鉄道・運輸機構とJR九州は19日、大村車両基地完成記念式典を実施。同基地に留置されている西九州新幹線車両N700S「かもめ」の車内も一部公開された。3月20日に開催される一般公開でも、N700S「かもめ」の車両見学が予定されている。

  • 大村車両基地にて公開された西九州新幹線N700S「かもめ」

西九州新幹線は2022年9月23日、武雄温泉~長崎間(約66km)で開業予定。在来線の博多~武雄温泉間で特急「リレーかもめ」を運転し、武雄温泉駅にて西九州新幹線「かもめ」へ同一ホームで乗り換える対面乗換方式により開業する。新幹線開業後、博多~長崎間の所要時間は現在より約30分短縮され、最速約1時間20分となる。

列車名の「かもめ」は、国鉄時代の1961(昭和36)年から長崎行の特急列車として運行開始し、現在まで約60年にわたり親しまれてきた。西九州新幹線の車両N700S(JR東海が営業投入しているN700Sを6両編成に短編成化して導入)では、毛筆の「かもめ」の書体をエクステリアデザインとして配置したほか、「かもめ」のシンボルマークやロゴも車体の各所に配置している。外観は白を基調に、JR九州のコーポレートカラーである赤を配色した。

3月19日の大村車両基地完成記念式典では、式典終了後に「かもめ」の3・4号車を公開。インテリアデザインは「優しい、明るい、楽しい、心地良い、美しい」をテーマに色・形・素材をセレクトし、和洋折衷、クラシックとモダンを組み合わせた懐かしく新しい空間を表現している。1~3号車は普通車指定席、4~6号車は普通車自由席で、指定席は横4列(2列+2列)の配置に。指定席のシートは号車ごとにデザインが異なり、今回公開された3号車(定員47名)は「唐草」をイメージ。1号車(定員40名)は「菊大柄」、2号車(定員76名)は「獅子柄」のデザインだという。

  • 3号車は普通車指定席。座席は2列+2列

  • 3号車の客室内に車いすスペースを設置

  • デッキに多目的室や多機能トイレも

  • 4号車は普通車自由席。座席は2列+3列

  • コンセントは全座席に設置されている

  • 3・4号車とも客室内に荷物置場を設置

自由席は横5列(2列+3列)の配置で、シートは黄色を基調としたデザイン。定員は4・5号車が各86名、6号車が61名となっている。その他、モバイル用コンセントを全座席に設置して利便性の向上を図り、客室内の車いすスペースや多目的室・多機能トイレなどのバリアフリー対応設備を設置。車内セキュリティ強化のため、客室入口と客室の天井、デッキ部に防犯カメラを設け、緊急時に乗客と乗務員が通話できる装置を客室内に取り付けることで、異常時の即応体制を強化する。

N700Sでは安全性・安定性向上を目的にATCとブレーキシステムを改良し、地震発生時のブレーキ距離を短縮。バッテリ自走システムを搭載し、自然災害等による長時間停電時でも自力走行可能としたほか、長時間停電した場合も一部トイレの使用を可能とした。走行抵抗を低減した先頭形状(デュアル スプリーム ウィング形)と、次世代半導体素子であるSiC素子の駆動システムを採用し、消費電力を低減。パンタグラフやブレーキ装置といった摩耗部品を長寿命化し、交換周期を延伸することにより、検修作業の省力化も実現している。

大村車両基地では、3月19日の完成記念式典に続き、3月20日に一般公開が開催される予定。開業準備の進む基地と、基地内に留置しているN700S「かもめ」の車両を見学できる。

  • 大村車両基地で公開された西九州新幹線N700S「かもめ」の車内・外観