日本が世界に誇る大怪獣スター「ゴジラ」の生誕を祝う恒例イベント『ゴジラ誕生祭』のスピンオフ企画『東西ゴジラまつり』が、東京/池袋HUMAXシネマズで13日、京都/京都みなみ会館で14日に開催された。13日の上映プログラム、手塚昌明監督作品『ゴジラ×メカゴジラ』(2002年)と『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003年)の2作品にちなんで、機龍隊隊長・富樫二佐役で出演した俳優・高杉亘(たかすぎ・こう)を特別ゲストに招き、ゴジラファン大興奮のトークショーが行われた。

  • 富樫隊長を演じた高杉亘

本多猪四郎監督『ゴジラ』(1954年)の劇場公開日にちなんで、毎年11月3日は「ゴジラの誕生日」とされ、ゴジラファンによる『ゴジラ誕生祭』が開催されてきたが、あいにくの新型コロナウイルス感染拡大防止措置として、昨年(2020年)から通常開催を見送る形となった。その代わりとして、今年は東(池袋HUMAXシネマズ)西(京都みなみ会館)でゴジラの生誕を祝うスピンオフ企画が13日、14日の2日間にわたって催された。

池袋HUMAXシネマズで上映されたのは、2002年公開の『ゴジラ×メカゴジラ』と2003年公開の『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』の2作。両作品では、人類の脅威であるゴジラや数々の「特殊生物」に挑むべく、1966年に「特生自衛隊(対特殊生物自衛隊)」が発足した……という設定が作られており、防衛庁の協力によって隊員たちによる訓練の様子や各種設備などがリアルに描写されているのが大きな特徴となった。

特生自衛隊は最大の敵・ゴジラに対抗する戦力として、1954年に死滅した「初代ゴジラ」の骨をベースにして「3式機龍(メカゴジラ)」を開発。この機龍のオペレーティングをはじめ、対ゴジラ作戦の任務にあたるのが「機龍隊」である。『ゴジラ×メカゴジラ』の主人公は、戦闘機「AC-3しらさぎ」に乗り込んで機龍の遠隔操縦を行う特生自衛隊隊員・家城茜(演:釈由美子)。機龍隊の隊長を務める富樫二佐は、そんな家城をはじめとする隊員たちをまとめあげ、最前線で対ゴジラ戦の指揮を執る勇猛なリーダーとして描かれた。

司会進行を務める特撮ライター円山剛士の呼び込みで、大島ミチル作曲の勇壮な「機龍隊」テーマ音楽に乗って高杉がステージに登場。設定では、特生自衛隊が設立されてから今年(2021年)で55年という記念の年を迎えたこともあり、客席には機龍隊キャップを被った数多くの熱心な特生自衛隊/機龍隊ファンが集まった。彼らは現れた高杉の姿を見て歓喜にふるえ、熱烈な拍手で迎えていた。

『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年)のSAT指揮官・草壁など、強面の風貌とドスの効いた低音ボイスの魅力を活かしたいかつい役柄の多い高杉は、『ゴジラ×メカゴジラ』『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』の2作においても、持ち前の魅力で「厳しくも優しい」理想的上官の富樫を好演した。

「怪獣映画」との関わりを問われた高杉は「ほぼほぼ観てますよ。僕が子どものころは、東宝撮影所とか国際放映が家の近くだったもので、よく東宝のプールに忍び込んだりして遊んでました(著者注:50年近い昔の話です!)。近所で『太陽にほえろ!』の撮影とかもやっていて、そんな環境で育っていました」と、なかなかのわんぱく少年だった過去を懐かしそうに回想し、映画の撮影現場やスタジオに子どものころから親しんでいたことを明かした。

続いて『ゴジラ×メカゴジラ』出演の経緯へ話題が移ると、高杉は「当時、キャスティングプロデューサーの田中忠雄さんが、なぜかウチの事務所に来てくださって、出演オファーをいただいた。いまだに田中さんと会うと『お前みたいなヤツに、俺がわざわざ足を運ぶことなんて、なかなかないんだぞ』って、毎回言われます(笑)」と裏話を語った。

