おいしい料理を作るために経験者を選んでいる

もしあなたが料理を始めたばかりで、できるだけおいしい料理を作りたいと思った時、どのような行動を取るだろうか。

おそらく、初心者でも簡単に作れる料理の基本を分かりやすく解説してある見やすい本を買ってきて読んだり、料理レシピの豊富なサイトから手の混んでいない比較的初心者でも作りやすい調理方法を紹介している人のレシピをみたり、動画サイトから作りたい料理のレシピを探し出して上手に教えてくれる人の動画を選択して見るのではないかと思う。

これらの共通点は、全て経験者から学ぶということであり、あなたは無意識にそういう選択をしているものだ。

  • 投資をうまく行うには?

最初は見様見真似で中々うまく行かないだろうが、ある程度のところまでできるようになると、さらに上手になりたいと思う人も多いだろう。今は女性だけなく、男性が料理教室に通うケースも増えているそうだ。その昔は花嫁修業で料理教室に通う女性が多かったが時代は変わったものだ。今も昔も一緒なのは、料理上手になるためには料理教室に通うということ。これはとてもいい選択だ。

では、料理教室を選ぶときにどういう基準で選んでいるのだろうか。教えてくれるのはどんな先生か、期間や料金がどのくらいか、どんな料理を教えてくれるのか、通って人からの評判はどうかなど、幾つもポイントがあるだろう。

どれも重要な要素だが、先生選びは上位なはずだ。例えば先生が料理歴半年の人で、3ケ月(6回コース)で料金が10万円、教えてくれる料理は魚の焼き方、目玉焼きの作り方、ご飯の炊き方、みそ汁の作り方、そうめんの茹で方というものだったら通いたいと思うだろうか?

少なくとも私は通わない。3ケ月(6回コース)10万円で教えてくれる料理メニューを考えるとあまりにコスパの悪さが目立つ。しかも教えてくれる先生の料理経験が半年というのだから、そもそもお金を払ってまで料理を教わりたいとは誰も思わないだろう。

実はポイントはここにある。習い事に通うのであれば、どんなことでも実践的な経験を積んでいる先生に教わりたいと思うのではないだろうか。経験の乏しい先生にお金を払って教わりたくないと思うのは誰でもごく自然のことなのだ。

投資の学校選びも他のスクールと一緒

これは料理教室に限ったことではない。絶対に取得したい資格の学校に申し込んだら、講師はその資格を未保有で講師歴もなかったらどう思うだろうか。また自動車教習所に通ったら、そこの教員がドライバー歴1年未満だとしたらどう感じるだろうか。どちらも通う生徒は不安で仕方がないはずだ。

投資の習い方も実は一緒で、実績と経験を持ち合わせた講師から教わるのが一番投資上手になる近道といえる。投資となるとこの部分に目が行かない人が実に多い。投資未経験で実績もない先生から教わり、安心して何を学べるだろうか? そう考えれば最初に何をするべきことはもうお分かりだろう。投資スクール選びは講師陣の経験や質を選択材料の最初にするべきだということだ。

こうしたことに気付かないと、例えば講師の見た目だけで決めたり、費用の安さに惑わされたりと、本来のスクール選びからかけ離れた選択をしかねない。この点は要注意だ。

そしてもう一つ付け加えるならば「儲かる株を教えます!」とか「短期で利益を出す方法を教えます!」、「今日からあなたも楽をして不労所得を得る方法!」というような甘い誘惑のキャッチコピーに乗らないように。高額な学費を払うことになるだけだ。

インプットしたらアウトプットすることの大切さ

話を料理教室に戻そう。料理の基礎を学べば、次は実践だ。どんなに経歴が立派で教え方が上手な先生から伝授された料理も、実際に作ってみると思い通りに行かないことも良くある。同じ食材、同じキッチン道具で、同じレンジを使っても、経験者と全く同じようにはいかない。そこには経験値がプラスされるからである。

あなたが料理を上手になるためには、実践の場で経験値を積んでいく必要があるということだ。経験を積まずにその道の先生並みの料理がいつでも作れるわけがない。誰が考えても当たり前の話だと気が付くだろう。

これは投資の世界でも同じことが言える。経験豊かな優れた講師から役立ちそうな教えを受けて、その知識を多くインプットしてだけでは宝の持ち腐れだ。そのインプットした知識を元に、今度はアウトプットすることが何よりも大事だということを忘れてはならない。

加えて言うならば、人は覚えたことを忘れる生き物だ。常にインプットし続けることを忘れてはならない。

料理の世界も投資の世界も習うばかりではなく、習ったら実践を重ねて経験を積むことが大切になってくる。もちろん、学びは継続することは言うまでもない。

知識を得ることはリスクを回避する一番のクスリ

あなたも私も人間だ。完璧などはない。投資の経験を重ねても、時に予想もしない出来事に遭遇することがある。株式投資をしていたら、世界経済の煽りから株価が急落して資産が目減りすることがあるかもしれない。しかし、そうした予想もしない出来事はいつやってくるかも分からないし、時期が不明でも未来にも間違いなくやってくるはずだ。

もし、こうした状況に見舞われた時、経験者の多くはチャンスと捉える。なぜならば、本来なら下落する理由のない銘柄の株や投資信託を今のうちに安く購入することができることを経験や学びのなかから知っているからだ。上手な投資家は視点も感覚も一味違うものだ。

もう一度繰り返すが、投資の世界は予期せぬ出来事がいきなり降りかかることがある。知らないでは万一の時に焦るばかりで対処もできない。さまざまな角度から金融経済の知識や過去の歴史から学べば、リスクを回避する上でも大きな特効薬となるはずだ。

継続は力なり。学びも経験も必ずあなたの力となり自信となる。

最後に、袖振り合うも多生の縁というが、あなたにこれまで5回の私の記事を読んで頂いたことに心から御礼申し上げたい。

あなたのこれからの投資における何かきっかけとなったのであればとても嬉しい限りである。そしてあなたの資産がこれからもより成長していくことを心から祈るばかりだ。

著者プロフィール:市川雄一郎(いちかわ・ゆういちろう)

グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP。MBA/経営学修士。日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。テレビ、新聞、雑誌等のメディア活動経験も豊富。主な著書に『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え』(日本経済新聞出版)がある。