「ゼロ・ウェイスト(廃棄物を出さない)」を掲げて使い捨て文化からの脱却を目指すLoop Japanが、このほどLoop ECサイトをオープン。メディア向けにオンライン説明会を開催した。

  • 使い捨て文化からの脱却を目指す、循環型プラットフォーム「Loop」

説明会には、Loop Japanのエリック・カワバタ日本代表のほか、東京都環境局やLoop ECサイトで商品販売を予定しているブランドパートナー各社の担当者も登壇。日本におけるLoopの戦略などについて説明が行われた。

リユース容器に付加価値

Loopの取り組みについて、Loop Jpanのエリック・カワバタ日本代表より説明が行われた。

Loop Japanは、「捨てるという概念を捨てよう」という概念のもと、循環型プラットフォーム「Loop」を日本で展開するソーシャルエンタープライズで、これまで使い捨てで販売されていた製品をリユース可能な容器で販売している。

Loopでは使用済み容器を回収し、洗浄・再充填を行ってふたたび販売する。この取り組みにより、使い捨てプラスチックを削減している。世界的には2019年1月に発表以降、アメリカ、フランス、イギリス、カナダ、日本の5か国で展開されており、今後はオーストラリア、ドイツなどでも展開が予定されている。

現在、全世界の年間廃プラスチック量は3億トンと言われており、これは世界総人口の体重合計の2/3にもおよぶ重さとなっている。日本における一人当たりのプラスチック廃棄量は1日に約918gとなっており、世界平均の約1kg/1日よりは少ないものの、非常に多くのプラスチック廃棄があることがわかる。

かつては、製造業者は耐久性のある再利用可能なパッケージを自社の資産として何度も使い回していたが、現在は安くて便利な使い捨てパッケージが主流となっている。使い捨てパッケージは売上原価となるため、より安価なパッケージを求めてリサイクル困難なものを生み出し、結果として現状では多くの廃棄物が出てしまうという。

耐久性のある再利用パッケージを普及させるためには、コスト面や利便性も重視しなければならない。導入当初はコストがかかっても、再利用を繰り返すうちにペイできることが期待される。また、容器にコストがかけられるようになるため、例えば、アイスの容器に魔法瓶機能を付加したパッケージで提供できるなど、容器に付加価値をつけることも可能になってくる。リユースであっても、高級感のあるデザインも実現できる。

Loopでは、最低でも10回以上は再利用できる耐久性、製品基準を損なわずに洗浄できる洗浄性、寿命に達したときにリサイクルできるLCAといった、再利用パッケージに独自の基準を設け、もっとも経済合理性の高いパッケージを目指す。

実店舗では5月25日より都内AEON19店舗で販売をスタートしているが、Loop ECサイトは8月31日よりオープン。東京、神奈川、千葉、埼玉でサービス展開をはじめる。

  • Loop ECサイト

ユーザーは会員登録ののちに商品を購入し、使った後は再購入の際に空き容器を回収。洗浄や再充填をなどを経て再び流通する流れとなる。価格は、内容物の価格に加え容器の預かり金も含まれる。容器を返返却すると、預かり金は返却される。配達の際のトートバッグは、アメリカに比べ小さく作られており、日本の住環境に合わせた独自のものとなっている。

Loopでは小売店やファストフード店頭、運送、商業施設などを巻き込んだネットワークを構築し、再利用の利便性を使い捨てと変わらないクオリティで提供することを目指している。ECサイトのプラットフォームが、そのネットワーク構築によい影響を与えるのではないかと考えているという。

説明会に参加した東京都環境局の古澤康夫氏は「東京都環境局では、Loopをはじめとしたリユースビジネスを支援しており、今回ECサイトをオープンさせたことを大いに歓迎したい。今後、リユースが日本全国に広がっていけば」と期待を寄せた。

