利根川:そもそも、ダンスって正対して真正面から見てすべてが成立するようにできていることが多いから、アングルを付けて撮ることによって見えないところが出てきちゃうというのがあったりするんですけど、ずっと正面で撮り続けても面白くないから、新たな見せ方を提案していくという作業もあったりしますよね。

浜崎:韓国ってダンスは正面から見るものだという意識が根強いから、サイドから撮る画がほとんどないんですよ。だから、韓国のアーティストが来たときに横からの画を入れるとすごく嫌がられたりします。それって、ダンスの作り方が日本と違くて、韓国の場合はセンターで踊った人が自分のパートが終わると、次のメンバーの見せ場になるときにハケることがあるんです。日本のダンスの振り付けは、見せ場が終わった人がハケるという概念があまりなくて、常に全員が踊ってるか、サイドに入れ替わっても「ここは私のターンじゃないです」というのがあんまりない。でも、韓国は「私の見せ場じゃありません」という人がいるから、自動的にサイドの画というのを嫌がるんですよね。

利根川:あと収録番組を見ていると、数テイク撮って組み合わせる感じがありますよね。日本だと、全部ライブスイッチングでやっていくので一気に撮るんですけど、韓国だと引きのテイクを撮って寄りのテイクを撮ってということをやってるので、普通にカット割りしたらあり得ないような画のつながりがあったりするんです。

浜崎:そうですね。ミュージックビデオ的というか。あと、レールで横に移動しながら何度も寄り引きしたりみたいな、日本のテレビでは見たことのないカメラワークも結構ありますね。

木月:日本でもそういう撮り方を取り入れるような動きはあるんですか?

利根川:それをメインにする番組があってもいいと思うんですよね。

浜崎:複数テイクでMV的な撮り方ができたらまたちょっと違う映像が作れると思いますけど、結局は時間と予算の問題につながっていくんですよね。

木月:なるほど。

浜崎:音楽番組って、他のバラエティと比較すると倍くらい予算がかかるんです。まずセットにお金がかかり、照明の機材量も多く、バラエティだったら本番前日の夜にセットが建っていればできるけど、音楽番組だと照明のシュート(=位置合わせ)もしなきゃいけないからスタジオを3日押さえて、その3日分の人件費とスタジオ費がかかってしまうので、どうしても予算が膨らんでしまう。テレビ全体の予算が減ってきている中でそこをどう乗り越えていくのかというのは今、分岐点なのかなと思いますね。

木月:1つのカットに懸ける労力が、普通のバラエティと全然違いますもんね。それは費用がかさむなという。

■『FNS歌謡祭』乃木坂卒業・生田絵梨花に盛大な花道

――12月8日には『2021FNS歌謡祭 第2夜』が放送されますが、見どころはいかがでしょうか?

浜崎:第2夜はミュージカルが盛りだくさんです! 中川晃教さんの『ジャージー・ボーイズ』、神田沙也加さんを中心とした『マイ・フェア・レディ』などの名作から、『北斗の拳』『刀剣乱舞』など新しい作品までズラッと取りそろえております。そしてスピッツ、あいみょんなどの初登場組と優里さん、Creepy Nutsなど“今”を象徴するアーティストまで本当に幅広いです。桑田佳祐さんが2021年を象徴するあの楽曲を歌ってくれます。また、長年『FNS』で“コラボ女王”として数々のコラボに参加してくれた乃木坂46の生田絵梨花さんがグループを卒業するので、今までの感謝も込めて盛大な花道で送り出そう、というコーナーもあります。

――第2夜は木月さんがやってる『久保みねヒャダ』の裏生配信もありますよね。

木月:はい。久保みねヒャダの3人がFNS歌謡祭を見ながらの配信番組を担当します。3人は本当に音楽が好きで造詣も深いので、1曲1曲の見方が大変興味深いです。関係ないことをしゃべりっぱなしのうるさい裏配信ではなく、友達と一緒に『FNS歌謡祭』を見ているようなそんな配信に今回もなると思います。ぜひご覧ください。

  • 『2021FNS歌謡祭 第2夜』の裏生配信に登場する“久保みねヒャダ”(左から 能町みね子、久保ミツロウ、ヒャダイン) (C)フジテレビ

次回予告…~音楽番組編~<3> 大型音楽特番増加の背景、各局に受け継がれるノウハウとは

●利根川広毅
1977年生まれ、千葉県出身。千葉商科大学卒業後、制作会社を経て、フリーランスとして『Music Lovers』(日本テレビ)、『グラミー賞授賞式』(WOWOW)などを演出。13年に日本テレビ放送網へ入社し、『LIVE MONSTER』『バズリズム』『THE MUSIC DAY』『ベストアーティスト』などを担当。18年にテレビ朝日へ入社し、現在は『ミュージックステーション』『関ジャム 完全燃SHOW』『イグナッツ!!』のプロデューサーを務める。

●浜崎綾
1981年生まれ、北海道出身。慶應義塾大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『堂本兄弟』『新堂本兄弟』『FACTORY』『僕らの音楽』『ピカルの定理』『水曜歌謡祭』などを担当し、現在は『FNS歌謡祭』『MUSIC FAIR』『KinKi Kidsのブンブブーン』『オダイバ!!超次元音楽祭』で総合演出・演出・プロデューサーなどを務める。

●木月洋介
1979年生まれ、神奈川県出身。東京大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『笑っていいとも!』『ピカルの定理』『ヨルタモリ』などを経て、現在は『新しいカギ』『痛快TV スカッとジャパン』『今夜はナゾトレ』『キスマイ超BUSAIKU!?』『ネタパレ』『久保みねヒャダこじらせナイト』『出川と爆問田中と岡村のスモール3』『バチくるオードリー』『人間性暴露ゲーム 輪舞曲~RONDO~』などを担当する。