現在放送中のTBS系連続ドラマ『婚姻届に判を捺しただけですが』(毎週火曜22:00~)で、思いを寄せる義姉・美晴(倉科カナ)への思いを断ち切るために清野菜名扮するヒロイン・明葉に偽装結婚を申し込んだ百瀬柊を演じている坂口健太郎。坂口と言えば、今年9月まで放送されていた連続テレビ小説『おかえりモネ』で、主人公・永浦百音(清原果耶)と愛を育んでいく医師・菅波光太朗を演じ、誠実であるがやや偏屈で視野が狭かった青年が成長していく姿を巧みに表現した。このように坂口は、キャラクターが変化していくさまをナチュラルに演じることに長けている。

  • 『婚姻届に判を捺しただけですが』で百瀬柊を演じている坂口健太郎

2014年に映画『シャンティ デイズ 365日、幸せな呼吸』で役者デビューした坂口。翌2015年に放送されたドラマ『コウノドリ』シリーズで、新生児科の新米医師・白川領を演じ、連続ドラマ初出演を果たした。本作はシーズン2まで放送され、白川自身も物語を通じて成長を遂げるキャラクターだったが、命に向き合いながら、なにが正しいかを真剣に悩み葛藤する繊細な芝居を見せた。白川先生は真面目で誠実という基本的なキャラクターに、松岡茉優演じる同期の下屋に対しては強気に出たり、ちょっと生意気な態度を見せたりというスパイスを加えながら、青臭くも成長していく姿に感情移入した視聴者は多かったのではないだろうか。

2016年には、自身初となる連続テレビ小説『とと姉ちゃん』に出演。この作品で、坂口は帝国大学で植物学者を目指す青年・星野武蔵を演じた。劇中では、丸眼鏡をかけ新種の植物を探すことに熱中するやや風変わりな学生を演じ、前年公開された映画『ヒロイン失格』や『俺物語!!』で見せたクールなイケメンキャラとはまったく違う人物を演じ、幅の広さを見せた。

星野はドラマの主人公・常子(高畑充希)にプロポーズをするも、結ばれず、一旦は物語から退場したが、2児の父親という立場で再登場。物語から離れている期間、星野には結婚、妻との死別、さらには戦争という大きな出来事があったが、直接的な表現ではなく、仕草や常子に向き合う視線などで、空白の時間になにがあったのかを視聴者に想像させるような芝居で、星野という人物の変化を体現していた。

その後、映画『君と100回目の恋』(2017年)、『今夜、ロマンス劇場で』(2018年)の恋愛作品で主演(両作品とも、女優とのダブル主演)を務めると、どちらも“時間”というギミックによって現れたヒロインに翻弄されながらも、自身の芝居で相手の心を変化させるという役柄を担った。

さらに、ドラマ『東京タラレバ娘』(2017年)では、金髪でクールながら毒舌の人気モデルKEYとして、ドSぶりを見せつけたが、その実は相手に対する思いやりがあり、“タラレバ”ばかりを言っている吉高由里子演じる倫子らを叱咤激励し、気づきを与えるキャラクターを好演した。

そのほかにも、映画単独初主演を務めた『仮面病棟』(2020年)では、監禁事件に巻き込まれた医師を演じたが、劇中では医者という倫理観に捉われそうなキャラクターを開放し、状況に応じて変化していく姿を表現し“人間味”溢れる人物を構築していた。