インバウンド需要とコロナ禍のリモートワークを受け、Wi-Fiはいまや宿泊施設の必須設備となった。しかし、通信速度が十分でなければ利用者からは不満の声が上がる。そんなWi-Fi環境を改善してくれるのが、NTTBPの「Wi-Fiドック」だ。ホテルベルクラシック東京の事例から、その効果を確認してみよう。

  • ホテルベルクラシック東京の二宮氏(左)、NTTBPの梶浦氏(右)

新たな人生を歩む2人に寄り添うウェディングスホテル

JR山手線・大塚駅から徒歩1分に位置するホテルベルクラシック東京。大型ターミナルである池袋駅からのアクセスもよく、電車内からその外観を目にしたことがある人も多いだろう。その好立地からイベントや宴会・会議、観光・ビジネス向けの宿泊などでも利用されるが、代表的な事業はやはり結婚式だ。

  • JR山手線の線路沿いからも見える、ホテルベルクラシック東京

屋上には都会の真ん中とは思えないほど豊かな日の光が差し込むガーデンを用意。天空のガーデンチャペル「カナ・ゴスペルチャーチ」があり、空まで続くような純白のバージンロードや、パイプオルガンの演奏が結婚式を彩る。

階下には人数に応じて利用できる披露宴会場が5室。ヘアメイクはもちろん、ドレスサロンや写真スタジオ、古式ゆかしい神前式のための「儀式殿」など、結婚式のための施設を完備している。

  • 最大120名を収容できる披露宴会場を備える

ホテルベルクラシック東京は、家族として新たな人生を歩もうとしている2人に寄り添う場所として、数多くのパートナーに特別な時間を提供している。

同ホテルは2018年、エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム(以下、NTTBP)に無線設備診断・コンサルティングを依頼し、Wi-Fi環境の改善に取り組んだという。その経緯と取り組み、そして現在では「Wi-Fiドック」と名付けられたこの無線設備診断・コンサルティングサービスの導入効果について、ホテルベルクラシック東京のエンジニアである二宮友和氏、NTTBP パートナー営業推進室の梶浦光太郎氏に伺ってみたい。

口コミで指摘される老朽化したWi-Fi環境と通信速度

ホテルベルクラシック東京の設立は1997年12月。施設は定期的にメンテナンスやリニューアルが行われ、いまも多くの利用者を満足させているが、一方で細かな設備面を見ると徐々に老朽化が進んでいた。とくに宿泊客から指摘されていたのが、インターネット回線の遅さだ。

「要因としては無線LANアクセスポイントの老朽化、契約回線などが考えられましたが、その特定まで行えるかというと、我々が自前でやるには限界でした。そこでいろいろなベンダーさんに相談し、最終的にNTTBPさんに無線設備の診断とコンサルティングをお願いすることになったのです」(ホテルベルクラシック東京 二宮氏)。

  • ホテルベルクラシック東京 マーケティングソリューション部 エンジニア 二宮友和 氏

「ホテルベルクラシック東京さまから最初にお話をいただいたのは2018年12月です。当時はコロナ禍の影響もなく、東京2020オリンピックを目前に盛り上がっていた時期ですね。海外からの宿泊者もどんどん増えており、大塚駅前と言うことでさらなる増加が見込まれる中で、Wi-Fi環境に関するご相談をいただきました」(NTTBP 梶浦氏)。

  • エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム アライアンス営業部 パートナー営業推進室 主査 梶浦光太郎 氏

ホテルベルクラシック東京とNTTBPは打ち合わせを重ね、2019年2月より実際に、契約回線やネットワークなどを含めた無線設備診断がスタートする。とはいっても、ホテルという施設は基本的に24時間顧客が滞在しており、タイミングや静粛性が求められる。当然、夜間は避けなくてはいけない。調査担当者は日中の滞在者がいない時間を狙い、客室のドアを閉め、宿泊者が主に利用するであろうベッドの上で、静かに電波強度やトラフィックの診断を進めていったそうだ。

