5歳の「ぼく」と子犬の「リク」を中心に命の尊さを描くアニメーション映画『リクはよわくない』が、10月1日より全国公開される。原作絵本のストーリーを手がけ、動物好きとして知られるタレントの坂上忍に本作や動物たちへの思いを聞いた。

  • 坂上忍

原作絵本は、動物バラエティー番組『坂上どうぶつ王国』(フジテレビ系)で共演するお笑いコンビ・野性爆弾のくっきー! にイラスト制作を依頼。2020年4月に刊行されて人気を博し、映画化のオファーが舞い込んだ。

「編集者の方から『映画化の話があるんですけど』と言われ『えっ!?』となりました。映画化にあたってスタッフさんとお話したんですけど、それでもいまいちピンと来なくて。ストーリーをどうするか固めていくうちに『あっ、本当に映画になるんだ……!』と少しずつ実感が湧いてきました。ここに来るまで丸1年かかりました。コロナ禍なので打ち合わせもZoomでしたり、いろいろデータでもらってやり取りしたりしました。表でテレビ番組に出ながら、裏でこういう作業をしていました」

自宅で犬と猫を計22匹飼う坂上。原作絵本に込めた思いは、亡くなった愛犬リクとの思い出や、彼ら動物たちとの日々の暮らしを経た実体験にもとづく。

「『バイキング』(フジテレビ系)で幼稚園のロケに行かせていただいて、そのとき、見よう見まねで子どもたちに読み聞かせをしたら、食いつくように話を聞いてくれる。絵本の力ってすごいですね。僕が絵本を作るなら『動物かな』と思いました。ただし『動物かわいいよ』だけの話ではなく、子どもが読むからこそ『動物飼うのは大変なんだよ』とか『動物飼うと必ず別れが来る』『失敗するとこういう後悔も生まれるんだよ』と伝えたかったです」

アニメ化にあたって心がけたのは「口を挟まないこと」だと話す。「もし僕が書いた小説が実写化されたら、けっこう口を挟んでいると思います。実写だと、僕は脚本・監督・カット割り・キャスティング……と全部の仕事がわかる。『少しでもより良いクオリティのものにしたい』という欲がきっと出てきます。一方アニメはわからない。僕は絵が描けるわけではない。そんな僕が口を挟まない環境をどうやって作るかと考えたら、信頼している方に丸投げする選択肢しかなかったんです。僕の中では、それがくっきー! しか見当たりませんでした」

『リクはよわくない』では、リクを含め、坂上の愛犬5匹が登場する。くっきー! を「信頼した」と言いつつ、本音はどうだったのか。

「正直、僕は飼い主で毎日見ているから『ん!?』というのはありました(笑)。でも丸投げすると決めたから、言ったのは大きさだけ。『マルちゃんはフレンチブルドッグなのでもうちょっと大きいです』とかパグゾウとのバランスとか少し言っただけ。『ん!?』と思ったところがあったとしても言ってないです。ただ不思議なもので、作業が進んでいくと、だんだんそう思わなくなってくるもんですね。ラフ画1枚だけだと『ん!?』と思っても、何枚も見て積み重なっていくと、そこにはくっきー! ワールドが存在する。丸投げして本当に良かったです」