日本における最初の鉄道は1872(明治5)年10月14日に開業。今年(2022年)10月14日に150周年を迎える。これを記念し、2022年4月1日から2023年3月31日まで、「鉄道開業150年キャンペーン」を開催することがJRグループ各社から発表された。

  • 鉄道開業150周年記念「JR全駅入場券」セットを発売。記者発表会にて見本が展示された

「鉄道開業150年キャンペーン」が発表された3月2日、都内で記者発表会が行われた。JRグループ各社の代表者らによるプレゼンテーションをはじめ、キャンペーンを記念して発売される「JR全駅入場券」セットの見本も会場に展示された。

「JR全駅入場券」セットは、JRグループ6社全駅の入場券(硬券タイプ・4,368枚)を各社の専用バインダーに収めた商品となっている。発売数は限定250セット。価格は70万円(送料・消費税込)。入場券の有効期間は2022年10月14日から2023年3月31日まで。各駅1回のみ有効となる。なお、セットに含まれる入場券の枚数は2022年3月2日現在のものであり、変更となる可能性もある。

専用ウェブサイト(2022年4月1日オープン予定)にて5月中旬から申込み受付を開始し、発売数を超える応募があった場合は抽選販売となる。申込みは専用ウェブサイトからのみ受け付けるため、電話・郵送での申込みは不可。支払い方法などの詳細は専用ウェブサイトに掲載予定とされている。

記者発表会の会場に展示された「JR全駅入場券」セットの見本を見ると、バインダーの1ページごとに入場券が網羅され、入場券はすべて硬券で収められている。バインダーは黒色で、デザイン上のアクセントとして表紙・背表紙にJR各社のコーポレートカラーをあしらった。高級感がありながらも、どのバインダーがどの会社のものなのか、わかりやすいように工夫されている。

  • バインダーの表紙に引かれたコーポレートカラーがアクセントに

  • JR北海道、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州の背表紙

  • オレンジ色のラインはJR東海のバインダー

  • JR九州のバインダー

  • JR四国のバインダー

  • JR西日本のバインダー

展示された見本のうち、JR東日本のバインダーは見開きで展示されていた。片方のページは東海道本線、もう片方のページは山手線、赤羽線、南武線のページとなっている。その内容を見た限り、各駅の入場券は正式な所属路線ごとに収められているように見受けられた。

東海道本線を例に挙げると、JR東日本のバインダーには東京~熱海間の全駅の入場券が収められている。このうち東京~大船間については、京浜東北線や山手線、横須賀線が停車する一方、東海道線が停車しない駅も多数あるが、いずれも正式な所属路線は東海道本線のため、すべて東海道本線の駅として割り振られてあった。浜松町駅や鶴見駅、保土ケ谷駅などが該当するほか、2020年に開業した高輪ゲートウェイ駅も、東海道本線の駅として入場券が収められていた。

普段は横須賀線として案内される西大井駅と新川崎駅、相鉄・JR直通線として案内される羽沢横浜国大駅も、正式な所属路線は東海道本線となる。「JR全駅入場券」セットでは、これら3駅の硬券入場券を熱海駅の隣に配置していた。

板橋駅と十条駅の入場券が赤羽線の駅として収められている点も注目したい。1990年代生まれの筆者にとって聞き慣れない路線名だが、普段は埼京線として案内される大崎~大宮間のうち、池袋~赤羽間の正式な所属路線は赤羽線となっている。ちなみに、埼京線の大崎~池袋間は山手線、赤羽~大宮間は東北本線に属する。

山手線も正式には品川~田端間の路線であるため、「JR全駅入場券」セットでは大崎駅・駒込駅以西の駅(代々木駅を除く)の入場券が収められていた。南武線は川崎駅が東海道本線のほうに入っているため、尻手駅から先の駅の入場券が収められている。会場で見ることのできた入場券は見開き2ページ分のみで、南武線の入場券は途中の平間駅までしか確認できなかったが、実際に購入できたなら、他の駅の入場券がどのように収められているか、確かめてみてほしいと思う。

  • JR東日本のバインダーは開いた状態で展示された

  • 東海道本線の各駅の入場券。根府川~熱海間と西大井駅・新川崎駅・羽沢横浜国大駅は次ページに収められている

  • 山手線大崎~駒込間(代々木駅は除く)と赤羽線、南武線尻手~平間間のページ

このように、一部の駅は普段案内されている路線ではなく、正式な所属路線で割り振られているので、最初にバインダーを開くときは戸惑いがあるかもしれない。ただ、JRグループ6社合計で4,368枚もの硬券入場券を6冊のバインダーにすべて収めた特別感は、やはり筆舌に尽くしがたいものがある。硬券として残ることで、2022年時点でその駅が実際に営業していたことの証明にもなる。資料としても貴重なものになるだろう。

それにしても、送料・消費税込みで70万円という価格には驚かされる。参考までに、入場券をすべて150円と仮定し、枚数(4,368枚)で掛け算してみたところ、合計金額は65万5,200円となった。JR各社や東京・大阪の電車特定区間によって入場券の発売額が異なるため、実際の合計金額とは違っていると思うが、1枚130~200円の入場券を全駅分一度に購入した場合の金額が6桁に届くことに、正直なところ筆者自身も衝撃を覚えている。購入する前にいま一度、自分自身の預貯金とよく相談してみたほうが良い。

「鉄道開業150年キャンペーン」の開催にあたり、4月1日に特設ウェブサイトがオープンする。以降、150周年記念旅行商品、デジタル版スタンプ「STATION STAMP」、音声コンテンツ「駅で会えたら。」、そして「JR全駅入場券」セットと、さまざまな企画が順次始動する予定。150周年という大きな節目に立ち会えることは、事業者だけでなく、ファンとしても光栄な機会になるのではないかと思うが、あいにく新型コロナウイルス感染症の影響もいまだ続いている。引き続き、鉄道を利用する際は基本的な感染症対策を行いつつ、安全とマナーを守った上で楽しみたいところだ。