――キャスティングについてお聞かせください。まずは五十嵐家のみなさんからお願いします。

一輝役の前田拳太郎さんはまったくの新人でしたが、オーディションですごく印象に残ったのは、とても「姿勢がいい」ところでした。これってけっこう大事なことで、彼が芝居をしているときの佇まいが、素人っぽさを補ってあまりある、芝居を2割増、3割増に魅せる立ち姿だったんです。今後の成長によって、そこにテクニカルな部分や経験値がのっていったら末恐ろしい俳優になるのではないかと、今から期待しています。

また、一輝の長男で世話焼き気質、つまりお節介という設定が、キャラ付けのためにその部分を誇張するとけっこう嫌な感じになってしまうのですが、前田くんが演じると「まああいつが言ってんならしょうがねえか」という気持ちになり、何故か好感度が下がらない。言葉で説明できないんですけど、主役の資質の1つですね。それをすでに持ち合わせていて、さらに求めているキャラクター像にぴったりの逸材に出会えて幸運だったと思っています。

大二役の日向亘くんは、こちらも逸材で、演技しているのを見て『仮面ライダーW』(2009年)の菅田将暉くんを想起したほど。何事にも素直に取り組み、光と陰を共存させている雰囲気が、大二役にピッタリ合っていると思いました。前田くんを一輝役に想定したとき、弟としてバランスを見ると、実は日向くんしか考えられませんでした。大二は非常に難易度の高い役なので、若いながらもいろいろな作品に出演している日向くんの経験値にも期待して、満場一致で決定しました。

さくら役の井本彩花さんは、もう完璧すぎて(笑)何のコメントもありません。おそらく僕以外の方が審査員だったとしても、彼女が選ばれたんじゃないでしょうか。黙っているとキリッとした顔つきなのでクールで話しかけ難い感じもあるんですが、しゃべるとごく普通の高校生っぽい雰囲気と、親しみやすさが出てくるのギャップがとても可愛らしくて、反抗期なんだけど、実は家族思いで優しいというさくらにはピッタリでした。

お父さんの元太役・戸次重幸さんは、いつかご一緒にお仕事をしたいと思っていた方のひとりでした。以前から度々お声がけをしていたのですが、お忙しいためなかなか実現せず、このたび念願叶った思いです。『魔進戦隊キラメイジャー』(2020年)の博多南無鈴役・古坂大魔王さんの時もそうでしたが、「この人がいるだけで、番組がパッと明るくなる」という役者さんはいそうで中々いない、非常に稀有な存在です。

お母さんの幸実は、五十嵐家の中心にいる「真のヒロイン」的存在であり、みんなお母さんが大好き。よって、憧れの存在として演技にもビジュアルにも説得力が欲しかった。そこで百瀬AP憧れの存在としてラブコールが実り(笑)、映美くららさんにご縁をいただきました。予想以上に美男美女家族になりましたね。

――続いて、デッドマンズを束ねる3人についてお願いします。

デッドマンズの女王アギレラ役の浅倉唯さんは、さくら役のオーディションで「すごくいい人がいる!」と目について、候補に残していたんです。でも、あの童顔に騙されまして……彼女の年齢をちゃんと認識しておらず、実際は高校生の役をやってもらうにはちょっと大人すぎましたね。そこで、可愛い小悪魔方向にキャラクターを修正したアギレラを演じてもらったら、もう一同大絶賛。最初の構想では、例えば菜々緒さんが演じられるようなクールで大人の女性キャラだったのですが、浅倉さんが演じることでフワフワした愛らしさを含んだアギレラになっています。

オルテカ役の関隼汰くんは、オーディションで「ナルシスト」っぽい役を演じてもらったとき、いちばん芝居がハマったのが決め手となりました。高めの声と、貴族のようなビジュアル……とても印象に残りやすい武器を備えてますね。

フリオ役の八条院蔵人くんは演技経験が豊富な上、とても良い感性を持っているので、3人の芝居の部分では彼が支えてくれるだろうと期待しています。ユニークな髪型にしてもらいましたけれど、顔が小さくてスタイルが良く、とてもカッコいいんですよ。

――政府直属の特務機関「フェニックス」の天才科学者ジョージ・狩崎が「大の仮面ライダーファン」だという設定も興味深いです。演じる濱尾ノリタカさんも仮面ライダーへの愛の強さを熱烈にアピールされていましたが、濱尾さんが仮面ライダーファンだということが起用につながったのでしょうか。

バイスタンプに歴代仮面ライダーの意匠が混ざっているという玩具的な設定の部分に割と頭を悩ませまして…仮面ライダーの要素を組み込んだアイテムを作る人(科学者)ってどんなヤツだ?と何周も考えてたどり着いた結論が、それはもう「仮面ライダーが大好きなヤツ」であろうと。

で、試しにオーディションで「仮面ライダー愛がものすごく強い科学者」を想定した役を演じてもらったんですよ。確か『仮面ライダードライブ』『仮面ライダー鎧武』『仮面ライダーエグゼイド』の写真を見せて、この中から1人選んで1分間、まるで恋人を紹介するかのようにライダーへの愛情をアピールしてみせてという内容で(笑)。何かのお題について自由に1分間話して、というのはよくあるんですけれど、それを仮面ライダーでやってみたわけです。このとき、最高に面白い芝居をしていたのが濱尾くんでした。

その時は彼が仮面ライダー好きだとは知らなかったのですが、今思えばそういうことかと腑に落ちますね。好きじゃないとあれだけ語るのは無理だよなってくらい、熱く語ってくれました。