  • 宿泊客が実際に利用するルーム内の入り口とベッド付近で測定

約半年にわたって行われたNTTBPの診断から、アクセスポイントは2019年からおよそ5年ほど前のスペックで、Wi-Fi 4(IEEE 802.11n)世代と判明。また設置した当時は、恐らくWi-Fiがこれほど利用されると思われていなかった時代。回線も本数が非常に少ない契約で、ホテルベルクラシック東京ほどの規模の宿泊施設の負荷に耐えられる環境ではなかった。

  • NTTBPからホテルベルクラシック東京への改善提案

この診断結果を踏まえ、2020年初頭から具体的な工事日を検討し、GWから無線LANアクセスポイントの導入が開始された。だが、ここで思わぬトラブルが舞い込む。そう、新型コロナウイルス感染症の流行だ。

「いざ導入を進めようというタイミングで、ちょうどコロナ禍に直面してしまいました。社会的に混乱している中で『ではいつ工事しましょうか』という話になり、5月のゴールデンウィークに工事を行うことが決まりました。とはいえ、コロナ禍でリモートワーク環境が社会的に求められるようになりましたから、いま考えると、直前にWi-FI環境を整備できたことは不幸中の幸いだったのかもしれません」(ホテルベルクラシック東京 二宮氏)。

「コロナ禍の中とはいえ、ホテルを利用される方はいらっしゃいます。調査時も同じですが、ご滞在中のお客さまのご迷惑にならないよう、ホテルベルクラシック東京さまにはいろいろご調整いただきました。打ち合わせもさまざまな場所で行いましたね」(NTTBP 梶浦氏)。

顧客の声こそが一番の評価であり導入効果

こうして2020年のコロナ禍まっただ中に、「Wi-Fiドック」によってホテル内のWi-Fi環境を改善したホテルベルクラシック東京。大きく変更された点は、インターネット回線とホテル内設備だ。

無線LANアクセスポイントはWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)世代に更新された。台数はほぼ変わらず、数台増えたのみ。また、ISPを変更するとともに、従来の1回線を4回線に増強。無線LANアクセスポイントと回線の速度を活かすべく、ルーターやスイッチングハブも同時に更新した。後日、スループットを安定させるため、さらにPPPoE接続からIPoE接続への変更も行われた。

「以前のISPでは特に夕方に通信が詰まりやすかったようで、この時間帯になると速度低下が起こったり、繋がらなかったりといった問題が頻発していました。これを解決するためにISPの変更と回線増強を行い、さらにPPPoE接続からIPoE接続に変更したところ、通信速度と通信の安定度が増しました」(NTTBP 梶浦氏)。

「NTTBPさんに環境を整備してもらってから、何日もかけて計測しましたが、数字で見てもはっきりとスループットが向上しました。以前は下りが10Mbpsに届かないこともよくあり、100Mbpsなど見たこともなかったのですが、入れ替えた段階では200Mbpsが出ましたし、現在も概ね200Mbpsで安定しています。なによりも、口コミのWi-Fiに関する内容が軒並み『速い』に変わりました。この声こそ、一番の評価だと思っています」(ホテルベルクラシック東京 二宮氏)。

  • Wi-Fi 5世代になった無線LANアクセスポイント

  • ホテル内での設置の様子。目立たない位置に取り付けられている

ホテルでのリモートワークもより快適に

なお、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、ホテルベルクラシック東京では在宅勤務を応援するためにリモートワークのプランを展開しているという。集中できる環境で、快適なインターネット回線を使って仕事をしたい人は、一見の価値ありだろう。

ホテルベルクラシック東京の二宮氏は、今後の展望とNTTBPの対応についてまとめるとともに、利用者に向けて次のようにメッセージを送る。

「NTTBPさんはコロナ禍であっても必要に応じて現地に直接来てくださいましたし、仕様検討やアドバイスも非常に丁寧にしていただきました。通信速度が向上し、サテライトオフィスやセミナーのネット配信、テレワーク用途としても使いやすくなりました。エンジニアの立場としては、このWi-Fi環境の安定稼働が今後の課題です。できるだけ回線を止めずに、お客様に快適にご利用いただけるようにしたいと思います。ホテルベルクラシック東京では、万全の感染症対策を行ったうえでみなさまをお待ちしています。結婚式を予定されている方はもちろん、お仕事をされる人もぜひご利用いただきたいと思います」(ホテルベルクラシック東京 二宮氏)。