もし1日1万円を得られるならば、次のうちどちらが良いか? 1つ選択してほしい。

A.好きな時間に起床し、好きなように時間を過ごしながら一日1万円貰える
B.朝から晩まで仕事をして一日1万円もらう

AとBのうち、あなたの答えはどちらだろうか。これは聞くまでもないだろう。自由なことをしてお金を得られるのであれば、あなたや私だけでなく、そして殆どの誰だってAと答えるに違いない。しかし世の中はそんなに甘い世界ではないと心のなかでは分かっているはずだ。

  • 投資は身近なところから

楽して成功した人など存在しない

起業して、その会社を大きくして財産を築き、プライベートジェットに乗ったり、豪華な食事をしたり、高級車に乗ったりする人は世の中にたくさんいる。彼らが楽をしてこの財産を得たのかと言えば、それは大抵の場合はNOだ。

会社を作って小さな事業を一から育てるのは大変なものだ。社会に必要とされるまでには人並みならぬ努力を重ね、寝る暇を惜しんで仕事をしてきた時期が必ずあったに違いない。つらい時期も、夢を描き、仲間とその夢を語らい、未来を変えたい一心で、来る日も来る日も仕事に没頭した結晶が、企業の成長と創業者の財産を築きあげたたことつながっているのだ。

人を騙してお金を稼いだりする人は捕まり、法律によって裁かれ、そしてその悪行によって得た財産は全て失うことになる。楽して儲けようなどと考えるべきではないし、そんな方法は決して存在などしない。そんな方法があるのなら、誰もお金で困ることはなくなり、貧困な生活をする人はいなくなる。そして世界中の全員が、裕福に暮らせているはずだ。

にもかかわらず、おいしい話についつい乗ってしまい、財産をなくす人が後を絶たない。楽をしたいと思う欲のある人がいなくならない限り、こういう人はこれからもなくならないだろう。

投資は身近なところにヒントが有る

私が20年以上前に、こんな話を聞いたことがある。米国に住む80代のある老婦人の話だ。彼女は夫に先立たれ、子どもらも独立し、残されたマイホームでひとり暮らしをしていた。そんな彼女の趣味は無理をしない投資だった。今のようにインターネットが盛んではない頃で、彼女の情報源はスーパーと毎朝届く新聞だ。

スーパーに行く度に彼女は目に付く商品を細かく確認し、気に入ったら購入する。そして、買い物をした日には、夕飯後に必ず行う日課があった。それは購入商品の確認で、しかも品物ではなくて「品物を製造している企業」のチェックだった。

日常使いするため買ってきた商品の、製造元について自分なりに詳しく調べるのが楽しかったそうだ。情報を得る材料は時折テレビのニュースも見るが、基本的に新聞だった。ニュースや株価などの情報収集を自分の分かる範囲で行う。

そして、その調べた企業が自分にとっていいなぁ、誰かにもこの商品を勧めたいなぁ……と思えたり、またこの企業はまだ伸びそうだなぁと思えたりしたら、その企業の株を購入するという方法で株投資を続けていた。

シンプルだが、実に明確な投資方法だ。因みに彼女はこの方法で、毎年平均13%程度の投資成果を上げていたそうだ。

あなたもコンビニやスーパーへ買い物に行ったことがあるだろう。商品をあなたに買ってもらうために、販売側も実は戦略があることをご存知だろうか。

同じようないろいろの商品から、特に買ってもらいたい商品、売れ筋商品というものは、商品陳列棚の「ある位置」に置いてある。どこかというと、歩行中に目線の行くあたり、つまり目の高さあたりなのだ。

ここは想像の域だが、彼女はここまで知り尽くしていたわけではないだろう。しかし結果的に米国の老婦人の視点は正しかったということだ。データからも買い物客の胸から肩の高さが最も商品に目線が行きやすいことが分かっており、顧客が無意識に手に取りやすい位置なのだという。

この位置をゴールデンゾーンと呼ぶそうで、販売側からすれば最も販売力の高い場所となるので、粗利益の高いもの、売りたい新商品などが置かれることが多い。つまり、ここが売れ筋商品の特等席となるわるわけだ。

投資はシンプルに行いたい

ここまで読んだあなたにとって、投資が難しそうで、どのような銘柄に投資をしていいのか分からなかったとしても、また、まったく株投資の経験がなくても、投資を身近に感じることができるのではないだろうか。

まずは買い物へ行き、目に付く売れ筋商品の中で、特に自分が買いたいと思う商品の企業の情報を確認してみる、ただそれだけだ。シンプルだが日常生活の最も身近なところから得られる投資の情報源の1つになるだろう。

他にも普段使う通販で、どんな商品をあなたやあなたの家族は好んで購入して使っているのか、またよく行くスーパーが上場していたら、そこにお客さんが常にたくさんいるのかどうか、こんな視点で興味を持つことからで十分だ。

こうした身近な情報源で調べた企業が上場していたら、その企業のことを少しだけ詳しく調べてみよう。

例えば、最近のニュースや売れ筋商品が何なのか、ここ3~5年位の売上はどのくらい成長をしているのか、利益はどうか、配当は出しているのかなど……自分にとって難しくないレベルで調べればいい。

最小限のことだけ言うが、売上は大事だ。売上がなければ、どんなに頑張っても利益がないからだ。このレベルの情報は概ね企業のホームページのIR情報という投資家のためのページがあるので、そこで確認をしてみるといいだろう。

そして余裕があれば同業他社と比較してみるとなお良いだろう。ほんの少し手間暇をかけた分、納得できる情報を入手でき、あなたにとって応援をしたい、または応援したくなる、そんな企業銘柄が見つかるかも知れない。

まずは日常の身近なところに目を向けてみる。そうすれば投資は決して難しいものではないのだと感じるはずだ。投資はシンプルに行いたいものだ。

著者プロフィール:市川雄一郎(いちかわ・ゆういちろう)

グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP。MBA/経営学修士。日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。テレビ、新聞、雑誌等のメディア活動経験も豊富。主な著書に『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え』(日本経済新聞出版)がある。