ラリータ:『新しいカギ』は、何でコント中心になったんですか?
木月:局の姿勢として、コント中心の総合バラエティを作ろうというのがあったんです。去年の夏に企画会議を始めて、できれば次の4月からレギュラーになる番組を作るというミッションがありました。
ラリータ:昔、(放送作家の)渡辺真也さんに「どうやったらフジテレビは元気が戻るんですかね」って聞いたら、「フジテレビはあの投げ方しか知らないから、あの投げ方が時代に合うまで待つしかないんだよ。それが良いところだ」って言ってたんですよ。
木月:我々もそれしか投げ方を知らないでしょうし、見てる側もそういうところがあるでしょうね。
樅野:フジテレビに求めてるものがあるからね。
ラリータ:フジテレビって、対演者さんのことをずっと教えられるんですよ。テクニックとかよりも、「お前、それじゃ名前覚えてもらえねーぞ」って言われるんです。
木月:演者さんにどう力を発揮していただけるかというのをすごく考える文化がありますよね。
ラリータ:だから日テレとかテレ朝の番組作ってと言われても作れない(笑)。でも『新しいカギ』は、ずっと続けてほしいですね。『脱力タイムズ』もずっとやってたことがつながったから。みなさん大変だとは思うけど。
木月:実はコント中心の総合バラエティって、長く続いてる番組がなかなかないんですよね。『ごっつ(ダウンタウンのごっつええ感じ)』が6年、『笑う犬』が5年、『ピカル』も3年なんです。
樅野:皆さんよく言われますけど、バラエティ番組ってゴールがないじゃないですか。終着点がない“おもしろ丸”という船で、1日でも長く航海できるように、漕ぎ続けなくちゃいけない。でも、こういう番組ができるのはありがたいですよ。子供の頃からフジテレビの土曜8時を見て育ち、芸人になって土曜8時で人を笑かしたいと思っていた少年が、47歳で土曜8時のチーフ作家になるんですよ。これ、誰か映画化しませんか?
(一同笑い)
ラリータ:検討しておきます(笑)
木月:ストーリーがありますもんね。チャイルドマシーンがあって、『Mステ(ミュージックステーション)』(テレビ朝日)からの作家スタート、どんな流れだっていう(笑)
樅野:いろいろあって紆余曲折ですよ。人生って面白いですね。
■“土8”でいろんな人の思いを背負って…
――土曜8時に移った『新しいカギ』のこれからの展望はいかがですか? SNSでは「コントをやらなくなる」なんてウワサもありましたが…。
樅野:ペース変わらずコント書いてますから!
木月:本当ですよ! どんだけコント作ってるか!
ラリータ:じゃあ変わらず、コントを中心にいろんなことをやるということですね。
木月:でも、世間はそういうふうに思ってるんだって新しい発見があったんです。昔の総合バラエティは、放送尺の全部コントをやってるっていう思い出になってるんですよね。『ごっつ』だって「THE TEAM FIGHT」というゲームコーナーをオープニングからやってたし、放送尺全てコントだけやってる番組ってほぼないんですよ。その記憶が『ピカルの定理』から8年くらいコント番組がない中で変わっちゃって、コント以外の企画をやると文句を言う視聴者がたくさんいるという感じになっちゃったんですよね。
樅野:急に厳しくなっちゃって、“コントポリス”がいっぱいいるんですよ(笑)。「おーいコントやってるか?」って見回りに来る。だから、番組を立ち上げたときとマインドは変わらずですよね。
木月:はい。実は演者本人たちも「放送尺全てをコントで埋めると、いくら面白いコントであっても視聴者が疲れてしまうからやめよう」と言っていて。コント以外の企画を番組のどの部分にどれくらいの面積で置くのがいいのか、日々試しながら放送しています。
ラリータ:反響はコントのほうが多いんですか?
木月:そうですね。力見力とか、子供だと「ぶっとび!飛美男くん」とか、最近だと「おさゆき」とか。コントは他の企画コーナーよりも、視聴者の方に深く刺さる感じがします。
樅野:SNSでもキャラクターの名前がやっぱり一番盛り上がってますよね。
木月:一方で(毎分視聴率の)グラフが上がるのは、コント以外の企画だったりするんです。考えるべきはそことのバランスですね。
樅野:よく番組作るときに「情報を入れないと」って言うじゃないですか。昔、渡辺真也さんが言ってて名言だなと思ったのが「面白いことが情報だろ?」って。カッコいいですよね。
木月:いやあ、そうなんですよ。笑いこそ、他のどこでも見たことのないオリジナルな情報なんです。
樅野:だから、コント番組は面白ければ見てくれるということを信じて作るしかないんですよ。ということで、土曜8時になっても大きな変化はないです。
木月:ただ、土曜日のほうが見やすくなるかなと思いますね。金曜日って忙しいじゃないですか。コントは集中して見ないといけないんで。
ラリータ:“土8”っていうのは、フジテレビ関係者には思い入れがあるからなぁ。
樅野:いろんな人の思いを背負ってるから、1日でも長く続けたいですね。僕らが学生時代に思ったように、この番組を見てワクワクした学生が「テレビっていいなあ」と思ってくれればいいですよね。
次回予告…~お笑いディレクター&放送作家編~<4> 『脱力タイムズ』誕生秘話…有田哲平の緻密さ&速さとは
●名城ラリータ
1976年生まれ、沖縄県出身。日本大学芸術学部卒業後、00年フジクリエイティブコーポレーションに入社。フジテレビのバラエティ制作センターに配属され、『笑っていいとも!』『SMAP×SMAP』『ココリコミラクルタイプ』『もしもツアーズ』『全国一斉!日本人テスト』などを経て、現在は『全力!脱力タイムズ』『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジテレビ)、『冗談騎士』(BSフジ)、『有田P おもてなす』(NHK)を担当。
●樅野太紀
1974年生まれ、岡山県出身。95年からお笑いコンビ・チャイルドマシーンとして活躍するも04年に解散し、放送作家に転向。現在は『ミュージックステーション』『しくじり先生 俺みたいになるな!!』『関ジャム 完全燃SHOW』『かまいガチ』『まだアプデしてないの?』『くりぃむナンタラ』(テレビ朝日)、『有田P おもてなす』『わらたまドッカ~ン』(NHK)、『有吉の壁』(日本テレビ)、『プレバト!!』(MBS)、『アウト×デラックス』『千鳥のクセがスゴいネタGP』『新しいカギ』(フジテレビ)などを担当。『しくじり先生』で第41回放送文化基金賞・構成作家賞、『両親ラブストーリー~オヤコイ』で第45回放送文化基金賞・企画賞を受賞。
●木月洋介
1979年生まれ、神奈川県出身。東京大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『笑っていいとも!』『ピカルの定理』『ヨルタモリ』などを経て、現在は『新しいカギ』『痛快TV スカッとジャパン』『今夜はナゾトレ』『キスマイ超BUSAIKU!?』『ネタパレ』『久保みねヒャダこじらせナイト』『出川と爆問田中と岡村のスモール3』『千鳥の対決旅』『人間性暴露ゲーム 輪舞曲~RONDO~』などを担当する。