――五十嵐家が下町で「銭湯」を営んでいるというのも、ファミリーを強調された結果なのでしょうか。

「家族」を描くにあたり、何か1つ家族の幹になるもの、全員が共通で大事にしているものを設定したいと話している時に、脚本の木下半太さんが無類の銭湯好きということを発端に膨らませさせてもらいました。木下さんは、原稿を書いていて煮詰まったら銭湯に行き、気分をリラックスさせるそうなんですね。また、パイロットを担当する柴崎(貴行)監督も銭湯が大好きで、都内の銭湯に詳しいということも相まって、比較的スムーズに決まっていきました(笑)。

――木下半太さんは、『仮面ライダー』はもちろん、特撮ヒーロー作品の脚本を書かれるのは初めてなんですね。小説家として活躍されている木下さんの起用についてのお話を聞かせてください。

もともと木下さんは劇作家なんですが、世間的には小説家として認知されてらっしゃるかと思います。僕も学生時代から木下さんの作品のファンだったんですね。木下さんの作品は人間の恥部や暗部を隠さずに描き、実は暗いテーマの話だったり陰惨な話が多いのですが、それでいて後味の悪さや陰鬱にさせるところがなく、むしろそれをライトに親しみやすく提示していて、そこはかとない明るさが漂っている。そこに惚れました。

「仮面ライダー」はストーリーが展開していくうち、どうしても暗い方向に進みがちですけれど、そんな中でも全体のムードを明るいまま保ちつつ進んでいける「匂い」を感じたので、思い切って突撃したところ興味を持っていただき、快く引き受けて下さいました。関西人気質というものもあるんだと思いますが、とても明るくてどんなことにも好奇心をお持ちの方。アイデアマンなので打ち合わせしていても楽しいですね。

――最近のテレビドラマは1クール(3ヶ月)が基本ですが、約1年間にわたって続けられ、しかも多彩なキャラクターがひしめきあう「仮面ライダー」シリーズの脚本づくりは一筋縄ではいかないといわれていますが、木下さんとしてはどのような手ごたえを感じていらっしゃるでしょうか。

最近になって、「えらいところに来ちゃったな」と思われているようです(笑)。いよいよ放送が始まるというタイミングで、少しプレッシャーを感じていらっしゃるみたいですが、さっきもお伝えした通り好奇心が旺盛な方なのでそれすらも初めての体験として楽しんでおられる、そういう気質の方なので非常に頼りになりますね。今のところ「あーせい、こーせい」と無茶振りをしても笑顔で答えてくれてます(笑)。

――番組タイトルの『仮面ライダーリバイス』および、劇中のヒーロー(仮面ライダーリバイ、仮面ライダーバイス)のネーミングは、どのようにして決められたのでしょう。

最初にイメージしたのは2人のライダーの名前をたすと番組名になるというギミックで、まず「バイス」のほうが先に決まりました。バイスとは英語で「悪」とか「悪習」そして「副」の意味を持ち、悪魔でありバディであるバイスの設定にピッタリでした。で、そこからが大変で……延々と〇〇イとか〇〇バイという単語をみんなで考えまして…「リバイ」にたどりつきました。ヘブライ語で「結びつく」という意味があり、リバイアサンなる悪魔もいますし、リバイとバイスを合わせて「リバイス(=悪を修正する)」だ!と。

――変身ベルトに「スタンプ」を押して変身するアイデアはどこから来たのですか。

人間の体内から悪魔を引き出す、という行為を表現するのにふさわしいアイテムをバンダイさんと一緒に検証していったという流れですね。うちの息子が1歳くらいの時に、磁石のついたペンでスクリーンをなぞったりスタンプを押したりすると「磁性粉」が浮き上がり、自由に絵を描いたり消したりできる知育玩具でよく遊んでたんですけど、親の僕が触ってみてもなかなか面白い。これをヒントにして、スタンプ台を変身ベルトにして、絵柄のついたスタンプを押して変身するというのはどうだろうと提案したら、バンダイさんも「それなら実現可能だし、面白い」とノッてくれました。

――劇場版『仮面ライダーリバイス』で拝見しましたが、一輝の変身シーンの背後からデカいSNSメッセージのやりとりがいきなり現れたのには驚きました。あれはやはり「LINEスタンプ」からの連想なのでしょうか。

先ほど言ったようなことはありつつも、一方で、WEB上で「スタンプ」で検索すると、メインに来るのはLINEスタンプの情報ばかりで。今やスタンプといったらインクを付けて紙の上に押すものではなく、SNS上での意思表示に用いるものなんだな……と改めて気づいたわけです。同じころ、特撮監督の佛田(洋)さんと変身シークエンス演出の打ち合わせをしていたら、佛田さんが「変身する一輝の後ろにスマホの画面のようなものが出てきて……一輝とバイスがスタンプで会話して……」と、同じような発想をおっしゃってくださったので、もうこれは採用だと(笑)。

――非常に柔軟な発想のやりとりが行なわれていたんですね。

チームの中で方向性や感覚が同じだなと思える出来事があると、判断に自信が持てますね。

――レックスバイスタンプをリバイスドライバーに「オーイン(押印)」して、仮面ライダーリバイと仮面ライダーバイスに変身しますが、2人の基本フォームを「恐竜(ティラノサウルス・レックス)」モチーフにされた意図とは?

スタンプで体内から何かを引き出すというところで、デザイン上でのモチーフアイデアとして「生物の遺伝子」を持ってきました。人間の体内に蓄積されてきた生物の遺伝情報をスタンプによって取り出し、肥大化させるという……それを基本フォームやフォームチェンジ上でのアクションの特徴になるように落とし込むにあたり、割とオーソドックスに強い生物、個性のある生物を選択していく中で、Tレックスほど強くて主役感のあるやつはいないなあと満場一致でした。今まで仮面ライダーのモチーフになっていないから新鮮でいいよねという後押しもありましたし。

――悪魔崇拝組織デッドマンズを束ねる女王アギレラが、見た目はとても可愛い女性というのも、かなり意表を突くキャラクター設定だと思いました。

これも「木下イズム」が強く表現されている部分かもしれません。デッドマンズは悪なんですけれど、陽気であるところに怖さが生まれるといいなあと思います。そのトップが女性キャラというのは、特別意識したわけではなく、ごく自然な流れで生まれた設定です。『仮面ライダーゼロワン』の仮面ライダーバルキリーや『仮面ライダーセイバー』の仮面ライダーサーベラなど、女性ライダーも今や珍しいことではなく、見事にドラマを背負って活躍していますから。