三谷幸喜が脚本を手掛け、俳優の小栗旬が主演を務める大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)が、9日にスタートする。8回目の大河ドラマ出演で初の座長を務める小栗に、三谷脚本の魅力や、北条義時としての役作り、大河ドラマの醍醐味など話を聞いた。

  • 大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で主人公・北条義時を演じる小栗旬

本作は、源頼朝の右腕として活躍し、武士の世を盤石にした鎌倉幕府の2代目執権・北条義時の物語。華やかな源平合戦、その後の鎌倉幕府誕生を背景に、権力の座を巡る男たち女たちの駆け引きを描く。北条義時役の小栗のほか、八重役の新垣結衣、源義経役の菅田将暉、北条政子役の小池栄子、源頼朝役の大泉洋らが出演。「鎌倉殿」は鎌倉幕府の将軍を、「13人」は、頼朝の死後、合議制で政治を動かした家臣の人数を示している。

三谷が大河ドラマの脚本を手掛けるのは、『新選組!』(04)、『真田丸』(16)に続いて3回目。小栗は「三谷さんの脚本は着眼点がものすごく面白く、新しい鎌倉時代の物語になっている」と言い、「源頼朝を推挙して挙兵するまでは北条家のホームドラマみたいになっている。大河ドラマは、家族の物語から始まるところがあると思いますが、三谷さんのユーモアもあって楽しんで見てもらえるものになると感じました」と魅力を語る。

印象に残っているセリフは「ちょっと」とのこと。「大河ドラマや時代劇は、『ちょっと』という言葉は絶対に言ってはいけないと思って参加するんですけど、三谷さんの脚本には『ちょっと』が出てくるので、言っていいんだと(笑)。自分も『ちょっと待ってください』と言うところがあるのですが、頼朝役の大泉さんも『ちょっといいかな』というセリフがあって、大泉さんも『まさかこんなセリフを大河で言うとは思わなかった』と言っていました」。

言葉の縛りが緩い分、アドリブのやりとりは演じやすいという。「時代劇でアドリブになった場合、その時代の言葉だと挟みにくいというのがあるのですが、今回は言葉の縛りが緩い分、面白くできているところもあると思います」と話した。

そして、「面白いシーンは、毎回大泉さんに『これで面白くなっていますか?』と確認しています」と明かし、「大泉さんに『面白かった』と言われたら、『よかった。正しいことをしたんだな』と思っています」と笑った。

また、「今回の三谷さんの脚本は、去っていく方たちの正義がものすごくかっこよく描かれている」と述べ、「ちょっとうらやましいなと。僕は最後の最後まで去らないじゃないですか。去っていく人たちの美学、散り行く人たちの散り際が、皆さんかっこいいので、毎回いいな~と思って見ています(笑)」と打ち明けた。

  • ヘアメイク:渋谷謙太郎(SUNVALLEY) スタイリスト:臼井崇(THYMON Inc.) 衣装協力:ジョルジオ・アルマーニ・ジャパン

■10代から演じる「変に若々しくすることはせず」

演じる義時については、「僕たちが作っている作品の中での話ですが」と前置きした上で、「もともとは自分の置かれている立場にそんなに不満がなかった青年。戦にも興味がなくて、米蔵で米の勘定をしていることが楽しいみたいな男の子が、平家に虐げられていることに対して兄の宗時を筆頭に立ち上がっていかなければいけないということで巻き込まれてしまい、そこからひたすら源頼朝の横でいろんな政治の在り方を見てきた結果、ものすごく計算高い人になってしまう」と解説。

「そこは歴史劇としては非常に面白いところですが、義時を演じている自分としては、あんなに真っすぐだった彼が、家族を守るためにはこうせざるをえないということに徐々に手を染めていくことが悲しい感じもある」と吐露し、「決して権力がほしかったわけではなくて、守らなければいけない人たちが増え、この人たちを守るためにはこの決断をせざるをえないということで、権力争いに参加するようになっていく」と語った。

小栗は、10代の義時から演じている。自身は現在39歳の小栗。実年齢とかけ離れた年齢を演じたわけだが、「歴史上の義時の年齢と照らし合わせると10代前半ぐらいだったという話になりますが、作品においては年齢を少し曖昧にしているので、変に若々しくしようという若作りはせず、だけど、ハツラツとして元気みたいなところからのスタートでした」と無理やり若さを演出することはなかったという。また、その年齢よりも「20歳から25歳くらいが、義時にとって大きな変化が生まれているところなので、このあたりの機微が難しい」と、20代前半の演技のほうが難しかったと明かした。