手数料ビジネスとは、何かサービスを提供した代わりに手数料を受け取るビジネスのことです。金融機関やマッチングサービスなどでは主流のビジネスモデルですが、仕組みや種類がわからない方も多いでしょう。

この記事では、手数料ビジネスの仕組みを実例とともに解説。メリット・デメリットや手数料ビジネスの今後についてもまとめました。

私たちにとって身近な手数料を利用したビジネスモデルをくわしく知っていきましょう。

  • 「手数料ビジネス」とは

    手数料ビジネスの概要を説明します

手数料ビジネスとは

手数料ビジネスは企業がお客さんにサービスを提供する代わりに、報酬として手数料を支払ってもらうビジネスモデルのことです。企業とお客さんをマッチングさせることで手数料を得る業種も、手数料ビジネスに含まれます。

手数料ビジネスにはフィー型とコミッション型の2種類があり、手数料の算定方法が異なります。各タイプの違いについてみていきましょう。

フィー型の対象は専門的な作業

フィー(英語表記:fee)とは、「専門職へ支払う謝礼金や報酬、手数料」のことです。広告会社を例に出すと、印刷費用やデザイン費などがフィーに該当します。

手数料の対象は作業全体におよび、手数料の金額は作業数の増減にかかわらず一定です。サービスを提供する企業の仕事にかかる予算が予定より膨らんでも、提供したサービスにより依頼主の売り上げが大幅に伸びたとしても、基本的に契約時の手数料が変わることはありません。

コミッション型の対象は予算

コミッション(英語表記:commission)は、「依頼」や「頼みごと」、「委任された仕事」を意味する言葉です。対象は企業が依頼された業務全体で、手数料や成功報酬などの名目が使われます。

手数料の金額は、依頼主の予算や売り上げに一定の割合をかけて算出します。元の金額の変化に伴って手数料の金額も変わるため、売り上げなどに左右されるのが特徴です。

  • 「手数料ビジネス」とは

    費用をチェックすることが手数料の種類を見極めるポイントです

手数料ビジネスのメリット

手数料ビジネスには大きく分けて2点のメリットがあります。

低予算のサービスでも収益が見込める

フィー型を採用した手数料ビジネスでは、作業全体が手数料の対象であり、予算や売上高の大きさとは無関係です。つまり、依頼主の予算規模が小さい場合や売上高が低い場合でも、サービスの提供には一定額の手数料が発生します。

取引成立時に最低限の保障額、粗利を確保できる点は、フィー型手数料ビジネスのリスク低下につながるメリットのひとつです。

取引件数に応じて収入増

取引件数が増加することで手数料の総額が増え、収益もアップするのが、フィー型手数料ビジネスにみられるメリットのひとつです。多くのお客さんが使用してくれるサービスを展開する企業では、特に大きな利点となるでしょう。

手数料ビジネスで収益を上げるには、業務内容への需要を正しく見極めるのがポイントです。需要拡大の見込みがあるサービスであれば、フィー型を採用してみると収益がグッと上がる可能性があります。

  • 「手数料ビジネス」のメリット

    収益を大きく増やすには予算規模と取引件数のチェックが欠かせません

手数料ビジネスのデメリット

手数料ビジネスが企業にもたらす結果は、良いものばかりではありません。手数料ビジネスのデメリットも知っておきましょう。

値引き交渉に発展

手数料ビジネスには取引の際、顧客から手数料の値引きを迫られるケースがあります。とりわけ有形サービスよりも無形サービスの方が多いです。

例えば、不動産の売買や賃貸契約時に発生する「仲介手数料」が挙げられます。取引する不動産の金額によっては手数料だけで100万円以上になり、端数の値引きを相談されることがあります。

仲介手数料のみが収益源の企業にとっては非常に大きなデメリットといえるでしょう。

予算規模やコストによっては損をすることも

事業の予算や売上金額によってはコミッション型のほうが手数料による収益が高くなる可能性があります。

コミッション型の手数料は、予算あるいは売り上げに一定料率をかけた額です。予算や売上が上がるほど手数料の増額が見込めるため、手数料が一定のフィー型を選択するよりも収益が伸びることがあります。

また、予算を超えるほど作業コストが膨れ上がった場合も要注意です。赤字予測の段階で取引するため、依頼を受けた企業が不利になる恐れがあります。売上高が伸びる事業に限られますが、コミッション型の方が取引自体を有利に進められるでしょう。

  • 「手数料ビジネス」のデメリット

    フィー型とコミッション型を上手に選択することが大切です

手数料ビジネスを取り入れている業種は?

