パナソニックサイクルテックは、国内市場における電動アシスト自転車の需要増に対応することを目的に、柏原工場(大阪府柏原市)の生産体制強化に伴う設備投資を実施。環境負荷低減型の新設備の稼働を開始した。

  • パナソニックサイクルテック柏原工場(大阪府柏原市)

これに伴い、ドライブユニット搭載のショッピングモデルで業界最軽量化した電動アシスト自転車「ビビ・SL」が同工場の新設備で生産され、今年12月3日より発売することを発表した。

  • 業界最軽量の電動アシスト自転車「ビビ・SL」

「世界的に自転車需要は拡大」

近年、出荷台数は2018年度68万8,000台、2019年度71万1,000台、2020年度82万1,000台と年率約9%で伸長している電動アシスト自転車市場。

コロナ禍の継続、さらなる高齢化社会へのシフト、カーボンニュートラル社会への変革などが潮流となり、2021年度以降も引き続き、電動アシスト自転車総需要の成長が見込まれている。

「当社の電動アシスト自転車の2016年から2020年の販売概況では、昨年度は新型コロナウイルスの影響によって生産・販売活動が制限されましたが、過去最高の販売を達成。2016年度から2020年度の年平均成長率も12%と、電動アシスト自転車のリーディングカンパニーとして市場拡大を牽引しています」とは、パナソニックサイクルテックの稲毛敏明社長。

電動アシスト自転車へさらなる注目が高まるなか、同社の出荷台数はショッピングモデル、通勤・通学モデル、小径・ファッションモデルなどが牽引するかたちで、業界水準以上で伸長したと語った。

「昨年度の当社の出荷台数ベースでは特に通勤・通学モデルは前年比124%、日常の足として活躍する小径ファッションモデルも都市部を中心に前年比127%と大幅に伸長しています。2021年の市場を取り巻く環境やトレンドは海外でも同様で、今後も世界的に自転車需要は拡大していくと考えています」(稲毛社長)

同社ではこうした需要増に対応するため、柏原工場の生産能力を拡大し、3割増の出荷に対応可能な体制に強化。生産から供給におけるリードタイムの最小限化を図るとともに、生産時の水資源やCO2排出などの環境負荷を低減させる。

環境配慮型の設備で、品質と量産性も確保

柏原工場のリニューアルでは大きく、「新ドライブユニット『カルパワードライブユニット』の生産設備の立上げ」「ロボットを駆使した自動溶接設備の導入」「節水型被膜処理設備の導入」「粉体塗装設備の導入」の4つがポイントとなっている。

「新ドライブユニット「カルパワードライブユニット」の生産設備」と「ロボットを駆使した自動溶接設備」の導入は、主に自転車業界の高い成長率に対応した生産能力向上に向けた取り組みだ。

「人作業の工程を可能な限り自動化し、省人化を達成しています。徹底した工程管理による品質確保と組立の自動化で、従来比最大180%と高効率生産を実現しました。また、最新の自動溶接設備の導入で、溶接の一連作業を自動化。従来と比較して130%以上に生産能力を向上させ、安定した品質と省人化を果たしています」(稲毛社長)

  • ロボットを駆使した自動溶接設備

また、「節水型被膜処理設備」と「本体塗装設備」によって環境配慮型のモノづくりを推進。同時に品質と量産性の確保の両立を図った。

「フレーム塗装の前工程である被膜処理する工程では、劇薬を使わない工程の具現化に至り、フレーム被膜処理プロセスをシャワー方式から、薬液に浸すディップ方式に変更。パイプ内部までムラのない均一な被膜処理ができるようになり、全自動ライン化によって他品種にも柔軟に対応できる生産体制を構築しました」(稲毛社長)

被膜処理の工程では、工程内で発生する再利用可能な水を使い車体についた薬品を洗浄するエコ排水システムを採用する。

  • 節水型被膜処理設備スプレー圧洗浄(置換水洗)

従来工法比で使用水量を32%削減するほか、粉体塗装設備の導入でVOC(揮発性有機化合物)排出ゼロ化を実現した。

「従来の溶剤塗装では3コート3ベイプでしたが、今回の粉体塗装では極めて難易度の高い1コート1ベイプ(一度塗り、一度乾燥)で完結させます。有機溶剤を使わないので人体や環境へ優しい生産体制です。粉体塗料の難点として色の再現性の問題がありますが、研究により、1コート塗装で20色以上のカラーリングと美しい外観品位を可能にしました」(稲毛社長)

粉体塗料は安全性に優れるだけでなく、フレームに付着しなかった塗料を回収利用できるため、塗着効率90%と他の塗料を使う工法より塗料ロスが極めて少なくなり、工程の合理化にもつながるという。

1グラムまでこだわった設計で、業界最軽量を実現

電動アシスト自転車はモーターのアシストにより快適に移動ができる反面、一般的な自転車と比べ車体が重く、駐輪時の持ち上げや押し歩き時の取り回しのしづらさが課題とされてきた。

開発戦略担当統括部長・中田充生氏は2年強かけて開発され、柏原工場の新設備で生産される電動アシスト自転車「ビビ・SL」について紹介。

「2軸モーターで業界最軽量2.8 kgのカルパワードライブユニットを搭載し、"ママチャリ"と言われるショッピングモデルの電動アシスト自転車の完成品としても業界最軽量の19.9kgと、ダブルの業界最軽量を達成しました。素材や部品などゼロから設計を見直すことで軽量化を図り、駐輪時の持ち上げや押し歩き時の取り回しのラクさ、軽やかな乗り心地を実現しています」

  • 電動アシスト自転車「ビビ・SL」

アナログ回路を減らし、デジタル方式を取り入れて部品点数も減らすなど、質量を減らしながら強度を下げない工夫で、従来の軽量モデル「ビビL」と比べても3キロほど軽くした。特に軽量化で大きく寄与したのが、パワフルな出力を維持しながら従来のドライブユニットと比べて約24%(約900g)の軽量化に成功したカルパワードライブユニットだ。

その搭載に伴い、新たなアシスト制御「カルパワーアシスト」も開発。シーンに応じた最適なアシスト力を実現した。

  • 新設計のかるらくアルミフレームは、乗り降りのしやすさに加え、サドル位置をやや後ろに後退させ、乗車中の膝の曲げ伸ばし負荷を軽減する

「カルパワーアシストの特徴は主に3つあります。1つ目は上り坂でのスムーズでパワフルな乗り心地。上り坂でのペダリングを滑らかに力強くアシストし、ラクに坂道を登ることができます。2つ目は急発進を防ぐ安心の漕ぎ出しです。漕ぎ出し時に加わる負荷を判断し、出力を調整するので坂道や荷物があるときにはパワフルに。平地や荷物がないときは優しくアシストします。3つ目は中速域からの乗り心地の快適さで、従来のドライブユニットではスピードの伸びが物足りなかった中速域からのアシスト力をプラス。平坦な道でのスピードの伸びを向上させました」(中田氏)

「カルパワードライブユニット」と「カルパワーアシスト」を搭載した電動アシスト自転車は通勤通学モデル「ティモA」、子乗せモデル「ギュット」シリーズからも2機種が12月3日より発売予定だ。

  • 通勤通学モデル「ティモA」

  • 「ギュット・クルームR・DX」

  • 「ギュット・クルームR・EX」

  • 2022年2月4日より「カルパワードライブユニット」「カルパワーアシスト」を搭載した「ビビ・L」(上)、「ビビ・L・20」(下)も発売予定