――自らの進む道について、仲間と意見が割れてしまった兵士型ヒューマギア・ソルド20(演:鳴海唯)に対し、唯阿が自身の「正義」を語るシーンが、本作ならびに『仮面ライダーゼロワン』のテーマを如実に表していましたね。重要な言葉のやりとりを行った鳴海さんの印象はいかがでしたか。

鳴海さんとは、あまりお互いの役についてのお話はしていませんでした。それぞれの役の思いを芝居でぶつけ合った印象です。ソルド20はヒューマギアなので、学んだことしか知らないピュアな部分があります。鳴海さんのお芝居は、まっすぐ相手の目を見るところとか、すごく素敵でしたね。唯阿としては、ソルド20が思っている「正義」を100パーセント受け止めつつ、人間だからこそ伝えられる「正義」を全力でぶつけたいと思って、演技をしていました。相手がヒューマギアだからこそ、ちゃんと自分の信念を伝えなければならない。なぜなら彼女たちは、間違ったことでもラーニング(学習)してしまうので、相手の目を見つめながらシンプルな言葉で伝えないといけないと、強く意識しました。

――バルキリーに変身するのも本作で最後になりますが、変身シーンを撮影してみて何か感じ入るところがあったりしますか。

もうこれで「変身」は最後になるのかな……と思いながらやっていましたね。今までずっと『ゼロワン』の撮影に携わってきて、バルキリーへの変身はいつでもやれるもんだ、みたいな感覚があったんです。どこかありがたみというか、特別なんだという気持ちが薄れてきていたのかもしれません。最後の変身のとき、これでもう変身はできないんだと思った瞬間、唯阿でいることが急に愛おしくなり、切なくなりました。どんなことでも「永遠」なものなんてないんだと痛感しました。

――劇中で仮面ライダー滅亡迅雷と戦ったバルキリー/唯阿が大怪我をして戦線離脱するシーンもありましたね。

大怪我のメイクなどは、テレビシリーズでもけっこうやっていたので、そのあたりはわりと慣れていましたね。傷を体につけてもらうことによって、どこを攻撃されていたのかが明確にわかりますし、演技をする上でも、どこに痛みがあるのかがはっきりするのでありがたいんですよ。強化形態の「ジャスティスサーバル」になって滅亡迅雷と戦ったときは、筧(昌也)監督たちから「今、唯阿はどの部分を痛めて、どれくらいの損傷があるのか」を変身解除前に細かく教えていただきました。腹にダメージがあるのか、足なのかで動き方や芝居の仕方が変わってきますから……。こういった“つながり”の部分は、1年間の撮影でかなり学びましたね。

――今後も、アクションシーンのある作品に出演してみたいと思いますか。

もともと運動するのは好きでしたし、アクションには抵抗がなかったほうなんですが、『ゼロワン』でアクション部の方たちと本格的なアクションを経験したことで、「もっとやってみたい!」と欲が出てきましたね。映像で、戦っている自分の姿を見たりすると「あっ、カッコいいかも」って思ったりもします(笑)。それは撮影スタッフさんがカメラワークとか、いろいろな技法で私を唯阿としてカッコよく見せようとされた結果ではあるんですけどね。自分のやったことが、目に見えて「成果」としてわかるのはとても嬉しいので、今後もアクションはやっていきたいです。せっかく1年以上も仮面ライダーを演じてきたわけですし、これだけで終わりというのはもったいないですから。普通のOLの役などももちろんやりたいですけれど、自分がやれることはぜんぶやりたいと思っているんです。

――井桁さんが『ゼロワン』に携わる以前と、現在とでは意識の面でどんなことが変わりましたか。

出演が決まる前までは、『仮面ライダー』がどういうものなのか全然知らなくて、漠然と「小さな子どもに向けた番組」だと思っていたんです。でも、実際に役を演じてみて、緻密に計算された内容であるとか、プロの撮影スタッフの方たちが120パーセントの熱量を注いでいるとか、子どもたちだけでなく大人にも楽しんでもらえる工夫をされていることを知り、それだからこそ、長い間大勢の人から愛されているんだと理解しました。とても内容の深い、いいドラマを作ろうと、みなさんが努力しているんです。そこまで計算されているの?と驚かされたこともたくさんありました。今となっては、『ゼロワン』スタッフのみなさんと一緒にお仕事ができてよかったと思います。ものづくりの原点に立ち、さまざまなことを学ばせてもらいました。

――ファンの方たちからいただいた言葉の中で、強く印象に残ったものとは?

第33話で、唯阿が垓に「辞表パンチ」をお見舞いした回の放送のあと、唯阿と同じようなストレスとかしがらみとか悩みを抱えている女性の方たちから「唯阿さんから勇気をもらいました!」というコメントをいただいたんです。そのとき、『仮面ライダーゼロワン』という作品を通じて、現実を生きる人たちに勇気とか感動とか、さまざまな感情を伝えることができたんだと知って、嬉しい気持ちになりました。

――女性の仮面ライダーである唯阿だからこそ描くことのできる“強さ”や“苦悩”などの感情描写が、女性ファンの心をつかまれたのではないかと思います。

女性が仮面ライダーになる意味とは?を常に考えて、女性ならではの境遇をしっかりと伝えられたらいいなと思って演技をしてきたので、そういう部分を感じ取ってくださり、わかっていただけると、自分としても「思いが伝わった」と喜びを感じます。

――最後に、作品を楽しみにしているファンのみなさんにメッセージをお願いします。

『仮面ライダーバルカン&バルキリー』は『ゼロワン』の最後を飾るにふさわしい素敵な作品になっていますので、ぜひお楽しみください。エンディングではTVシリーズ初期のあるシーンの映像が流れます。筧監督は「長い間ずっと『ゼロワン』を応援してくださったファンの方たちに、キャストのみんなが“成長”していった過程を共有してもらいたかった」と、演出意図を話してくれました。そんな監督の思いがとても嬉しかったですし、改めてファンのみなさんに感謝の気持ちを伝えたいです。この作品を観ていただければ、私たちの成長を感じ取っていただけると思いますし、ファンのみなさんがいてくださったからこそ、ここまで唯阿を演じて来られたんだなあと実感しています。今まで、本当にありがとうございました。そしていつの日にかまた、刃唯阿として『仮面ライダー』の世界に帰って来ることができれば嬉しいです!