許斐 剛氏による大ヒット漫画『テニスの王子様』(通称『テニプリ』)の続編である『新テニスの王子様』を舞台化した、ミュージカル『新テニスの王子様』The Second Stageが、1月〜2月にかけて上演される(1月28日~2月6日 KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉、2月11日~2月20日 TOKYO DOME CITY HALL、2月25日~2月27日 メルパルクホール大阪)。2020年~2021年に舞台化され『新テニミュ』として好評を博したシリーズの第2弾で、全国中学生テニストーナメントを終えU-17(アンダーセブンティーン)日本代表合宿に参加した越前リョーマら中学生たちと、強者揃いの高校生たちの姿を描いていく。

今回はU-17(アンダーセブンティーン)選抜1軍上位メンバーのGenius10が登場し、前作続投メンバーに加え新キャラクターも出演。主人公・越前リョーマ(今牧輝琉)の兄・越前リョーガ役には井澤勇貴が決定した。舞台、映像などで幅広く活躍しながら、『テニミュ』に新たに参加することとなった井澤にインタビューし、『テニミュ』に対しての思いや原作の面白さ、意気込みなどについて話を聞いた。

  • 井澤勇貴 撮影:宮田浩史

    井澤勇貴 撮影:宮田浩史

■出演するとは思っていなかった

——今回『新テニミュ』に出演されますが、『テニミュ』に対してはこれまでどのような印象でしたか?

以前にオーディションを受けたことがあるのですが、その時はご縁がなく……同年代の人たちをすごく意識する年頃でもあったので、俳優仲間が受かったという話を聞くと悔しさもあり、観に行ったりもしなかったんです。だから今回改めて前作(ミュージカル『新テニスの王子様』The Fiest Stage)の映像を拝見して、初めてミュージカル『テニスの王子様』というものに触れました。汗、涙、努力といった結晶が詰まっていて、すごく素敵な作品だと思いました。

——周囲の反響などはいかがでしたか? 徳川カズヤ役の小野健斗さんとは共演作も多いとのことですが。

小野くんのことはケンティーって呼んでるんですけど、とても長い付き合いなんです。友達みたいな兄弟みたいな感覚で、プライベートでもよく遊んだりしていて、僕が『新テニミュ』に出るとわかった時には「リョーガっぽいわ!」と言われました(笑)。びっくりしていたんじゃないかな? 「今、テニミュに出るんだ」みたいな驚きもあったのかもしれないです。

——SNSでも「まさか井澤さんが」という反響は大きかったですよね。

本当に、僕自身も出演するとは思っていなかったです。越前リョーガは最初に劇場版『テニスの王子様 二人のサムライTHE FIRST GAME』に登場していて、強くてかっこいいなと思っていたので、ぜひトライしたいと思いましたし、本当に感謝しています。

——井澤さんのTwitterでは「#テニミュ出てません」といったこともネタにされていたかと思います。

やりました! コロナ禍の外出自粛期間中に色々な作品のキャストがハッシュタグでつながってツイートをしていたので、僕も「出てなくてもやっちゃおう」と思って「#テニミュ出てません」とハッシュタグにして、キャラクターや必殺技も自分で勝手に作ってツイートしたんです(笑)。そこから本当に出演することになるなんて、まさかですよね。これが僕の物語です。

■原作も毎月楽しみに

——『テニミュ』に参加して驚いたことなどはありましたか?

公演の稽古の前に実際にテニスの練習があるんですが、こんなにきついんだということを初めて知りました。キャラクターがとんでもない強さだから、フォームが綺麗なのはもちろん、それぞれの個性や振り方もあるわけで。最初はフォームの形を教えてもらい、2回目はコート上で音に合わせてラケットを振って……と練習していたら想像以上にしんどかった。

僕は筋トレやキックボクシングもやっているし体を動かすのは好きなのですが、違った筋肉の動かし方なので大変でした。実は、球技への苦手意識もありました。父親が空手をやっていた影響でずっと格闘技をやっていたので、キャッチボールもしたことがなく、代わりにスパーリングをしていたくらいなので、未知の世界でした。

——今回はテニスボールを同時に10球打つシーンなどもあるかもしれませんが…。

10球打ち、どうしよう! (対峙する)亜久津 仁(益永拓弥)も瞬間移動するかもしれないし。原作を読んでいても驚く展開がいっぱいあって、許斐先生は本当にすごいです。原作の『新テニスの王子様』で僕が気になるのは、ドイツのダンクマール・シュナイダーという巨大化する選手です。

