――この話を聞いてスタッフのみなさんがカット割りにすごくこだわりを持って演出されていることを知って音楽番組を見ると、また見方が変わって面白いですよね。
浜崎:そうですね。言葉で説明するのは難しいんですけど、『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日)ってこんな音楽の授業を学校でやってほしいNo.1の番組じゃないですか。歌詞とかメロディーとか作曲とかダンスとかいろんな切り口でやってくれるので、ぜひ「カット割り」の特集もしてほしいですね(笑)
利根川:実は「Mステの裏側」を扱ったことがあるんですけど、もっと深くまでやると面白いかもしれないですね。
――おふたりの中で、ご自身が撮った“会心の歌唱映像”を挙げるとすると、何になりますか?
利根川:若手に画撮りを教えるときがあって、そこで教材として見せたことがあるんですけど、2010年代の前半は自分が一番狂っていたので、その頃に撮った『Music Lovers』のL’Arc~en~Cielさんですね。ある種の変態性を持ってこだわったカットになってると思いました。
浜崎:私は『FNS歌謡祭』(2017年) で「飛天」(=グランドプリンスホテル新高輪の大宴会場)でやった平井堅さんと平手友梨奈さんがコラボした「ノンフィクション」が印象に残ってます。
利根川:めちゃくちゃ話題になったやつですよね。
浜崎:平手さんの真上にクレーンカメラを持っていって、平手さんが学生カバンからビリビリに破いたプリントを舞い上げてカメラのレンズに当たるか当たらないかくらいまで飛ばすカットがあったんですけど、あれは自分が撮った中で生涯でもベスト5には入るかなと思います。
木月:あれを生放送でやったんですよね。すごいなあ。
浜崎:生放送で、曲が終わってCMに入ったら、平手さんが全力を出し切って倒れてしまって、スタッフに抱えられながらハケていくのを目の前の円卓で見ていたアーティストの皆さんがザワつきまして。それも含めてすごく印象に残る1曲だなと思いますね。
利根川:あの曲って平井堅さんが大切な友人の方に向けて書かれた曲で、きっと並々ならぬ思いがあって、だから片手に花束を持って歌唱されているんですよね。そういうバックグラウンドを平手さんもおそらく分かっていたから、本気で向き合ってそれをダンスで表現したので、ものすごい映像になったんだろうなと思います。
■他番組を見て「こう来たか!」「ダメでしょう!」
――他の番組の歌唱映像は、やはりチェックされるんですね。
利根川:嵐さんをどう撮るのか、Perfumeさんをどこが一番カッコよく撮るのかみたいなことを考えながら見ますよね。
浜崎:そうですね。例えば、三浦大知さんで「あーこの番組やっちゃったなあ」っていうのもあるし、「ここはこう来たか。カッコいいなあ」っていうのもありますし。
利根川:テレビの音楽番組あるあるなんですけど、新曲が出ると同じ時期に同じ曲でいろんな番組に出るわけじゃないですか。でもそれぞれを見ると、やっぱり違うんですよね。自動的に似たような画撮りになる部分が出てきたり、「そこそう撮るんだ!」とか「そこはそう撮っちゃダメでしょう!」みたいなことがありますよね。
浜崎:特にダンス系でいうと、最近だと乃木坂46さんとか櫻坂46さんとか振り付けにガッツリとしたコンセプトがあると、カットって結構振り付けに導かれるものだから、「ここはこう撮らないと意図が伝わらないよね」というのがあるんですよ。そこって各局汲み取れるディレクターだと同じになるんですけど、それを撮り逃しちゃうのを見ると「あーっ!」って思うし、逆に「ここはいろんな解釈の仕方がある」というパートだと、「こう撮ったのか!」みたいな新しい発見があるんです。