年金は通常65歳からの受け取りですが、60歳~64歳の間に前倒しで受給を始めることもできます。この制度を繰り上げ受給といいますが、受給額が減ってしまうので注意が必要です。

今回は年金の繰り上げ受給でいくら減るのかについて解説します。繰り上げ受給にするかどうかは、経済状況と心身の健康状態を慎重に見極めて決めましょう。

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繰り上げ受給すると最大で30%減額される

繰り上げ受給とは、60歳~64歳での受け取りに前倒しすることです。現在は65歳から1か月繰り下げるごとに0.5%減額される仕組みです。

64歳11か月から受給: 0.5%減額
64歳10か月から受給: 1.0%減額

60歳0か月から受給: 30%減額

上記のように、最大で30%減額される計算です。この減額は一時的なものではなく、65歳を迎えてからも生涯にわたって続きます。

なお令和4年4月1日以降に60歳になる人は、減額率が改正され0.5%から0.4%に下がります。 よって改正後の最大の減額幅は24%です。

累計の受取額が逆転する年齢は?

繰り上げ受給は年金を受け取れるタイミングは早いですが、金額が減少します。よって累計の受給額については、通常の受給額がどこかのタイミングで追いつくことになります。

減額率0.4%の場合の追いつくタイミングは下記のとおりです。

繰り上げの開始時期 通常受給の累計額が追いつく時期
60歳0か月から繰り上げ 80歳10か月
61歳0か月から繰り上げ 81歳10か月
62歳0か月から繰り上げ 82歳10か月
63歳0か月から繰り上げ 83歳10か月
64歳0か月から繰り上げ 84歳10か月

※筆者計算

厚生労働省の「簡易生命表(令和元年)」によると男女の平均寿命はそれぞれ81.41歳と87.45歳です。 この寿命を基に考えるなら、女性は男性に比べて通常受給の累計額が追いつく可能性が高いと言えます。

人によっては繰り上げ受給をしたほうがいいケースもある

繰り上げ受給をすると減額は避けられませんが、人によっては早めに受給したほうがいいケースもあります。

体調を崩し、思ったように働けなくなる人もいます。60歳~64歳の間に年金を受け取れないと、貯金を取り崩すことになり、経済面で不安定になります。前述した累計額の逆転についても、あくまで平均寿命で見た場合での話です。

平均寿命まで長生きする自信がないなら、繰り上げ受給をしたほうが良いかもしれません。繰り上げ受給にするか通常受給にするかは難しい判断ですが、60歳を迎える頃の経済状況や心身の健康状態を見極めて、慎重に決めることが必要です。