ビジネスシーンでは何かトラブルが起きた際に、経緯報告書を作成することがあります。そもそも「経緯」とはどういう意味なのでしょうか。

本記事では経緯の意味や、似た意味の言葉「経過」との違い、そのほかの類語、英語表現などを、例文を交えて解説します。経緯報告書を作成する際のポイントもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

  • 「経緯」とは

    「経緯」の意味について確認しましょう

経緯とは

「経緯を説明する」などの表現で使われる経緯ですが、実は読み方が2通りあります。ここでは経緯の意味や読み方、経過との違いなどを説明していきます。

経緯の読み方は「けいい」または「いきさつ」

経緯は「けいい」または「いきさつ」と読み、「物事のいきさつ、筋道、細かな事情」という意味があります。「いきさつ」とは、「物事がそこにたどり着くまでの事情」という意味です。

ほかにも「地球の経度と緯度のこと」という意味があります。経度と緯度を合わせて経緯度と呼びます。

経緯の熟語の構成は

経緯という漢字は、次の意味をもつ2語から成っています。

  • 経(けい): 織物の縦糸や、上下・南北の方向のこと
  • 緯(い): 織物の横糸や、左右・東西の方向のこと

つまり、経と緯は「縦と横」という意味に置き換えられるので、「対になる漢字の組み合わせでできている熟語」だということになります。

経緯と経過の違い

経緯と似た意味の言葉に「経過」があります。これらの違いは何でしょうか。意味を並べて確認します。

  • 経緯: 物事のいきさつ、筋道、細かな事情
  • 経過: 時間がすすむにつれて移り変わる物事のようす、変化の具合、成り行き

経緯とは「物事がそこに至るまでの事情」のことで、現状を引き起こす要因となった詳細な事柄を指します。一方、経過とは「時間の流れに伴う変化」のことで、一連の変化のようすを指します。

例文
・こうなってしまった経緯を聞かせてほしい。
・ケガの経過はいかがでしょうか。

経緯と背景の違い

経緯と似た言葉には「背景」もあります。意味を比べて確認します。

  • 経緯: 物事のいきさつ、筋道、細かな事情
  • 背景: 物事の背後にある存在や事情

背景とは現状を引き起こす原因となった事情のことです。現状を取り囲んでいる環境のことで、経緯よりもさらに大きな枠組みで捉えられます。

例文
・今回の入力ミスの背景には、業界の人手不足がある。

  • 「経緯」とは

    経緯と似た意味の言葉に、「経過」や「背景」があります

経緯報告書・経緯説明書

経緯という言葉は、ビジネスシーンでは主にトラブルが発生した時に頻繁に聞かれます。

経緯報告書は、何かトラブルが起きてしまった際に、まだ解決前の段階で作成される報告書です。会社によっては経緯説明書や経過報告書などと呼ばれます。

経緯報告書は、単に担当者が謝るためのものではありません。再発を防止するために、「なぜこのような事態になったのか」を客観的に記録して共有することが大切となります。

経緯報告書のポイント

インターネットには経緯報告書のテンプレートが多数アップされていますが、作成する際のポイントは以下のようにまとめられます。

  • 「5W1H」を意識した簡潔な文章にすること
  • 時系列にして物事の流れをわかりやすくすること
  • 考えられる原因と対策を明記すること など

なお、トラブルが解決して一段落してから作成される書類は、顛末書(てんまつしょ)とも呼ばれます。

  • 「経緯」の使い方と例文

    経緯報告書では原因と対策を明記することが大切です

経緯の類語・言い換え表現

ここからは、経緯の類語を見ていきましょう。

事情(じじょう)

事情とは、「物事がある状態にたどり着くまでの様子や状態」のことです。ビジネスシーンでは、事情を大っぴらにしたくないときに「諸事情により」などと表現する場合があります。この場合は、深く詮索しないことがマナーです。

例文
・クライアントには事情を丁寧にご説明してお詫びいたしました。
・家庭の諸事情により、明日は欠席させていただきます。

顛末(てんまつ)

顛末とは、「物事の最初から最後までの事情」のことです。「顛(てん)」には「てっぺん、先端」という意味があり、「末(まつ)」には「終わり」の意味があるとわかっていれば覚えやすいでしょう。

例文
・あの事件の顛末を教えていただけませんか。

過程(かてい)

過程とは、「物事が変化・進行していく様子、道筋」のことです。経緯にある「物事がそこに至った理由」は含まれません。

例文
・今回のトラブルは、接客の過程で起きてしまった。

成り立ち(なりたち)

成り立ちとは、「あるものができあがること、そこに至るまでの過程」や「できあがっているものの仕組み」のことです。経緯の類語ではありますが、「トラブルの経緯」とは言っても「トラブルの成り立ち」とは使いませんので注意しましょう。

例文
・会社の成り立ちを新入社員に説明する。

  • 「経緯」の類語

    経緯の類語はたくさんあります

経緯の英語表現

経緯は英語で「process」「backbround」「circumstance」「detail」などに置き換えられます。詳しく見ていきましょう。

process

「process」には「過程や経過、成り行き」などの意味があります。「in process of time」とは「時がたつにつれて、そのうちに」という意味です。

例文
I would like to know about the process of concluding the contract.
(契約締結までの過程を教えてほしい)

background

「background」には「背景・背後事情・(人の)経歴」などの意味があります。

例文
What's the background to all this trouble?
(このトラブルの背景には何があるのでしょう?)

circumstance

「circumstance」には「事情・状況・環境」などの意味があります。複数形「circumstances」で用いられることも多く、「in the circumstances」は「現状では」という意味です。

例文
The circumstances of the current situation have not changed since the time of the trouble.
(現状の状況は、トラブル発生時と変わりません)

detail

「detail」には「細部・詳細・詳細な情報」などの意味があります。

例文
You have to write down in the report details of this trouble.
(報告書にこの問題の詳細を書いてください)

  • 「経緯」の英語表現

    ビジネスで英語を使う方は、覚えておきましょう

経緯の意味を正しく理解しよう

経緯とは「物事のいきさつ、筋道、細かな事情」という意味をもつ言葉です。ビジネスシーンでは何か問題が起きた際に、経緯報告書を作成することがあります。経緯報告書では客観的に、時系列にそってわかりやすく、そして問題の原因と対策をまとめることが重要だとされています。

経緯には類語も多く、英語表現も何種類かあります。意味をきちんと確認して、正しく使い分けられるようになりましょう。