大手からベンチャーまで、理念に共感した企業が賛同

説明会には、Loopで商品を展開する各ブランドパートナーの担当も登壇した。各社のコメントなどは以下の通り。

アース製薬

「アース製薬では『生命(いのち)と暮らしに寄り添い、地球との共生を実現する』を経営理念としており、サスティナブルな世の中に対して、環境に配慮した製品の開発を行っている。これまでも容器や梱包材の軽量化、製品のコンパクト化やロングライフ化などを実践しており、詰め替え製品はごみ削減と同時に輸送効率の向上により少エネルギーやCO2削減にもつながっている。

  • アース製薬「モンダミン ペパーミント」のLoop製品

虫ケア用品のイメージが強い当社だが、いろいろな製品がある。まずはオーラルケア商品の「モンダミン」で、Loopのリターナルボトルを開発。透き通ったグリーンというモンダミンのイメージを損なわないようガラスボトルを採用したが、もともとガラス容器の製品がほとんどなかったので苦労もあった。また、洗浄というプロセスも当社では初となるが、アース製薬らしさを残しつつ、Loopの製品群としてもいい製品ができたと感じている」(アース製薬 マーケティング総合企画本部 寺田大延氏)

味の素

「Loopの考え方と将来像に共感して、こちらからお声がけした。今回の取り組みは、これからの社会において、食が果たすべき役割についてさまざまな問いを自分たちで自分たちに投げかける、とてもよい機会になった。味の素グループでは、2030年までに廃プラスチックを0にする目標を掲げている。その中で、リユースへの取り組みへの第一歩としてLoopに参加させていただくことになった。持続的な資源環境、資源循環型社会の構築という大きな共通目標に向かって、協業パートナーやお客様とサービスを作り出すこと、それが当たり前の社会ができると信じている。

  • 味の素「コンソメ」「ほんだし」「丸鶏がらスープ」のLoop製品

味の素からは、Loop用の商品として、主力商品である『ほんだし』『コンソメ』『丸鶏がらスープ』を販売する。容器にはガラス瓶を採用し、長く愛されるようなデザインにした。馴染みの深い調味料をLoopを通じてご使用いただくことで、無理なく社会貢献をしながら料理や食事を楽しんでいただけるのではないかと考えている。今後も品種を追加していきたい」(味の素 生活者解析・事業創造新事業グループ長 佐藤 賢氏)

資生堂

「資生堂では、『BEAUTY INNOVATIONS FOE A BETTER WORLD』をミッションとして掲げている。100年先も持続的に輝き、成長し続けていくために、本業を通じた美のイノベーションによって持続可能なより良い世界のために、長期視点で取り組んでいる。資生堂の取り組みの一つに、2025年までに100%サステナブルな容器包装を達成することを目標としており、今回のLoopへの参加は、サステナブルな製品開発という主要な取り組みのひとつとなっている。

  • 資生堂「アクアレーベル スペシャルジェルクリームA(オイルイン)」のLoop製品

Loop専用商品としては、スキンケア商品ブランドのアクアレーベルから、『スペシャルジェルクリームA(オイルイン)』を発売する。オールインワンタイプのジェルクリームで、オイルエステ後のようなハリつやを大人の肌に与えてくれるアイテム。容器デザインは循環をコンセプトに加え、耐久性と高級感を兼ね備えたリユース可能なガラス容器を独自開発した。Loopの洗浄工程に適合するデザインには苦心したが、Loopへの参画を通じて、サステナブルな社会への貢献をしていきたい」(資生堂ジャパン プレミアムブランド事業本部 第3事業部事業部長 能代真紀氏)

キッコーマン食品/キッコーマン飲料

「キッコーマングループでは、自然の営みを尊重し、環境と調和のとれた企業活動を通じてゆとりある社会の実現に貢献したいと考えている。持続可能な社会の実現に向け、CO2削減、水環境への配慮、持続可能な調達、廃棄物・食品ロスへの対応、環境配慮型商品の開発などに取り組み、長期ビジョンとして推進しており、Loopの理念と近いところで取り組みを続けている。

