僕が初めてジェフ・ベックを聞いたのはワイヤードが発売された頃の小学6年の年だった。なんだか、FMラジオの紹介で大絶賛だった。でも、僕は聞いても最初はあまりピンとこなかった。

  • つい、去年まで精力的にツアーを続けていたのに…… (C)BANG Media Internationa)

それまで僕のギターヒーローはなんといっても、ブラックモア、エース・フューレイ、ブラッド・ウィットフォード、ジョー・ペリー、ジミ・ヘンドリクスだから、「わかりやすいロック」しか聞いてなかったのだ。

「オトナ過ぎる……」

くらいの感想だった。しかし、当時僕の音楽の羅針盤だった高校生の従兄弟の家に遊びに行ったとき 「これ、ベックの最新アルバム、ワイヤード、いいだろう?」と聞かされてもまだピンとこないと僕は言った。(きっとレッドブーツが苦手だったのだと思う)すると従兄弟は 「じゃあ、こっちはどうよ? これのが聞きやすいかもね」と「ブロウ・バイ・ブロウ」を掛けてくれた。

  • (左)「ワイアード」1976年5月発売、(右)ジェフベック「ブロウ・バイ・ブロウ」1975年3月29日発売。ともにエピックレコードジャパン

そこで、出会ってしまったのだ。「スキャッターブレイン」に。なんという不思議な音階。なんという早さのパッセージ。今までよく耳にしていた大好きなギタリストたちとは明らかに違う指使いだった。それからは取り憑かれたように「ブロウ・バイ・ブロウ」を聞き続けた。特に「スキャッターブレイン」はポンコツながら耳コピで弾けるようになった。300回くらいは一気に聞いただろう。

後に自分が好きで弾くのはやっぱり、エースだったりブラックモアだったりとわかりやすさを好む僕だったが、ジェフ・ベックはいつも最大級の別格として君臨していた。

だいぶ大人になり、ベックとクラプトンの来日をさいたまスーパーアリーナで見たけれど、すでにクラプトンはピークを終えており省エネモードだったのに比べ、ベックは若い頃と変わらないカロリーでギターを縦横無尽に弾き飛ばしていた。

今でもあの演奏は耳に残っている。

ジェフ・ベック、1944(昭和19)年生まれ、2023年1月10日没。享年78。奇しくもデヴィッド・ボウイ(2016年1月10日没)と同じ命日でした。不世出のギタリストのご冥福をお祈りします。

ジョニー・デップとの曲はシンプルなロックですごく好きでした……

───*───*───*───*─── (BANG SHOWBIZより配信)

1960年代にエリック・クラプトンに代わりヤードバーズのギタリストとして名声を手にしたジェフ・ベック、その後ロッド・スチュワートらと共にジェフ・ベック・グループを結成した。その革新的な音楽で1960年代から、ポール・マッカートニーやジミ・ヘンドリックスなど数々のアーティストに影響を与えたジェフ・ベックだが、フィードバック奏法について生前こう話していた。「あれは偶然だったんだ。64、5年頃、大きな会場でプレイしていた。PAに不備があって、俺たちが音量を上げたら、フィードバックが起こったのさ」「制御可能だったからそれを使い始めたんだ。一度ヤードバーズでスタインズ・タウン・ホールでやった時、ある人から『あのへんなノイズはあるべき音ではなかった? 俺だったら、あの音をキープするぞ』って言われて、『もちろん意図的な音さ。余計なお世話だね』ってなったのさ」

1969年に交通事故で頭蓋骨を骨折し活動を一時休止したベックだが、ソロ アーティストとして変わらない活躍を70年代も続け、ジョージ・マーティンをプロデューサーに迎えアルバム『ブロウ・バイ・ブロウ』を発表する。ナイル・ロジャースやミック・ジャガーとのコラボレーションも話題となったベックは、生涯で8度のグラミー賞を受賞、2009年にはロックの殿堂入りも果たした。

そんな偉大なギタリストの死に多くの著名人が追悼の言葉を発表、ジェフ・ベック・グループで活動を共にしたロッド・スチュワートはこうツイートしている。「ジェフ・ベックは別次元だった。60年代後半に俺とロニー・ウッドをジェフ・ベック・グループとしてアメリカに連れて行き、それから俺たちは後ろは振り返っていない」「ライブでプレイする時、俺の歌を聴きながら反応してくれる数少ないギタリストの1人だった。ジェフ、君は本当に素晴らしかった。色々ありがとう」

また、ザ・ローリング・ストーンズのミック・ジャガー(79)は「世界で最も偉大なギタリストの1人」と称賛、ロニー・ウッド(75)は「ジェフ・ベックが逝った。俺のバンド兄弟がこの世界を去った。寂しくなるだろう」と綴り、他にもキッスのジーン・シモンズ(73)、ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソン(80)ら著名ミュージシャンらが追悼の言葉を寄せた。

更に2016年に友人となり昨年はジョイントアルバム『18』でツアーを一緒に回ったジョニー・デップ(59)はジェフが亡くなる際、ベッドの傍にいたとされており、本人のバンド、ハリウッド・ヴァンパイアーズから追悼の言葉を発表している。