女優の富田望生が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、あす13日に放送される『生きることって… ~山とマタギと私たち~』。マタギの第一人者のもとで修業を続ける27歳の若者たちを追った作品だ。

  • 富田望生

■ナレーションは「手に汗を握りながら」

秋田県の山村。マタギの頭領である鈴木英雄さんのもとで、狩猟の修業を続ける女性がいる。

永沢碧衣さん、27歳。幼い頃から自然が好きだった彼女は美術大学卒業後、企業に就職し、東京でも働いたものの、自然と触れ合いながら大好きな絵を描くために故郷に戻った。

そこでマタギと出会い、猟をするようになる。「生き物を殺して食べる」ということがどういうことなのかを知りたかったのだ。

大阪大学で「脳細胞の研究」をしていた山田健太郎さんも、鈴木さんのもとに「マタギを教えてほしい」と集まってきた若者の一人。年齢は、永沢さんと同い年の27歳だ。周囲が当然のように就職していくなかで、「マタギになりたい」と単身移住した。

今回の物語にナレーションを付けた富田は「手に汗を握りながら読んでいた」と収録を回顧。過去にナレーションを担当してきたどのドキュメンタリーとも毛色が違ったと、率直な感想を打ち明ける。

「“命を頂く瞬間”はすごく衝撃的で、その映像を見るのが初めてだという人も多いと思います。私自身、すぐに理解できるような題材ではなかったので、マタギの世界を新たに学ぶ一人としてナレーションを読ませていただきました」

「分かりやすく伝えると同時に、自分自身が感じたちょっとした恐ろしさや、『マタギの方たちは、“命を頂く”ことに感謝や愛情を抱いているんだ』と気づいたこと、どちらかの感情に振れるのではなくて、色んな感情を持ち合わせながら読まないといけないなと。そこはすごくドキドキして、まさに手に汗を握りました」

■「生きることの意味」とは

縁遠く感じたマタギの世界だが、福島の田舎で生まれ育った富田には、すぐに共感した部分もあった。それは、鈴木さんが山の遊び方を若者たちに教えるシーン。彼女自身、小さい頃は自然の恵みを日々享受していたという。

そうした共感を抱く一方、自然とともに生きるマタギの里に「生きることの意味」を求めて集った若者たちと、現在東京で生活する自分の環境にギャップを感じるようで、「生きている実感というのは、今は自然から離れた場所で感じてるのかなって思います」と語る。そして、「行き詰まることもある」とこぼした。

「それは役者の仕事をするなかで?」と聞くと、彼女は「お芝居で行き詰まることはあんまりなくて」と前置きしながら、こう続ける。

「コロナ禍で、面と向かって何かを伝え合う機会が減っているなかで、自分の気持ちを相手にどう伝えて、どう関係を続けていくか……いくらお芝居がしたくても、相手の気持ちを考えられなければ、きっといい作品はできないんだろうなと、コロナ禍になって考えるようになりました。家族、友だち、お仕事でご一緒させていただく方々とお互いの気持ちを伝え合って、人と人が離れないといいなあと思います」

最後に、単刀直入に聞く。女優・富田望生にとっての「生きることの意味」とは。

「本当に大きく言うと、自分自身を、相手を、そして全世界を豊かにするため。たくさんの役者の先輩方がいるなかの一人に過ぎないですが、私は日本だけじゃなくて、世界に向けて発信しています」

「世の中の人全員は難しいかもしれないけど、世界中の誰か一人でもいいから豊かにできるものを作り続けていきたいなって。私はそのために生きてるんじゃないかなと思います」

(C)フジテレビ

■プロフィール
富田望生(とみた・みう)
2000年生まれ、福島県出身。15年、映画『ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判』のメインキャストをオーディションで射止めて女優デビュー。その後、『モヒカン故郷に帰る』(16)、『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(17)、 『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(18)などの映画、『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ系)、『なつぞら』(NHK)、『教場』(フジテレビ系)などのドラマに出演。