五代役には、俳優ディーン・フジオカ自身の人間力がにじみ出ているし、吉沢とディーンからも、役柄同様の“同志”のような関係性が反映されているような気もする。

吉沢が1年間、大河ドラマの座長を務めることについてディーンは「そう簡単なことではないと思います」とリスペクトする。

「やはり頑張って! と応援したいという気持ちが強いです。僕はただ、自分の出番のシーンだけを撮って行くので、毎回時間を置いて参加するという形ですが、そこで彼と再会した時、息抜きにでもなればいいなあとも思っています。だから待ち時間に、あまり堅苦しい話などはせず、好きなゲームなど、他愛もない話をしたりしています」というのはディーンならではの気遣いだ。

加えて、海外でもキャリアを積んだディーンならではのグローバルな見方も頼もしい。「もちろん『青天を衝け』という作品を作るうえでも、彼は同志ですし、いわば参加者全員がそうだとも思っています。もっと大きくいえば、それは日本が生み出すコンテンツの1つで、今後も蓄積されていくし、過去の作品からバトンタッチされて今がある。そういう意味では、日本語でエンターテイメントの仕事をしていて、その日本語の影響力が全世界において少しでも大きくなるほうが、誰にとってもウィンウィンな関係になると思っています。そこは、五代や渋沢という明治の時代を作った人たちのやってきたことともオーバーラップする部分があります」

また、2作品で演じた五代役は、ディーンにとってどういう存在になったのかと尋ねると「人生において、同じ役を違う番組で2度演じられるというのはなかなかない経験で、まさか、そういう幸運に恵まれるなんて、考えてなかったです」としながら、「自分ではまだ、あまり客観視できていないのかもしれませんが、自分にとって五代友厚という歴史上の人物との出会いは、とても大きなものです。今も現在進行形で、気づきを与えていただいていますし、すごく影響も受けています」と特別な思い入れを口にする。

「言ってみれば、会ったことはないけどすごい恩人のように、恩義を感じるべき対象の人物だと思っています。自分は朝ドラで五代役を演じるまで、五代友厚という存在を知らなかったのですが、その後に彼の偉大な思想や生き様を知れたので、そういうものがより多くの人に伝わって、インスピレーションになればいいなと思います。だから今、自分に何ができるのかという意味では、とにかく全力を尽くすだけです」

■ディーン・フジオカ(Dean Fujioka)
1980年8月19日、福島県生まれ。香港でモデル活動を経て、2005年に香港映画『八月の物語』の主演に抜擢されて俳優デビュー。台湾を拠点としたアジア中華圏や北米などで映画やドラマ、CMなどに出演。2015年のNHKの連続テレビ小説『あさが来た』で人気を集め、翌年にアルバム『Cycle』やアニメ主題歌「History Maker」でも話題に。ドラマではフジテレビの『推しの王子様』(21)が放送中。映画の待機作は、自らが主演、企画、プロデュースの映画『Pure Japanese』が2022年1月28日に公開決定、主演ドラマを映画化した『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』が2022年公開予定。自身最大となる日本ツアー『Musical Transmute』が開催中。12月に3rdアルバム『Transmute』をリリース予定。

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