キャノンデールの“Synapse(シナプス)”が4年振りにフルモデルチェンジした。2006年、北米三大ブランドの中でいち早く快適性をセールスポイントにデビューし、キャノンデール初のフルカーボンフレームとして話題を集めた。

路面の突き上げを吸収しつつ、横方向の剛性を上げるSAVEチェーンステーなど、現在のロードバイクのラインナップの基幹となる技術が投入された。本国では同社のラインナップで販売シェアが47%に達する人気モデルとなっている。

■注目のモデルチェンジ

今回のモデルチェンジで注目すべき点は2つ。 発売当初はピュアレースではなく、もう少しサイクリング要素を含むイタリアの人気イベント“グランフォンド”用としてデビューしたが、新作では未舗装路もフィールドにするグラベルライドも視野に入れている。

河川敷の未舗装路や林道を走れるように、標準タイヤは700×30Cを採用。数年前のクロスバイクと同等の太さを確保しているので、「ロードバイクはタイヤが細いから…」と苦手意識がある人も安心して乗ることができる。

ロードバイク以上、マウンテンバイク以下という高い走破性を持つグラベルロードは、これまでロードバイクに乗り続けてきた人にとっても大きな魅力だ。欧米のみならず日本でも人気モデルの納期は1年以上と言われている。

また、グラベルロードの魅力はバッグなどの取り付け台座が数多く、細部の形状もアクセサリーを多く搭載することを視野に入れて計算されているため、キャンプ&ライドといったツーリングを楽しむ人も多い。

新型“Synapse(シナプス)”は超郷里を快適に走るというエンデュランスロードの基本を外さない範囲で、トップチューブ上面にバッグを取り付ける台座を設けるなど、拡張性を向上させている。感覚的にはグラベルロード色の極めて高い仕様である。

そして、新型“Synapse(シナプス)”における進化の核心は、サイクリングのDX化を図った“SmartSense(スマートセンス)”だ。ヘッドライトとテールランプ、後方レーダーを統合したセーフティライドシステムで、フレームに組み込まれたバッテリーと専用アプリによって一元管理される。そのためアクセサリーごとに充電する手間がなくなり、トータルで見ると軽量化にも貢献している。

  • “SmartSense(スマートセンス)”。実行時間は節約モードで最大20時間、夜間走行などフルパワーモードで約2時間45分。USB-Cでスマホに電電供給も行なえる。

最近はヘッド&テールライトは対抗車や後続車に自分の存在をアピールするため、昼夜を問わず点灯するのが常識となりつつある。夜間は前を照らすために常時点灯、昼間はアピール度の高い点滅が推奨されており、これをスマホで管理できるのは便利だ。

リアレーダーはGARMIN(ガーミン)がすでに発売しているVariaレーダーを流用したものだ。後方から迫ってくるクルマを140m以内で検知すると、キャノンデールアプリ、またはディスプレイユニットを介して、ライダーに注意喚起を行なってくれる。

しかも検知するのは複数台。トラックに追い抜かれた直後に、もう1台クルマがいて驚いた経験のある人も多いだろうけど、そういうシーンでも安心して走れる。

  • 「ハブに取り付けられたセンサー」。走り出すとハブに取り付けられたセンサーによって自動的に計測を開始する。

というのが、新型“Synapse(シナプス)”の概要だが、本当の魅力はスペックで表現できない快適性にある。低圧でもスムーズに走れるワイドタイヤはレーシングバイクでも大きな潮流になっており、走行抵抗を小さく、ライダーの疲労を最小限に抑えるのはスポーツバイクの永遠のテーマだ。

どんなに軽く、剛性が高く駆動効率が高くとも、エンジンとなる人間が疲れてしまっては意味がない。だから、欧米ではエンデュランスロードの人気が高い。日本でもレーシングバイクから乗り換える人が増えてきているので、その勢いを加速させるのが新型“Synapse(シナプス)”の狙いである。

文/菊地武洋