手数料で収益を上げるビジネスモデルは、現在さまざまな業種で行われています。いくつか例をご紹介します。

マッチング

マッチングとは、需要と供給が合致した企業や個人の間を取り持ち、手数料を受け取るビジネスモデルのことです。代表的なのは人材紹介業で、一般的には求職者の年収の35%前後が紹介手数料となります。

出会いを求める人々に機会を提供するマッチングアプリも、マッチングビジネスのひとつです。

金融

金融業では、各業務の経費に基づいて算定された手数料を収益とするビジネスが展開されています。主な手数料には、他行への振込や送金時に発生する振込手数料、振込手続き完了後に発生した組み戻し業務にかかる手数料などです。

コンサルティング

コンサルティング業では企業が抱える問題解決のために情報を収集するなどし、代わりに手数料(コンサルティングフィー)を受け取ります。

コンサルティングフィーは同一の契約形態でも大きく変わります。また、コンサルティング会社(コンサルティングファーム)の規模やスキルなどによっては、差額が10倍を超えることもあるようです。

コンサルティング業はスキルや人材確保などにかかる費用が高額になりがちで、難しい課題になればなるほど、コンサルティングフィーを含めた料金も高くなります。

広告

広告業における手数料ビジネスとは、広告の制作や運用を行い、手数料を受け取るビジネスモデルのことです。手数料率は15~20%が一般的。広告の制作費用や人件費の他、掲載枠の獲得に必要な経費などに手数料が発生します。

  • 「手数料ビジネス」の業種

    多岐にわたる業種で手数料ビジネスが採用されています

手数料ビジネスの実例を紹介

手数料ビジネスに対する理解を深めるため、実際に手数料を利用したビジネスモデルが採用されているケースをみてみましょう。

M&A

M&Aは「Mergers and Acquisitions」の略で、合併買収の意味です。着手金や中間金、成功報酬などが手数料に当たります。

とりわけ銀行が行うM&A業務は規模が大きい傾向にあり、手数料が高額になりがちです。メガバンクだと特に大規模になるため、より金額が高くなります。

ATM・ネットバンキング

ATMでは引出や振込を含む取引に対する手数料が銀行の収益です。1回の取引で発生する手数料は数100円程度と安く、時間によっては無料となります。ネットバンキングも振込手数料はATMと大差ありません。

ATMもネットバンキングも1回の手数料は少ないですが、人件費を大幅カットできる点が大きなメリット。取引件数を増やすことで貴重な収益源になるでしょう。

代理店制度

代理店制度とは、企業が販路拡大に向けた営業を外部委託する制度のことです。委託先となる代理店では、企業の代わりに商品をお客さんに販売して利益を出します。手数料は商品の販売数に応じて得られる仕組みで、代理店が設定することも可能です。

ビジネスマッチングサービス

ビジネスマッチングサービスは、企業のニーズに沿う情報や技術を持つ取引先を紹介するサービスのことです。企業間の面談が実現したときや、商談成立や取引開始時の成功報酬を手数料として得るビジネスモデルとなっています。

ファンドラップ

ファンドラップは、投資家から預かった資金を運用または管理し、手数料を受け取るサービスを指す言葉です。資産残高に一定料率をかけて算定した金額あるいは成功報酬が手数料になります。

  • 「手数料ビジネス」の実例

    身近なサービスにも手数料ビジネスを採用したケースは多いです

手数料ビジネスの今後の展望

さまざまな業種や企業が導入している手数料ビジネスですが、今後はどのような流れを辿っていくのでしょうか。いくつかの業種を参考に考えてみましょう。

銀行の貴重な収益源となり得る

日本の銀行は現在、手数料を含む非営利収入の増額に力を入れつつあり、引き続き同様の流れは続くと考えられます。

収益力の改善に向けて、銀行は人件費の見直し・削減を考えているところです。人件費なしで振込や預入などができるATMは、まさに低コストで手数料を得られる貴重な取引手段といえるでしょう。

場所も時間も選ばないネットバンキングも安定的な手数料を得られるため、同じく需要の高まりが予想されます。

証券会社はフィー型へ転換

証券会社では、コミッション型からフィー型へとビジネスモデルを移行する動きが加速しています。転換にかじを切った要因は、手数料引き下げの激化などによるものです。

フィー型ビジネスのための新部署の設立や新サービス導入に向けて、各社取り組みをみせています。

職業紹介は転職・再就職の増加で発展する

日本社会の流れやグローバル化により、職業紹介業は今後も市場規模の拡大が推測されます。

昨今の日本では女性や高齢者の求職・雇用が増えており、将来への不安からキャリアアップに前向きな人も多いです。海外進出する企業の人材採用も増加傾向にあると考えると、利益率の高い職業紹介業の未来は明るいといえるでしょう。

手数料ビジネスは拡大傾向に

手数料ビジネスは金融業のみならず、多彩な分野に利益をもたらしてきました。将来を見据えて、フィー型ビジネスモデルへの移行や強化に取り組む業種も増加しています。

一定以上の取引件数を満たせば利益につながるため、安定的な収益を確保しやすいのも大きなメリットです。手数料ビジネスは今後さらなる発展を遂げると予想されます。

  • 「手数料ビジネス」の展望

    手数料ビジネスの今後に期待が高まります

今後も広がり続ける「手数料ビジネス」

手数料ビジネスとは企業がサービスを提供することで、顧客から各種手数料を得て成立する仕組みです。企業は利益を生むために、取引件数や予算状況などを考慮してフィー型とコミッション型を選択します。

手数料ビジネスは現在金融業をはじめ、マッチングサービスや各種代理店を含む多くの業種が実施しています。手数料ビジネスについて理解を深め、今後のキャリア形成に役立ててみてはいかがでしょうか。