——「デカ過ぎんだろ…」というフレーズが話題になっていた選手ですね。

皆さん知ってます? あのキャラのすごさ! 徳川カズヤがブラックホールを発生させたり、平等院鳳凰が海賊を出して剣で相手を刺したりするのも相当すごい技ですが、まだテニスボールを使った技ということで納得ができる。でも、あの選手は巨大化するじゃないですか。しかも、弾きとばされた選手をお腹で受け止める描写がある。あの人、1番強くない? あとは、幸村(精市)もすごい。未来を剥奪しちゃうんですから。僕は本当に毎月、『ジャンプSQ.』での連載を楽しみにしています。

——今回の公演でも「『テニプリ』がネット炎上したと聞いて心配したら、ボールの摩擦でコート上のネットが物理的に炎上していた」と話題のシーンがあるのでは? と気になっています。

その場面はぜひやってほしいです。たぶん僕が出ていないシーンになるので、袖からでも絶対に見たい。遠野篤京(輝馬)の13の処刑法も楽しみですし……。『テニプリ』は本当に世代で、周りには影響を受けてテニスを始める友達もいました。毎週アニメを楽しみにしていて、「天衣無縫の極みごっこ」「五感奪うごっこ」で遊んでいた思い出があります。

——それは五感を奪われる方の演技力も試されそうですね。

そうなんです。だから、なかなか奪えなかったですね。二感くらいでした。

■1番新人の立場として「頑張ります」

——『新テニミュ』高校生キャストはスキル、キャリアなども含めての強さがあると思いますが、そこに越前リョーガ役として入ることについてはいかがですか?

これまで『テニミュ』に出られる方たちは若くてダイヤの原石というイメージだったんですが、『新テニミュ』の俳優、特に高校生役の方たちは一通りの経験をされていて、歌やダンスもみんなスキルがすごくて、また違った魅力を感じました。そこに入ることについて、役も役なのでプレッシャーはありますけど、初代高校生メンバーとしての責任と覚悟というものを重く捉えるのではなく、楽しみながら挑んでいければと思っているんです。ある格闘漫画に「努力する者より楽しむ者の方が勝る」と書いてあったのが心に残っていて、僕も人にダンスを教える時には、嫌いにならないように教えることをポリシーとしています。勉強も芝居も何事においても、楽しみながら理解していったらそれがどんどんプラスになっていくと思うので、そういう感覚でいい意味でラフに越前リョーガを演じられたらと思っています。

リョーガについてはけっこう明かされていないことが多くて、実はミステリアスなんですよね。とは言え、とてつもなく強いということと、弟思いということは揺るがないと思います。僕も家族が大好きで実際に妹もいますし、今回リョーマを演じる今牧(輝琉)くんについても本当の弟のように感じています。キラキラした感じがすごくかわいくて、彼のことを好きな気持ちが自然と役に出ていくんじゃないかなと思っています。

——改めて『新テニミュ』に出る意気込みというのも聞かせていただけたら。

安直な言葉かもしれないけれど、頑張ります。僕は僕なりに、ミュージカルや殺陣の多い作品、アクション、ダンスが多い作品と色々な経験をしてきて今があるので、その経験を活かしていきたい。中学生メンバー、高校生メンバーの若さが持つエネルギーや、何事にもがむしゃらにひたむきに向き合う姿勢を吸収しながら、僕自身、みんなの役に立てたら嬉しいなと思います。

越前リョーガというキャラクターの初代キャストにはなりますが、重く捉えないで楽しみながら挑みたいし、今回初めて『テニミュ』に出させてもらう1番新人の立場でもあるので、僕も皆さんに色々教えてもらうつもりです。テニスの動きやラリー、さらにはラリーの後に歌うということも経験がないので、学ばせてもらうところはしっかり学ばせてもらって、お返しできるところがあればいいなという気持ちで意気込んでいます。

——『テニミュ』の1番新人になるってすごいことですね。

本当にそうなんです。でもそれが面白くて、年齢が上がっていくにつれて、将来のことや自分の未来のことをより深く考えるようになり、今までぐうたらしていた休みの日も何か1つスキルを身につけるべきだと思うようになりました。例えば少し前にイベントでピアノを弾く必要があったので新たに購入して、今はほぼ毎日ピアノを弾いています。外出自粛期間中にはYouTubeで絵の描き方の動画を見て絵を描く練習をして、先日越前リョーガのイラストも描きました。色々自分の財産になるものを身につけられたらいいなと思っているので、『新テニミュ』でも新鮮な気持ちで頑張ります。

■井澤勇貴
11月26日生まれ、東京都出身。映像、舞台など幅広く活躍し2008年にはドラマ『ここはグリーン・ウッド』で主演を務める。主な出演作に舞台&映画「Messiah メサイア」シリーズ(15年〜)、「私のホストちゃん」シリーズ(16年〜19年)、「おそ松さん」シリーズ(16年〜)、ミュージカル『憂国のモリアーティ』シリーズ(19年〜)など。