■藤井監督が感じている“映像の持つ力”とは?

本作だけではなく、謎の集団が巨悪と闘うドラマ『アバランチ』でも「正義とは何か?」というテーマに向き合っていた藤井監督。“映像作品の持つ力”について、今どのように感じているのだろうか。藤井監督は「“ノーボーダーであらゆる思いを伝えられる”ということが、映像の持つ力なのかなと思っています」と思いをめぐらせ、「話す言葉が違っても、映画言語で世界中とつながることができる。映像作品を通してそれぞれの国の社会情勢を学べたり、文化、歴史を知ることだってできる。今回も『新聞記者』という作品を通して、僕たちが社会的なテーマに真摯に取り組んでいる姿勢が一人でも多くの人に届いたらとてもうれしいなと思っています」と語る。

『新聞記者』と『アバランチ』について、「共通点はあると思います」という藤井監督。「どちらも内閣情報調査室についても描いていますし、エンタテインメントを通して正義や“声なき声”に注目している。『アバランチ』は劇場型でファンタジーな部分もあり、なおかつ攻撃性のあるドラマにしたいと思っていました。一方の『新聞記者』は綿密にリサーチをして、作品にリアリティを与えていこうとした。アプローチは真逆でありながら、観てくださった方が何かを考えるきっかけになれるような作品になったと思います」と胸を張りながら、「『アバランチ』は剛さんに誘っていただいて参加しました。剛さんからのお誘いならば、無条件で『頑張ります! 力になりたいです!』と前のめりになります」と大きな笑顔を見せていた。

■藤井道人
1986年8月14日生まれ、東京都出身。日本大学芸術学部映画学科卒業。2010年に映像集団「BABEL LABEL」を設立。伊坂幸太郎原作の映画『オー!ファーザー』(14)で長編監督デビュー。以降『青の帰り道』(18)、『デイアンドナイト』(19)、『宇宙でいちばんあかるい屋根』(20)、『ヤクザと家族 The Family』(21)など精力的に作品を発表しており、今後も『余命10年』(3月4日公開予定)など待機作が控える。2019年に公開された映画『新聞記者』では、第43回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を含む6部門を受賞したほか、映画賞を多数受賞。