「猫に小判」は、多くの人にとって耳慣れた言葉ではないでしょうか。しかし、「猫に小判の意味を説明してください」と言われると、上手く答えられる自信がないという人もいるはず。 この記事では、「猫に小判」の意味や由来、例文を交えた正しい使い方を紹介します。また、あわせて類語や英語表現も紹介。きちんと意味を知った上で正しく使えるよう、まとめて確認しておきましょう。

  • 猫に小判の意味とは?

    「猫に小判」ということわざについて解説します

猫に小判の意味

「猫に小判」は、猫に小判を与えても、猫は小判の価値がわからないので何の効果もないことから、「価値のある貴重なものであっても、価値がわからない者には何の役にも立たない」という意味で使われることわざです。

例えば、有名な画家が描いた100万円の絵があったとしても、その画家を知らなかったり絵画に興味がなかったりする人は100万円の価値を感じられないでしょう。

100万円の価値がある有名画家の絵も、その価値がわからない人にとっては役に立たず、こうした状態を猫に小判と表現します。

なお、「猫は小判の価値がわからないから、与えても安心」という意味ではないので、間違えないように注意しましょう。

  • 猫に小判の意味

    「猫に小判」とは、貴重なものを価値がわからないものに与えても、何の役にも立たないという意味です

猫に小判の由来

猫に小判の正確な由来はわかっていませんが、そのほかの動物ではなく猫が選ばれたのは、猫の興味のないものには関心を示さない性格が理由だとする説があります。この言葉の意味を言い表すのに適していたのかもしれません。

猫に小判は古くからある

猫に小判という言葉は、江戸中期には既にあったとされています。当初は、「猫に小判を見せたよう」というかたちだったそう。また、「上方いろはかるた」の「ね」の札は猫に小判です。このことからも日本で古くから親しまれてきた言葉であることがわかります。

ちなみに、上方とは京都のこと。いろはかるたは江戸・大坂・上方の3つがあり、江戸では「ね」の札は「念には念を入れよ」、大坂では「寝耳に水」です。

  • 猫に小判の由来

    猫に小判は昔から使われている言葉です

猫に小判の使い方と例文

ここからは、猫に小判の使い方を例文で紹介します。猫に小判の正しい使い方を知ることで、実際に文章や会話の中で自分が使う時にも、スムーズに表現できるようになります。例文を確認して猫に小判の使い方をしっかり理解しておきましょう。

猫に小判を使った例文は以下のとおりです。

・先輩から仕事に役に立つという資料をもらったが、内容がよくわからず、私には「猫に小判」だったようだ。

・彼女に贈ったネックレスは、有名ブランドの限定モデルで値段もかなりしたのだが、彼女はアクセサリーに興味がなく「猫に小判」だったようで、つけているのを見たことがない。

なお、猫に小判は、貴重なものも価値がわからない者にとっては意味がなく役に立たないという意味のため、ネガティブなニュアンスが感じられる表現です。

人前や他人に使った場合、失礼に当たるおそれがあるので、使い方や使う場面には注意しましょう。

  • 猫に小判の使い方・例文

    猫に小判の使い方には注意しましょう

猫に小判の類語・言い換え表現

猫に小判には、似たような意味を持つことわざが多くあります。語彙力アップを目指して、猫に小判の類語表現も覚えてみてください。

豚に真珠

「豚に真珠」も猫に小判と同じように、「貴重なものを価値のわからない者に与えても、何の役にも立たず無駄に終わる」という意味の言葉です。「豚に真珠を投げるな」とも言います。

元々は西洋のことわざで、新約聖書のマタイ伝7章にある、「聖なるものを犬に与えるな。豚に真珠を投げるな。それらを足で踏みつけ、あなたにかみついてくるだろう。」という文に由来しています。

犬に小判

猫に小判だけではなく、「犬に小判」という言い方もあります。犬には小判の価値がわからないことから「意味が通じないこと」「価値がわからないこと」を表し、猫に小判と同じ意味になります。

犬に論語

「犬に論語(ろんご)」とは、「いくら犬に物事の正しい筋道や人としての正しいあり方を伝えても、効果がなく無駄である」という意味です。

「論語」とは、中国の思想書で、孔子(こうし)という中国の学者・思想家の言葉や弟子たちとの会話などが書かれている本のこと。日本にも伝来し、日本の思想形成にも大きな影響を与えたといわれています。

馬の耳に念仏

「馬の耳に念仏」は、ありがたい念仏を馬に聞かせても無駄であることから、「立派なことやいい話を、その価値が理解できない者に聞かせても効果がなく無駄である」という意味です。

馬耳東風

「馬耳東風」は、人からの意見や批評を気にせず聞き流すことのたとえ。李白(りはく)という中国の詩人が書いた言葉が由来となった四字熟語です。

馬の耳に念仏と混同しがちですが、馬の耳に念仏は「価値がわからず無駄である」という意味で、馬耳東風は「聞き流す」という意味。間違えないように注意しましょう。

兎に祭文

「兎に祭文(うさぎにさいもん)」は、兎に神様や仏様の不思議な力やご利益を説明する祭文を聞かせても無駄であることから、「どれほど話をしても反応がなく意味がない」ことをあらわしています。馬の耳に念仏とも近い表現です。

牛に経文

「牛に経文(うしにきょうもん)」は、牛に経文を聞かせても、無駄であることから、「いくら説明したり話を聴かせたりしても何の効果もなく役に立たない」という意味です。経文とは、宗教での教えについて書かれた文章やお経のことです。

猫に経

「猫に経(ねこにきょう)」とは、猫にお経を聞かせても意味がないことから、「価値のあるものや立派なものも、それがわからない者にとっては何の価値もないこと」「役に立つ教訓も理解せずに聞き流してしまうこと」という意味があります。

  • 猫に小判の類語

    猫に小判には似た意味のことわざや表現が数多くあります

猫に小判の英語表現

猫に小判をそのまま英訳した言葉はありませんが、似た意味を持つ「豚に真珠」は聖書に由来していることから、英語表現があります。

「cast pearls before swine」で豚に真珠という意味になるので、猫に小判の英語表現として使えるでしょう。

  • 猫に小判の英語表現

    英語表現についても把握しておきましょう

猫に小判の意味をしっかり覚えておこう

「猫に小判」とは、「価値のある貴重なものでも、価値がわからない者には何の役にも立たない」という意味のことわざです。

よく聞くことわざでも、実は意味を知らないということもあるでしょう。しっかり意味を知っておけば、会話中にいちいち調べることなくすぐに意味を理解できます。ぜひ忘れずに覚えておきましょう。

また、今回紹介したように猫に小判には「豚に真珠」「馬の耳に念仏」など、似た意味をもつ類語が多くあります。類語も知っておくと表現の幅が広がるので、あわせて覚えてみてはいかがでしょうか。