  • キッコーマン食品「Loop御用蔵醤油」

キッコーマン食品がLoopに向けた商品では、『Loop御用蔵醤油』という特別な醤油をご用意した。御用蔵醤油は宮内庁にお納めするしょうゆの専用醸造所で醸造しているもの。国産大豆や小麦を使用し、温度管理を行わず季節の気温の変化を生かして杉の木桶でつくられており、旨味が引き出された特別な味わいとなっている。自然の環境でつくられたもの、という点がLoopの理念に共感できると思い、この商品を選んだ」(キッコーマン食品 プロダクト・マネジャー室 しょうゆ・みりんグループ マネジャー 井上美香氏)

  • キッコーマン飲料「Loop国産トマトジュース食塩無添加」

「キッコーマン飲料では、『Loop国産トマトジュース食塩無添加』を販売する。キッコーマンでは60年近くデルモンテの商品を販売しており、日本デルモンテでは独自にトマトの品種改良を重ねており、今回の商品には糖度が高く、リコピンの多いオリジナルの品種「デリシャスレッド種」が使われている。この品種を国内の契約農家で栽培し、長野県の工場でジュースに仕上げた。トマト自身が持つ酵素の力を生かしたストレートタイプのジュースで、フレッシュな香りの残るすっきりとした味わいとなっている」(キッコーマン飲料 プロダクト・マネジャー室 プロダクト・マネジャー 齊藤 剛氏)

ネイチャーズウェイ

「ネイチャーズウェイはナチュラルオーガニックコスメのメーカーで、社内のサステナブルプログラムの一環としてLoopへ参加することが決まった。ネイチャーズウェイでは、2020年に『笑顔の共創』『カーボンニュートラル』『サーキュラーエコノミー』の3つのゴールを掲げプログラムを開始。プログラムでは、2008年より立ち上げたネイチャーズウェイサステナブル基金の活動や、国際的イニシアチブ『SBT』認定の取得、リサイクル回収プロジェクトなど、さまざまな課題に取り組んでいる。

  • 「エレキュイール シャンプー/コンディショナー」「ドクターブロナー マジックソープ」のLoop製品

Loopへの商品としては、2ブランド4アイテムを展開する。『エレキュイール』のシャンプーとコンディショナー、『ドクターブロナー』のマジックソープ2種で、Loop専用となるステンレス製のリユース容器で販売。どちらのブランドも安全性を考慮してステンレスを採用、ラベルに関してはユーザーの使用時には剥がれず、洗浄時には剥がれやすい粘度の接着となっている。どちらのブランドももともと環境に配慮した商品だが、そこにリユースできるボトルとなったことで、Loopを通じて新たなユーザーに愛用してもらえることを期待している」(ネイチャーズウェイ 第 4 ブランド本部 ブランドマネージャー 菱川淳介氏)

luv waves of materials

「今回、環境問題をもっと気軽に知ってほしいという想いからLoopに参加し、ブランド『LUVHAIR』を立ち上げた。luv waves of materialsはベンチャー企業で、ファッションや音楽、アートといった表現と、ヘアケアブランドLUVHAIR、Loopでの商品販売といった方法から、経済的な視点からではなくSDGsに興味関心を持ってもらえるのではないかと考えている。LUVHAIRはこの会社で最初のブランドとなっている。

  • luv waves of materials「LUVHAIR シャンプー/コンディショナー」のLoop製品

Loopで展開するLUVHAIRはシリコンフリーで、極力環境負荷の少ないものとなっている。現在、表参道の美容室で業務用として使用されているが、少量でも泡立ちが良く、髪にハリ、コシが出るなど、ユーザーからは非常に良い反応をもらっている。LUVHAIRを通じてLoopを知ってもらい、そうすることで今日よりも明日が良くなると信じている」(luv waves of materials代表取締役 宮内一樹氏、ディレクター兼デザイナー 宮内幸恵氏、アートディレクター asra氏)