三菱UFJ銀行は2021年9月2日に、資産形成の 総合的なサポートを目的としたスマートフォンアプリ「Money Canvas」を2021年12月から提供すると発表しました。

スマホ上で"幅広い金融商品・サービスの中から、自分に合ったものを選んで組わせることができます"と銘打っています。

しかし既存の金融サービスは、すでにスマートフォン上で利用できます。見かけだと、今更感がありそうですが、どのような違いがあるのでしょうか? また、Money Canvasの特徴は何でしょうか? 本記事でまとめました。

既存のスマホバンキングと何が違うのだろう……?

下図は三菱UFJ銀行のスマートフォンアプリの画面です。メニューをよく見ると、銀行で行なう預金サービスに加え、証券やクレジットカードといったサービスメニューが並んでいます。

Money Canvasが掲げる“自分に合った資産形成プランを描き実現するための資産運用“は、このアプリでも実現出来るのでは?と思いませんか。

  • 三菱UFJ銀行のスマホアプリ 引用元:三菱UFJ銀行スマートフォンアプリ

グループ企業を中心に他社の金融商品も使って、利用者にはたらきかけるサービスに

プレスリリースによればMoney Canvasには以下の3つの特徴があります。詳しく解説します。

  • 三菱UFJ銀行は、資産形成の 総合的なサポートを目的としたスマートフォンアプリ「Money Canvas」を2021年12月から提供する

    Money Canvasの3つの特徴 引用元:[Money Canvas プレスリリース/三菱UFJ銀行](https://www.bk.mufg.jp/news/admin/news0902_2.pdf)

特徴1:スマートフォンを起点とした日常使いできるサービス

 冒頭で紹介した三菱UFJ銀行のアプリは、金融サービスへの用事があるときに使いますが、Money Canvasでは、ニュース記事など、お金に関する情報を積極的に配信。利用者の日常生活、つまり金融サービスに用事が無いときの利用を促しています。

  • Money Canvasの利用イメージ 引用元:Money Canvas プレスリリース)

  • ニュースから金融サービスに誘導する先行例:日興フロッギー 引用元:[日興フロッギー/SMBC日興証券](https://froggy.smbcnikko.co.jp/)

ニュースやコラム記事から金融サービスへ誘導する仕組みは、すでにSMBC日興証券が「日興フロッギー」というサービスにて行なっています。“記事から株が買える投資サービス“と銘打ち、2021年9月現在では、証券取引への誘導が主です。 もし、その他の金融サービスへの誘導があれば、Money Canvasと似たようなサービス展開になるでしょう。

特徴2:資産形成スタイルの確立をサポート

Money Canvasには、リスク許容度の診断機能があります。

リスク許容度とは、資産運用を行なうときにどの程度のリスクを取れるかを指標値で表したものです。リスク許容度が大きいと利益が得られる可能性も損する可能性も高くなります。

  • リスク許容度の例(ウェルスナビの場合) 引用元:[ウェルスナビ](https://www.wealthnavi.com/contents/column/47/)

Money Canvasとの連携を発表している、資産運用サービスウェルスナビでは、5段階で投資家のリスク許容度を測定します。利用者の適切なリスク許容度がわかると、資産形成の進め方に役立つというわけです。

特徴3:協働先と共に幅広い金融商品・サービスを提供

現状での金融サービスのスマホアプリでは、自社で提供するサービスのみの利用が前提。「仲介」と称し、他金融機関のサービス利用を促す場合もありますが、基本的に自社の金融商品をスマホから利用するのが主です。

一方、Money Canvasでは、複数の金融サービスを1つのスマートフォンから使えるように、まとめています。

どのようなサービスがあるのでしょうか。

  • Money Canvasで提供予定の商品・サービス一覧 引用元:[Money Canvas プレスリリース/三菱UFJ銀行](https://www.bk.mufg.jp/news/admin/news0902_2.pdf)

商品視点では、株式投資や保険商品への連携が主です。 サービス視点では、トヨタやソフトバンクなどの上場企業の株取引ができるauカブコム証券や、ポイントを使った新しい投資体験ができるSTOCK POINTなど、様々なサービスとの連携を予定しています。

金融サービスが提供されればされるほど、我々の選択肢が増えていき、資産形成に役立つといえるかもしれません。

日常生活に金融サービスを溶け込ませる世界観はなぜ必要か?

金融機関も営利企業だから利益を拡大したいというのは大前提です。

“老後の生活資金に対する備えや、将来に向けた計画的な資産形成が一層重要"と三菱UFJ銀行が述べているように、資産形成に必要な投資を促す必要があります。

世界的に有名な金融機関「フィデリティ」の調査(https://invest-navi.fidelity.co.jp/static/japan-invest-navi/survey-report/10000-business-people.pdf)によれば、「公的年金以外に必要な退職後の生活資金総額」では、公的年金でのみ生活できると答えた人は4.8%(2020年)です。

一方、同調査では、投資している人は40.5%となっているので、「老後資金は足りていないが、投資をしていない」ギャップがまだまだあります。

こういう人はそもそも金融サービスに積極的に利用していない仮定のもと、三菱UFJ銀行は“日常接点を増やし、End to Endで資産形成をサポートする"としています。

  • 投資家比率(投資をしている人の比率) 引用元:[新たな資産形成の流れ~2000万円問題の功罪とコロナ禍の影響~/フィデリティ](https://invest-navi.fidelity.co.jp/static/japan-invest-navi/survey-report/10000-business-people.pdf)

ビジネスパーソン1万人に対してフィデリティが実施したアンケート調査の結果。投資をしている人は増え始めていますが、まだまだ少ないと言えます。

2019年に金融庁が発表した「老後2000万円問題」では、連日のように、新聞やウェブメディアがにぎやかになりました。みんな実は、資産形成をしなければならないと気づいています。中には、収入が少なくて満足のいく投資ができていない人もいるでしょう。

しかし、銀行が積極的な姿勢を見せれば見せるほど不信感が増す可能性があります。 「銀行が、『この金融商品』おすすめですよ」と言われたとき、読者の皆さんはどう考えますか?

こういった負の感情や考えを、いかにユーザーにいただかせないか。が、Money Canvas普及のカギとなりそうです。