お金に関することわざの中でも有名な「金は天下の回り物」。よく聞く言葉ですが、どのような意味なのか知らないまま使っている人も多いようです。正しく使わないと、相手に意味を誤解されてしまうだけでなく、不愉快な印象を与えてしまいかねません。
今回の記事では、金は天下の回り物の正しい意味や類語、対義語などを紹介します。また、英語と中国語でどのように表現するかも紹介するので、まとめて確認しておきましょう。
金は天下の回り物の意味
「金は天下の回り物」とは、「お金は常に人の間を巡っているものだから、今は持っていない人のところにもそのうち巡ってくる」という意味のことわざ。
今はお金がなくても、いつか自分のところにも回ってくるので悲観しなくても大丈夫だ、という励ましのニュアンスを含んだ言葉です。
金は天下の回り物の類語
金は天下の回り物の類語には以下のようなものがあります。「違う言葉で表現したい」「違ったニュアンスを伝えたい」という時に活用しましょう。
金は湧き物
「金は湧き物」とは、「お金は思わぬときに思わぬところから湧いて出てくるものだから、今お金がないとしても心配する必要はない」という意味の言葉。
金は天下の回り物のように、「お金とは巡り巡ってくるもの」といったニュアンスはありませんが、「そのうちお金が手に入るよ」という慰めの意味を持つ点は共通しています。
貧乏難儀は時の回り
「貧乏難儀は時の回り(びんぼうなんぎはときのまわり)」とは、「貧乏や苦労は単に時の運命に過ぎないから、悲しむ必要はない」という意味の言葉です。
お金だけでなく苦労も運によるものだとして、「単にめぐり合わせが悪かっただけだから、そのうちに苦しい時期は過ぎ去るだろう」「あなたが悪いことをした結果苦労しているのではなく、誰にでも起こりうることだよ」と慰める時などに使えます。
果報は寝て待て
「果報は寝て待て」とは、「幸運は人の力の及ばないものだから、焦らずに向こうからやってくるのを待つしかない」という意味を持つ言葉です。
「じっくり待っていれば自分のところに幸運が舞い込んでくる」という意味が「金は天下の回り物」と共通しています。「果報」とは、もともと前世の行いによる結果のことを指し、転じて幸運のことを指すようになりました。「家宝」ではないので注意しましょう。
金は浮き物
「金は浮き物」とは、「お金はどこかにとどまることなく、人から人へと移動していってしまうもの」という意味です。
「浮く」という言葉には雲のように「1つの場所に固定されず、ふわふわと定まらないもの」といったイメージがあります。あっという間に自分の元からふわりとどこかへ旅立ってしまうお金の様子を例えた表現です。
金銀は回り持ち
「金銀は回り持ち」とは、「お金は常に人から人へと回っていくもので、とどまることがない」という意味。「金は天下の回り物」と同じ意味になります。
金は天下の回り物の対義語
「金は天下の回り物と言うけど、自分のところには全く回ってこないじゃないか!」と思う人も多いでしょう。
それを言い表す時に使えるような、金は天下の回り物の対義語を紹介していきます。
金は片行き
「金は片行き」とは、「お金はあるところにはあるが、ないところにはない」という意味の言葉です。
「片行き」とは、1つのところにかたよっているという意味。自分の懐からはお金が出ていくばっかりで全く貯まらないが、お金持ちのところではお金がお金を生んでどんどん増えていく、といった状況を言い表したい時などに使えます。
金は天下の回り物の使い方と例文
他人を慰めたり自分を戒めたりする際に使用できる、金は天下の回り物。以下で、使用に適したシーンや実際の例文を紹介します。
金は天下の回り物の使用シーンと使い方
「そのうちお金がやってくるから、落ち込む必要はないよ」とお金のない人に対する慰めの言葉として使うのが基本です。
一方で、「今お金を持っている人でもいつか失うことがある」という意味合いもあることから「今は裕福でも、お金がいつ自分のところから出ていってしまうかわからないので、気を引き締めなくてはいけない」という戒めの言葉としても使います。
また、「お金は回り回ってまた自分のところに帰ってくるから、手に入れた富は貯め込まずに使ってしまったほうがよい」という意味で使うこともあるようです。
そのほか、「稼いだお金はぱっと使ってしまおう」とジョークのように使われるケースも。自分に対して使うのであれば問題ありませんが、他人に対して使うと、文脈によっては「あなたもそのうち貧乏になってしまうよ」「ケチケチしてお金を使おうとしない」という意味に取られてしまうこともあります。あまり親しくない人に使う時は、失礼にならないよう注意しましょう。
「回し者」などの誤用に注意
「回り物」という言葉は普段あまり使われないためか、「周り物」と誤変換されてしまうことがよくあります。しかし、「周り」というと「近く」や「囲んでいる部分」という意味になってしまい、「めぐる」という意味のことわざが成り立たなくなるので注意しましょう。
そのほかにも、「金は天下の回し者」というミスもありがちです。「回し者」とはスパイのことなので、「お金はスパイ」という妙な意味になってしまいます。
例えばビジネスシーンなどで間違った使い方をすると、「この人は大丈夫だろうか……」と相手に不安を与えてしまうこともあります。誤った表現をしないように正しい意味や表記を覚えておきましょう。
金は天下の回り物の例文
- FXで大損して貯金がすっからかんになってしまったが、「金は天下の回り物」と考え、くよくよしないことにした
- 金は天下の回り物だから、今は辛くても報われると思って頑張るよ
- 今はたしかに余裕のある生活ができているけれど、金は天下の回り物だからいつカツカツの生活に戻ってしまうかわからない。気をつけなくちゃいけないよ
- ボーナスでもらったお金は全額自己投資につぎ込んだよ。金は天下の回り物だから、また自分のところに帰ってきてくれるさ
金は天下の回り物の英語表現
金は天下の回り物を英語にしたいのであれば、以下の表現を使いましょう。
- Money changes hands. (お金は所有者を変える)
- Money is a great traveller in the world. (お金は世界の旅人だ)
- Money comes and goes. (お金は行ったり来たりする)
- Money goes around and around. (お金はぐるぐる巡る)
金は天下の回り物の中国語表現
金は天下の回り物は中国語で以下のように表現します。
- 钱是倘来之物 (お金は思いがけなく得るものだ)
- 贫富无常 (富と貧しさは予測できない)
- 风水轮流转 (風水は巡るものだ)
金は天下の回り物は誤用に注意!
「金は天下の回り物」は、「お金は人の間を巡るものだから、今は持っていない人のところにもいつかはやってくる」という意味で、主に励ましの言葉として使われます。一方で「金は天下を回るものだから散財してしまえ」「今は裕福でも気をつけないと貧乏になってしまうかもしれない」という意味合いで使うこともできます。
反対に、お金は出ていくばかりで入ってこないことを言い表したい時は、上記で紹介した「金は片行き」という言葉を使いましょう。
また、誤用にも注意したいところ。一字違うだけでも意味が成り立たなくなってしまうので、この機会にしっかり覚えてみてください。