仲間ひとりひとりの長所を伸ばし、チームワークを重んじ、必要であれば総理大臣であっても面と向かって意見を述べるという富樫隊長の役柄について高杉は「チンピラみたいな役ばかりやってきたので、マジメな役ができるかなと思ったんですけど、自衛隊の方々のところにうかがって、いろんな体験をさせていただいたものですから、その方たちに恥じないように演じなきゃいけないなと思いました」と、本物の自衛官の方々に指導を受けた経験が富樫の役作りに活かされていると話した。さらに「さっと素早く敬礼した後、手をゆっくりおろせば、隊長っぽくみえる……なんてアドバイスしてもらいました」と、リアリティのある所作の具体的な例を示してみせた。

ここで『ゴジラ×メカゴジラ』および『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』で機龍隊・関根隊員役を演じた水野純一からの映像メッセージがスクリーンに映し出された。水野は「高杉さん、お久しぶりです」と挨拶した後「映画でいちばん覚えているのは、朝霞にある陸自駐屯地で数日間、訓練を行ったことです。匍匐前進をしたり、穴の中に飛び込んだり、けっこう過酷な訓練だったので、そこで機龍隊のメンバー全員がひとつにまとまったかなと思います(笑)。真夏の撮影だったのでものすごい暑さのなか、汗びっしょりになってやっていました」と『ゴジラ×メカゴジラ』の撮影に向けて、隊員役のキャスト全員が自衛隊の訓練を受けた思い出を語った。

続いて水野は高杉との共演について「抜群のオーラをお持ちでした。タッパ(身長)も大きく、顔もいかついでしょう。現場で僕や友井(雄亮/葉山隊員役)くんがちょっとダレた感じになっても、現場に高杉さんが入ってくると空気が引き締まったりして、芝居以外でも隊長のような雰囲気がありました」と、高杉をリーダーとした機龍隊のよき緊張感を懐かしく振り返った。

撮影時の思い出としては「同じころ僕は『仮面ライダー龍騎』に出演(仲村役)していて、友井くんは前年の『仮面ライダーアギト』でギルス/葦原涼を演じていたことで、お互い仮面ライダーの話題で盛り上がりました」と、作中でコンビを組んでいた友井とのエピソードを語った。また「しらさぎ」のコクピットから外に放り出されるシーンの撮影では「リアルな仕掛けでした。椅子が実際に持ちあがり、上からロープで引っ張られるのですが、一度やってしまうと元に戻すのが大変なので、撮影はやり直しのきかない一発勝負の緊張感がありました。高いところまで吊られて、怖かったですね」と、体当たりで挑んだことを明かした。

手塚監督については「すごくゴジラが好きなんだなあという印象です。演技指導をとても細かく、楽しそうにしてくださり、そのノリに自分も乗っていったという感じ。僕の母(水野久美/柘植総理大臣役)は昔『怪獣大戦争』(1965年)でX星人(世界教育者・波川女史)を演じていたのですが、母の出演シーンで机の上に当時の小道具が置かれるなど、細かなオマージュをされていたのも印象に残っています」と、ゴジラや東宝怪獣映画に深い愛をそそぎ、丁寧な人物描写を積み重ねて映画に感動をもたらす手塚監督の情熱と手腕を称えた。

水野のメッセージを受け、共演者との思い出を尋ねられた高杉は「主演の釈由美子さんは“不思議ちゃん”みたいなところがありましたけれど、とてもマジメに取り組まれていました。制服姿のときに見える“ふくらはぎ”がいいなあって、強く印象に残っています(笑)」と、家城茜を演じた釈の魅力を語った。

