『シン・ゴジラ』(2016年)『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2021年)などの大ヒット映画で知られる庵野秀明監督にスポットを当てた大規模な展示イベント『庵野秀明展』が、2021年10月1日より国立新美術館にて開催中である。ここでは開催に先がけて行われた合同記者会見『シン・仮面ライダー対庵野秀明展』と、マスコミ内覧会のもようをご紹介しよう。

  • シン・ウルトラマン、シン・ゴジラ、シン・仮面ライダーのそろい踏み。日本が世界に誇る特撮3大“ヒーロー”である

会見では、庵野監督が代表取締役社長を務める「株式会社カラー」文化事業担当・学芸員および「特定非営利活動法人アニメ特撮アーカイブ機構(ATAC)」事務局長の三好寛氏が登壇し、『庵野秀明展』開催の経緯を次のように説明した。2013年に『エヴァンゲリオン展』を主催していた朝日新聞社と、2012~2015年に『館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技』を主催していた日本テレビから、偶然にもほぼ同じタイミングで「庵野秀明氏の展覧会を開催したい」と打診があり、それならば別々ではなく共催という形で、大規模な展覧会にしようと話がまとまった末、国立新美術館での開催が実現したとのことである。

本展は「庵野秀明をつくったもの 庵野秀明がつくったもの そして、これからつくるもの」とキャッチフレーズにあるように、クリエイター庵野秀明の「過去」「現在」「未来」が見渡せるような構成がなされている。

「過去」は庵野監督が少年時代から現在に至るまで敬愛する漫画・アニメ・特撮作品にまつわる貴重な資料を一挙展示。さらに、縦3m×横15mもの巨大LEDスクリーンには膨大な映画、アニメ、特撮作品の映像が上映されており、真ん中に立って画面を観ているだけで巨大コンピューターの中に自分が組み込まれたような錯覚に陥ることができる。

「現在」は、庵野監督が大学~アマチュア時代に手がけた8mmフィルム(実写&アニメ)作品の上映や、貴重な原画&動画資料、総監督の庵野氏自身が「ウルトラマン」に扮した自主製作特撮映画の伝説的傑作『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』(1983年)のミニチュア(レプリカ)展示。そして『ふしぎの海のナディア』(1990年)『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)をはじめとする数々のアニメ作品の資料などが豊富に並べられた。

「未来」は庵野監督が立ちあげた特定非営利活動法人アニメ特撮アーカイブ機構=ATACをはじめとする、未来に向けたプロジェクトの紹介がメイン。最後のスペースには、『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』『シン・仮面ライダー』の大型立像がそろい踏みを果たし、絶好のフォトスポットとなっている。

総展示数は1500点以上と、非常に膨大な数であるが、庵野監督が「まだまだ展示数が足りないから、途中でどんどん増やしていきたい」と話しているように、期間中に追加の展示が増えていくようだ。

本展の入り口には、バンダイ発行の雑誌「模型情報」の企画で仮面ライダー1号(本郷ライダー)のスーツを身に着けた若き日の庵野監督のパネルが来場者をお出迎え。

東宝特撮映画の名作『モスラ』(1961年)の大判ポスターや東京タワーの精巧なミニチュアモデル、『海底軍艦』(1963年)の轟天号や、『惑星大戦争』(1978年)の宇宙防衛艦・轟天のミニチュアなどもある。

円谷プロが製作した特撮ドラマ『マイティジャック』(1968年)より、万能戦艦MJ号。中央に写っているのは劇中で使用された特大のミニチュアで、全長が約5.4メートルもある。

MJ号は展示スペースの中央に置かれており、さまざまな角度から眺めることが可能。メカニックファンにはたまらない空間だといえよう。

円谷プロが生んだ永遠のヒーロー『ウルトラマン』(1966年)。後方のウルトラマン(『帰ってきたウルトラマン』(1971年)で活躍)は現存する最古のウルトラマン・スーツであるという。

東宝映画『ゴジラ対メガロ』(1973年)のジェットジャガー飛行人形や、ピープロの特撮ヒーロー『スペクトルマン』(1971年)のマスクなど、各社混合の展示も賑やかで楽しい。

『電子戦隊デンジマン』(1980年)でデンジマンが乗り込む、陸海空を往く万能戦車デンジタイガー。80年代のテレビ特撮を支え、繁栄させた東映「スーパー戦隊シリーズ」のミニチュア展示は実に貴重。展示スペース内にはまだまだ東映特撮の展示があるので、ファンの方はぜひチェックしてみてほしい。

『シン・ゴジラ』(2016年)巨大立像。

現在製作中『空想特撮映画 シン・ウルトラマン』のヒーロー、ウルトラマンの勇姿。

『シン・仮面ライダー』立像。オリジナル『仮面ライダー』(1971年)の特徴だったレザー製ライダースーツのイメージを見事に継承している。

『シン・仮面ライダー』マスク下部分(クラッシャーと呼ばれる)の形状がよくわかる写真。後頭部からはみ出した毛髪が重要ポイント。

複眼の独特なカラーリングや、バッタの触角を模したアンテナの形状にも強いこだわりが感じられる。

タイフーン(風車)を備えた「変身ベルト」。50年前の『仮面ライダー』では、本郷猛がベルトの風車に風圧を受けることによって仮面ライダーに変身していたが、『シン・仮面ライダー』ではどのような変身プロセスが見られるのだろうか。いかにも風力を取り込んでくれそうな風車の形状がすばらしい。

『庵野秀明展』は2021年10月1日から12月19日まで、国立新美術館・企画展示室1Eにて開催中。

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