皆様、年金は受け取る時期を先延ばしにすると、受給額が増えるということをご存じでしたか?いま平均寿命が延びてきて、働けるうちは働こうという考えで、65歳でも働く方が増えてきています。今回は年金の受け取りを70歳からにすると、具体的にいくら受給額が増えるのかを解説します。
繰り下げすることで受取額が上がる
年金は、基本的に65歳からの受け取りですが、受給の仕方には種類があり、繰り上げ受給と繰り下げ受給があります。繰り上げ受給とは60歳から64歳の間でもらうこと、繰り下げ受給は66歳以降から70歳の間でもらうことです。
もらえる年金は、繰り上げ受給をすると減り、繰り下げ受給すると増えます。
具体的にみると、
繰り上げする:1カ月に0.5%(令和4年4月分から0.4%)本来の年金が減少
繰り下げする:1カ月に0.7%増加
将来の年金も期待できなくなり、これから高齢でも働く方が多くなる現状をみて、これから繰り下げて年金を受給する人が増えるのではないかとも言われております。
繰り下げできる年金とできない年金
公的年金には、遺族年金・障害年金・老齢年金があり、種類によっては繰り下げしてもらうことができないものがあります。まず繰り下げできる年金は、老齢年金です。老齢年金とは所定の年齢に達することにより支給される年金のことで、老齢基礎年金と厚生年金の2種類があり、両方とも繰り下げてもらうことができます。繰り下げのタイミングは、2つを同時にすることもできますし、別々に繰り下げることもできます。
一方で繰り下げができない年金とは、亡くなった方の配偶者や子供が受け取ることができる遺族年金と障害状態になって働けなくなった方が受け取ることができる障害年金です。
繰り下げするメリット・デメリット
繰り下げして受け取るにはメリットとデメリットがあるので、そこをよく理解してどうするのかを決めていきましょう。
繰り下げ受給のメリットとは、もちろんもらえる年金が増えるということ。具体的には上記にもある通りに1カ月に0.7%もらえる年金が増えます。つまり長生きすればするほど、もらえる年金の総額も増えるのです。
対して、デメリットは何かというと、年金が増えるということは税金と社会保険料も同じように増えるため、手取りで実際に確認すると思ったより増えていないということになります。
70歳から老齢年金を受け取ったら
繰り下げ受給すると1カ月に0.7%もらえる年金が増えます。現時点では最長70歳までの繰り下げが可能です。増額率の最高は42%です。
実際に70歳から受け取ると、いくらもらえるのか、令和3年4月分からの老齢基礎年金の満額が78万900円ですので、こちらを元に計算してみましょう。
年金の年額が78万900円の場合:78万900円+78万900円×42%=1,10万8,878円
となるため、65歳時点で資金に余裕がある方やまだ現役で働かれていらっしゃる方は、繰り下げした方が、この超高齢化社会を乗り切るためには有効だと考えられます。
まとめ
このコラムでは繰り下げの年金についてお話させていただきました。繰り下げして受給すると、メリットもありますが税金や社会保険料の面でデメリットもあるので注意が必要です。
あと、2020年5月に成立した年金改正案により2022年4月以降に70歳を迎える人は最長75歳まで繰り下げできるようになります。75歳まで年金を繰り下げた場合には、年金額が84%増えることになります。
これから高齢化も進み、働く年齢も後ろ倒しになっていくと予想される中、繰り下げするかどうかは、今後検討することを避けられなくなってくる時代が来るでしょう。
この記事を執筆したファイナンシャルプランナー
髙上凛太郎(たかがみりんたろう)
所属:株式会社マネープランナーズ
2級ファイナンシャルプランニング技能士