劇中では、戦闘機「しらさぎ」に乗り込んで隊員を指揮する富樫隊長。コクピットに座ったときの印象を問われた高杉は「各種スイッチとか、細かい部品などがしっかり作られていて、感動しちゃって撮影どころではなかった。もう、コクピットの中を隅々まで写真に撮りました」と、メカ好きな一面を見せた後、続けて「機龍隊のみんなが着けていたワッペンがあるでしょう。撮影が終了したあと衣装から外してもらって、全部もらいました。今でも残ってますよ。今日持ってくるの忘れちゃったな(笑)」と、今となっては貴重な「お宝」を残していることを明かした。これらの発言を聞いた円山は興奮気味に「いつかどこかで、資料としてファンのみなさんにご紹介させていただきたいですね」と言って、目を鋭く輝かせた。

今回の2作品のほかにも高杉は『ゴジラ ファイナルウォーズ』(2004年)で「空中戦艦・火龍(かりゅう)」の李翔(リー・シャン)艦長を演じ、上海に出現したアンギラスと戦っている。このときの役柄について高杉は「中国人の役なので、撮影前に中国語の先生を呼んで、必死になってセリフの練習をしたんです。ほんと一生懸命やったんですよ。そうして撮影が終わったら、数日後『日本語に吹き替えてくれ』って言われて、だったら最初から日本語でやればよかったんじゃないか!って監督に文句言いました。それが一番の思い出ですね。まあ髪をドレッドに編んでもらったりして、面白い撮影でしたよ。火龍の艦内セットもしっかり作られていて、素敵だった」と、映画が「言語版」と「日本語吹き替え版」の2タイプ上映される形式で、しかも日本語吹き替え版の上映館数のほうが多かったことへの複雑な心境を語った。

ここで円山は客席を見渡し「本日は機龍隊のキャップを被っているファンの方がたくさんいらっしゃるようです。みなさんは“心の機龍隊”と言っていいでしょう」としみじみ語ると、高杉は「じゃあ、みんなは僕の部下ってことですね(笑)」と言ってほほえんだ。このタイミングで、円山から「劇中での富樫隊長の名セリフを言ってほしい」とリクエストされた高杉は、資料課に左遷されていた家城茜を「機龍隊」に迎え入れる際に発した「3年半は、長かったな……」という人情味あふれるセリフと、機龍の再出撃を五十嵐総理に直訴する際の「我々の総意であります!」という決意のこもったセリフを披露して、客席から興奮に満ちた拍手を受けた。

続いて、富樫隊長の号令で観客全員が敬礼する『ゴジラ×メカゴジラ』の1シーンをほうふつとさせる「体験コーナー」も実現。起立した「心の機龍隊」隊員たちは高杉の発した「敬礼ッ!」に合わせ、ビシッと敬礼を決めた後、大きな拍手で感動を表わした。

『ゴジラ×メカゴジラ』『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』の2作を手がけた手塚昌明監督の印象を聴かれた高杉は「手塚監督は、間違いなく“ゴジラオタク”ですね(笑)。すごく優しい方で、怒ったところを見たことがなかった。とても素敵な監督です」と語り、手塚監督の演出手腕の高さと、ゴジラ&怪獣映画への愛情の強さを絶賛した。

最後の挨拶で高杉は「今日は『大きいお友だち』のみなさんに会うのを楽しみにしていました(笑)。みなさんがゴジラを愛しているのがとてもよくわかりましたし、僕もゴジラ映画に参加できて幸せに思っています」と語り、ゴジラ映画を愛する大勢のファンの熱意に触れた喜びをあらわにしていた。

『東西ゴジラまつり』2日目は京都みなみ会館で開催。モスラ誕生60周年を記念して『ゴジラVSモスラ』(1992年)と『モスラ』(1996年)の2作品が上映された。『モスラ』(1996年)の脚本を手がけた末谷真澄氏を特別ゲストに迎えてのトークショーも行われ、つめかけた「平成モスラシリーズ」ファンを喜ばせた。

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