注目の戦型は角換わり腰掛け銀に

豊島将之竜王に藤井聡太三冠が挑戦中の将棋のタイトル戦、第34期竜王戦(主催:読売新聞社)七番勝負第4局が11月12・13日(金・土)に山口県宇部市の「ANAクラウンプラザホテル宇部」で行われます。手番は決まっており、豊島竜王の先手番です。今期竜王戦七番勝負はここまで挑戦者の藤井三冠が3連勝しています。

■勝ちまくっている藤井三冠

藤井三冠については今さら何かを言うまでもないでしょう。「勝ちまくっている」その一言に尽きます。今期七番勝負が始まってからは他棋戦を含めて7勝1敗。敗れたのはNHK杯戦の深浦康市九段戦だけで、強敵相手にハードスケジュールをこなしながら、ここまでの勝ちっぷりは圧巻としか言いようがありません。第3局では豊島竜王に「どこでまずくしたかわからない」と言わしめ、▲3一銀~▲2二角というファンをうならせる攻めを披露しての快勝でした。

対する豊島竜王はまさに崖っぷち。もしこの第4局で敗れればストレートでの失冠となってしまいますが、豊島竜王はこれまでタイトル戦番勝負でのストレート負けを経験したことはありません。まずはここで一矢を報い、そして史上3度目となる3連敗からの4連勝という大逆転防衛にむけて足掛かりを作りたいところです。

■戦型は角換わり腰掛け銀に

ここまで、第1、2局は相掛かり、第3局は角換わりでした。現地大盤解説会の解説を務める大橋貴洸六段は角換わりを本線に、聞き手の村田智穂女流二段は相掛かりを予想していました。

11月12日の午前9時に対局が開始されました。注目された戦型は、先手番の豊島竜王が5手目に▲7六歩と角道を開けて角換わりを志向、角換わり腰掛け銀に進みました。第3局に続いての角換わりですが、第3局は角換わりの中でも相早繰り銀という急戦志向の戦型でした。本局は角換わり腰掛け銀で、わずかな形の違いが戦局に直結するため、開戦のタイミングを探り合う駆け引きが最初の見どころになります。

■細かい駆け引き

9筋の端歩を受けなかったのが藤井三冠の趣向。受けないのならばと豊島竜王は9筋の端歩を突き越します。この交換は一般的には玉のふところが広がるので、豊島竜王にとって終盤の貯金になります。これが貯金にならないような組み立てを藤井三冠は目指していくということでしょう。

駒組み中、豊島竜王は金を4九→3八→4八と動かし、藤井三冠は玉を4二→4一→3一と動かしお互いにわざわざ1手で進めるところに2手を掛けて駒を進めます。これが角換わり腰掛け銀特有の間合いの計り方です。受ける側は理想形で待ち構えたい、攻める側としては理想形から1手何かを指させたタイミングで仕掛けたいので、そのタイミングを自分に取って都合の良いように合わせるために、その数手前から間合いを計っているのです。達人の呼吸と言えましょう。

細かい駆け引きの末、11時前に藤井三冠が△6五桂と桂馬を跳ねて後手から開戦、いよいよ戦いの火蓋が切って落とされました。豊島竜王も▲4五歩と仕掛けて盤面全体が戦場になり、1日目の午前中にして早くも本格的な戦いが始まろうとしています。

本日は18時の時点で封じ手となり、本局の決着は翌13日の夕方頃になる見込みです。

相崎修司(将棋情報局)

対局前に駒を並べる豊島竜王(左)と藤井三冠(提供:日本将棋連盟)
対局前に駒を並べる豊島竜王(左)と藤井三冠(提供:日本将棋連盟)