖、ナトリウムなどの吸収も抑える働きがあることから、肥満や糖尿病、高血圧といった生活習慣病の予防や改善にもつながります。

【葉酸】
ビタミンB群の仲間で、胎児の成長に大きく関連するとされることから、特に妊娠中に推奨される栄養素です。また、ビタミンB12とともに造血に関与。体内では、細胞の生産や再生・分裂にも大きな役割を果たします。

水分たっぷりで、夏バテ防止にも

薬膳の考え方では、きゅうりは「体を冷やす」「利尿作用がある」「渇きを止める」などの働きがあるとされています。夏場にきゅうりをポリポリ食べることは夏バテ防止にも役立ちます。

きゅうりに含まれるホスホリパーゼとは

きゅうりの栄養成分で近年、注目されているのが「ホスホリパーゼ」という酵素です。これには脂肪の分解をサポートする働きがあるとされていますが、このホスホリパーゼを活性化させるにはきゅうりをすりおろすひと手間が必要です。

また、酵素は一般的に熱に弱く、空気に長時間さらされると効果が弱まっていきます。きゅうりは生のまますりおろし、できるだけ時間を置かずに食べることがおすすめです。

  • きゅうりは夏バテ防止にぴったりの野菜です

きゅうりとは

きゅうりはウリ科キュウリ属のつる性一年草。一般的には濃緑ですが、中には淡い緑や白いものも存在します。現在、私たちが食べているきゅうりは未熟な状態で、完熟すると黄色になることから「黄瓜(きうり)」と呼ばれ、それが「きゅうり」という呼称に発展したという説もあります。

旬は夏。気温が高い時期は露地栽培ですが、秋から初春にかけては、ハウスでの栽培が主流となります。

きゅうりの種類

ここでは、きゅうりの主な品種について解説します。

白イボきゅうり系
流通の90%を占めるなど、一般的に多く販売されているのが白イボきゅうり系。表面に小さな白い突起(イボ)があり、あっさりした味わいと歯切れのよさが特徴です。旬は夏ですが、年間を通して栽培・流通されています。

黒イボきゅうり系
果実の表面に黒っぽいイボがあり、果皮が厚めのきゅうりです。旬は白イボ系よりも早い春。実の上部が緑色で、下に向かってグラデーションのように白く色が変わっているのが特徴です。

四葉(すうよう)きゅうり
白イボ系きゅうりよりも約1.5倍の大きさまで成長するきゅうり。25~30㎝程度で収穫されますが、皮は通常のきゅうりよりも薄めで歯切れがよいため、漬物に重宝されます。表面のしわやイボも多め。旬は6月~9月です。

四川きゅうり
四葉きゅうりの改良品種。特徴は四葉きゅうりと同様で、表面のしわやイボは多めです。大きさは普通のきゅうりと同じくらいです。

海外のきゅうりの品種
ヨーロッパで多く栽培されている「ロシアキュウリ」、アメリカやカナダではポピュラーな品種「マーケット・モア」など、海外のきゅうりも量は多くありませんが流通しています。

きゅうりに付いた白い粉は「ブルーム」

もともときゅうりは水分蒸発を防ぐため、自ら表面に白い粉をふきます。この白い粉はブルームと呼ばれ、ブルーベリーなどの表面がうっすらと白いのもこのブルームです。しかし、この白い粉が農薬のように見えることから品種改良がおこなわれ、現在はブルームなしのきゅうりが一般的となりました。

  • きゅうりはウリ科キュウリ属のつる性一年草です

きゅうりの選び方のコツ

きゅうりは果皮が濃い緑色で、張りのあるものを選びましょう。イボがピンと尖っており、触るとチクチクするものが新鮮な証しです。端から端までの太さが均一なものが良質とされていますが、多少曲がっていても味には問題ありません。 

先に紹介しましたが、表面に白い粉が付いているのは「ブルームきゅうり」です。水分蒸発を防ぐ天然物質をきゅうり自らが出したもので、このブルームが付いたきゅうりも新鮮である証拠です。

きゅうりの栄養素を逃さない食べ方

きゅうりは生で食べる方が多いでしょう。きゅうりの栄養素ビタミンCや酵素「ホスホリパーゼ」は加熱に弱いため、栄養効果を期待するなら生食がおすすめです。ただし、水にさらすとビタミンCは流出していまいますので、サッと水洗いする程度にとどめましょう。

また、きゅうりの栄養素βカロテンは、油と合わせることで吸収されやすくなります。ドレッシングにはオイル添加タイプを選ぶ、油と炒め物にする、などがおすすめです。

昔ながらの「ぬか漬け」は、ぬかに含まれるビタミンB1の働きで栄養価が高まります。ぬか床の乳酸菌ときゅうりの食物繊維の相乗効果で、腸内環境の改善に役立つという側面もあります。

きゅうりを保存するときのコツ

きゅうりのみずみずしさと食感を保つために、ラップや袋に入れ、冷蔵室または野菜室で保存します。冷やしすぎると傷みやすくなるため、低すぎる温度設定にしないようにしましょう。また、育った環境と同じように立てて保存すると、きゅうりにストレスがかからないため、おいしさが長持ちするとされています。

まとめ買いしてしまったきゅうりを長期間保存したい場合は、冷凍するという方法もあります。生のパリッとした食感は失われてしまいますが、味しみがよくなるのでナムルなどに便利です。

  • きゅうりの表面のとげも鮮度の証し

きゅうりはビタミンCを破壊する?

「きゅうりがビタミンCを破壊する」と聞いたことがある人もいるかもしれません。これも「きゅうりは世界一栄養がない」と同様に、間違った情報です。

ビタミンCには、還元型と酸化型があります。きゅうりに含まれる「アスコルビナーゼ」という酵素は、還元型ビタミンCを酸化型に変える働きがありますが、ビタミンCの型が変わっても、その栄養効果は変わりません。きゅうり自体にもビタミンCは含まれているので、積極的に摂取したいものです。

みずみずしいきゅうりで水分補給&夏バテ予防

そのほとんどが水分という特徴が影響しているのか、「世界一栄養がない野菜」「ビタミンCを壊す」などの誤った情報が流れてしまうきゅうり。実際にはβカロテンやビタミンC、カリウムなどの栄養素が含まれる野菜です。年間を通して手に入りやすいため、サラダや漬物、時には加熱するなどして、レシピのバリエーションを広げてみてくださいね。