フランスの国民的名優、ベルモンド逝く。あの笑顔が見られないと思うと非常に悲しい。「映画を見るなら、娯楽映画! ハリウッドもフランスもインドもok」という御徒町晴彦もさすがに落ち込んでいるようで……。
広島:亡くなっちゃいましたね、ベルモンド。悲しいですか?
御徒町:そりゃ、世代だからね。「ねえ、ベルモンド派? アラン・ドロン派?」みたいな会話を女の子としてたぐらいだから。ちょっと前にでた『ボルサリーノ』のデジタル・リマスター版、高かったけど買ったし
広島:じゃあ、追悼記事を……
御徒町:そうなんだけど、オレ、アラン・ドロン派だし、ガリガリ君食べるのに忙しいからさ、キミ書いておいてよ
広島:え!?
御徒町:じゃあ、あとはよろしく~
ガリガリ君ピンクグレープフルーツ味を食べながら帰ってしまった……。しょうがない、拙文ながら書いてみます。
ジャン=ポール・ベルモンド、1933年4月9日生まれ。フランスを代表する国民的人気俳優。9月6日に88歳で亡くなった。同月9日には、政府主催の追悼式が営まれ、マクロン大統領をはじめ、多くのファンが別れを惜しんだ。映画『勝手にしやがれ』のヒットで一躍スターに。同時期に人気だった2枚目俳優、アラン・ドロンと人気を2分した。
世界一の美男子と称された、アラン・ドロンの造形美と対比するためか、ベルモンドを「2枚目半」と評する人もいるが、それはどうかな。鼻は丸いし、アゴは割れてるけど、クリクリ目とチャーミングな表情、そしてなんといってもおしゃれな雰囲気があった。もし、アラン・ドロンとベルモンドが合コンにいたら、モテるのはベルモンドなんだろう(同席した女性全員が鼻血ブーで倒れちゃうと思うけど)。
ライバルとはいっても、アラン・ドロンとは交友はあったみたいで、名作『ボルサリーノ』では共演もしている。両雄並び立たずなんてこともなく、互いに良さを引き出しあっていている。映画を愛する者同士、同級生みたいな意識があったのかな。そうだったらいいな
一方で、出世作を撮影した監督のゴダールとは、ソリがあわずたもとを分かっている。メインストリームの映画を否定する、ヌーヴェルヴァーグの手法が肌に合わなかったようだ。たくさんのお客さんを映画で楽しませたいっていう、気持ちでいっぱいの人だったんだろう。
その後は、自らがプロデュースもして、アクション映画に多数出演。ハリウッド作品では味わえない、フランス映画ならではのそこはかとないスタイリッシュな雰囲気の中、びっくりするような危険なシーンをスタントなしで演じた。演じるキャラクターは、チャーミングでひょうひょうとしていながら、キメるところはキメる。でも美女に見ると、ついつい鼻の下がのびて……。
と、ここまで読むと思い当たるキャラクターが浮かぶでしょう? この雰囲気、まさに『ルパン三世』。実はベルモンドの雰囲気をアニメに落としこんだのが『ルパン三世』で、類似点がたくさんある。まぁベルモンドの吹き替えをしてたのが山田康雄さんなんだから、いかに意識されていたかがわかるというもの。ほかにも、寺沢武一先生の『コブラ』なども影響を受けているものと思われる。
しかし、彼がすぐれたアクション映画に出演していた1980年前後から、日本はハリウッド映画に席巻され、彼の映画はあまり公開されなくなってしまった。だから、ルパン三世の元ネタってことも、あまり知られていないのかも。
最近、映画評論家の江戸木純さんが仕掛け人となり、彼の映画がまた観られるように、上映会が催されたり、作品のBOXセットが発売されたりしている。特に劇場で彼の作品が観られるのは貴重な機会になる。お近くの劇場で開催されるようなら、ぜひ足を運んでみてほしい。劇場リストはこちら。
ジブリ作品や『ドラゴンボール』などの超人気作品は言うに及ばずだが、『UFOロボグレンダイザー』や『キャンディ・キャンディ』などの昔のアニメも、フランスでは大人気だった。あまりに普通に人気すぎて、自国のアニメだと勘違いしている人もいたようだが、今は日本発のアニメだとみんな知るようになり、SNSなどのポストでリスペクトを送ってくれている。海の向こうで日本の作品を好きでいてくれる人がいるなんて、なかなかいいものだと思う。
だからもし、『ルパン三世』や『コブラ』が好きなら、ぜひベルモンドの『大頭脳』あたりの作品をチェックしてほしい。なぜ彼がここまで愛されていたのかが、すぐにわかると思う。ベルモンド本人にしたって、お悔やみの言葉を言われるより、映画を観てもらえる方がうれしいはずだから。