「白羽の矢が立つ」という言葉は、ビジネスシーンなどでよく使われる表現です。耳にしたり実際に使ったりしたことがある人も多いでしょう。しかし、白羽の矢が立つという言葉には、良い意味と悪い意味の両方があることを知っていますか?

本記事では、「白羽の矢が立つ」の持つ2つの意味や由来を紹介します。また、例文による正しい使い方や類語・言い換え表現、英語表現などもあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。

  • 白羽の矢が立つとは

    「白羽の矢が立つ」の意味や由来、例文や類語などを紹介していきます

「白羽の矢が立つ」の意味とは

「白羽の矢が立つ」は、「しらはのやがたつ」と読み、主に良い意味で使われる慣用句です。一方で白羽の矢が立つには悪い意味も存在し、そのことはあまり知られていません。

ここでは、それぞれの意味や由来・語源を紹介していきます。

良い意味

まず、良い意味での白羽の矢が立つは、多くの中からリーダーや代表などの名誉ある立場に選ばれることを指します。白羽の矢が立つという表現はビジネスで抜擢された時などによく使われますが、その多くはこのような良い意味として使われていると言えるでしょう。

悪い意味

悪い意味での白羽の矢が立つは、多くの中から犠牲者として選び出されることを指します。本人が望んでいない役割を押し付けられるようなニュアンスです。

白羽の矢が当たるは誤用

白羽の矢が立つではなく、「白羽の矢が当たる」という言い方をしている人もいるかもしれません。平成29年度に文化庁が発表した「国語に関する世論調査」では、次のような結果が出ています。

  • 「白羽の矢が立つ」と使う人が75.5%
  • 「白羽の矢が当たる」と使う人が15.1%

しかし、実は白羽の矢が当たるという表現は誤り。「あの人に白羽の矢を当てる」や「自分に白羽の矢が当たった」といった表現は間違いなので気をつけましょう。

参照:
文化庁 平成29年度「国語に関する世論調査」の結果の概要

「白羽の矢が立つ」の由来

昔の日本には、人間を生贄として神に捧げる「人身御供 (ひとみごくう) 」というしきたりが存在していました。人身御供はさまざまな目的のもと行われていましたが、疫病や天災が神の怒りによるものだと考え、それをなだめるために人間を殺し血肉や霊魂を捧げる、という目的もあったようです。

そして、人身御供を求める神が生贄として望む少女の家の屋根に、周囲の人が気づかないうちに目印として白羽の矢を立てたという俗説から、白羽の矢が立つという言葉が生まれました。このことから、白羽の矢が立つはもともと悪い意味として使われていた言葉だと言われています。

諸説ある

一方で、白羽の矢が立つという言葉には、このほかにも考えや俗説がいくつか存在します。

  • 生贄として選ばれるのは名誉なことという考え
  • 白いものは清らかであるという考え
  • 川に流れてきた白羽の矢を軒下に置いたら懐妊して子どもが生まれた
  • 富岡八幡宮では、白羽の矢は縁起物として開運吉事の当り矢とされていた

上記のような考えや俗説から、いい意味で使われることも多くなったのではないかと考えられています。

  • 白羽の矢が立つとは

    白羽の矢が立つという言葉は、もともと悪い意味であったと考えられています

「白羽の矢が立つ」の使い方・例文

ここでは、白羽の矢が立つの使い方を紹介します。次の例文を参考にしてみてください。

  • 次の役員として白羽の矢が立つのは、田中さんだと思います
  • 彼はビジネスセンスとコミュニケーション能力が高く、次期課長になる人物として早い段階で白羽の矢が立っていた
  • 彼女に社長秘書の白羽の矢が立ったのは当然のことだと思う
  • 常に営業成績上位をキープしていた山本さんに白羽の矢が立った人事だったので、周囲は納得していました
  • 繁忙期なのに、他のプロジェクトのリーダーとして自分に白羽の矢が立ってしまった
  • 白羽の矢が立つの使い方・例文

    白羽の矢が立つを正しく使えるよう覚えてみてください

「白羽の矢が立つ」の類語・言い換え表現

ここでは、白羽の矢が立つの類語・言い換え表現を紹介します。

お鉢が回る

お鉢が回る(おはちがまわる)は、「順番が回ってくる」という意味があります。大勢が食事している席で、飯びつ(炊き上がったご飯が入った容器)が自分の所に来た時の様子を指す言葉です。

これが転じ、厄介ごとや面倒ごとの役割が自分に回って来たことを指す言葉としても使われるので、悪い意味での白羽の矢が立つと同じような意味合いとなります。

貧乏くじを引く

貧乏くじは、「他に比べて不利益なくじ、もっとも損な役回り」という意味があります。損な役回りが与えられたり、自身で選んでしまったりした時に使う表現で、白羽の矢が立つの悪い意味と同じような意味合いを持ちます。

抜擢

抜擢は、「多くの人の中から特に選び出して、ある役目につけること」という意味です。「今度の主役に抜擢された」のように使う言葉なので、良い意味での白羽の矢が立つと同じような意味で使えます。

選抜

選抜は、「多くの中から目的や基準に合ったものを選びぬくこと」という意味を持っています。「今度の大会に出場する選手を選抜する」といった使い方をする言葉です。

選定

選定は「多くの中から目的や条件などに合うものを選んで定めること」という意味を持ちます。選抜と近い意味合いと言えるでしょう。

選ばれる

選ばれるは、「選ぶ」の受け身の言葉です。「大勢の候補の中から抜擢されるさま」という意味になります。

  • 白羽の矢が立つの類語・言い換え表現

    白羽の矢が立つを言い換えたい場合は、上記を参考にしてみてください

「白羽の矢が立つ」の英語表現

白羽の矢が立つという表現は英語にありません。英語で表現したい場合は、選抜されるという意味の「choice fell」や、選び抜くという意味を持つ「single out」などを使うといいでしょう。

  • 白羽の矢が立つの英語表現

    白羽の矢が立つを英語で表現したい場合は「single out」などを使いましょう

「白羽の矢が立つは」2つの意味を持つことわざ

「白羽の矢が立つ」は、「多くの中からリーダーや代表者など名誉な役柄に選ばれること」という良い意味と、「多くの中から犠牲者として選び出されること」という悪い意味の両方を持つ言葉です。

白羽の矢が立つは、「人身御供を求める神が生贄として希望する少女の家の屋根に、目印として白羽の矢を立てた」という俗説が由来で、もともとは悪い意味として使われていたと考えられています。

しかし、現代では良い意味で使われることが多く、悪い意味を持つことを知らない人もいるので、使う場合は注意が必要です。また、「白羽の矢が当たる」という間違った言い方をしないようにも注意しましょう。